【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

文字の大きさ
461 / 856
◇「周知」

「撮影会」*優月

しおりを挟む


 
 そんな話をしている内にコンビニについて、自動ドアの手前で、クロを下ろした。

「ちょっと待っててね?」

 座ったクロを撫でて、自動ドアの中に入った瞬間。

「いらっしゃいま――――……あ! 優月くんと玲央くん!」

 何だか少し声が大きい。多分品出しとかをしていたと思う、もう一人のおばちゃんも何だか急いで姿を見せて、「いらっしゃいませ」と超笑顔。

 いつも、すごく話しやすくて、まあいつも笑顔だし、だからオレ、クロの話とか色々するようになったんだけど……。
 今日はなんだかものすごーく、テンションが高い。

「……??」

  いつものおばちゃん達の、なんだかいつもとは違う雰囲気に、あれ?と思ってから、ふっと気づいた。

 ……あ、そーだ。こないだ、玲央がふざけて仲いいですよとか言って、おばちゃん達に多分叫ばせて、そのままだった!

「クロはさっきお昼食べちゃったから小さなおやつで大丈夫よ、優月くん」
「あ、はい」

「今日も二人でお買い物?」
「あ、……はい、そう、なんですけど……」

 なるべく店員さんとして普通を装おうとしながらも、めちゃくちゃ興味津々にオレ達を見てるおばちゃん達と。
 オレの横で、何だかとっても……悪戯っぽい、楽しそうな笑顔の玲央を見比べて。

 オレはもう、とりあえず黙って笑っておこう、と決めた。


「ほんとに、仲良いんだね」
「そうですね」

 玲央がけろっとして答えて、ふ、と笑う。

 ……イケメンのオーラって、わざとキラキラ出せるものなんだろうか。
 これ、無意識なら、ほんとにすごい。

 おばちゃん達はまんまとハマって、ぽーと、玲央の顔を見ている気がする。


「優月、見に行こ」
「あ、うん」

 あ、そこでオレの手を掴むとか。
 今はやめた方が……。

 でも変に離れるのもおかしいかなと思って、手を掴まれたまま、猫のおやつゾーンに到着。オレは、もう、隠れたくて、しゃがみこんだ。すると、玲央もクックッと笑いながら隣にしゃがむ。

 ちら、と恨めし気に隣を見ると、ぷ、と笑って口元に手を当ててる。

「……もー玲央ってば」
「すげー面白いな、あの人達」

 玲央はすごく小さくこそこそ言ってきて、クスクス笑い続けている。

「もう、すごいテンション高いから、これ以上あげないで」
「んー……」
「ね?」

 近くで玲央を見つめると、ふ、と笑われて、頷かれる。


「分かったよ。……おやつ、こっちでいいか?」
「あ、うん」

「買ってくるから、クロ、捕まえとけよ」

 そう言って、立ち上がると、玲央はレジに歩いて行ってしまった。
 
 立ち上がって、雑誌の並びの間からさっきクロを座らせた所を見ると、まだちゃんと、ちょこんと座っていた。 

 可愛いよー。

 玲央が、おばちゃん達と何かを話してるのを見ながら、ドアの所で立ち止まると、玲央はオレに視線を流してくる。ちょっと笑顔。

 そのまま、おばちゃん達にまた向き直って、何かまた話してる。
 オレはコンビニから出て、クロを抱っこした。

「おまたせー」

 よしよしと撫でながら、ふふ、と笑ってしまう。

 玲央って、あんな風に、店員のおばちゃん達と気安く話したりする人なんだなあ。ちょっと、意外。
 何となくだけど、レジとか無言で立ち去りそうな。用があっても一言とかで終わらせそうな、そんなイメージ。

 ちら、と店内に目を向けると、なにやら一人のおばちゃんと話しながら、こっちに向かってくる。

 ん??

 一緒に出てくる玲央とおばちゃん。


「写真撮ってもらお」
「え。あ。いいんですか?」

 玲央の声に、おばちゃんを見ながら聞くと、もう玲央のスマホを持って構えていて、もちろんと笑う。


「優月、背景こっち」

 そんな風に言われて、肩を抱かれて、向きを変えられる。


「お願いします」
「はーい」

 そこから、超ウキウキで楽しそうなおばちゃんによる、玲央とクロとオレの撮影会。結構何枚もカシャカシャ連写される。

 必要以上に玲央が近いし、おばちゃんが、いいねーと、ハートを飛ばしてる感じだし。

 玲央がノリノリすぎて、しまいには、なんだかおかしくなりすぎて、すごく笑ってしまった気がする。






しおりを挟む
感想 830

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

処理中です...