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◇「周知」
「宝物にしたい」*優月
しおりを挟む玲央と別れて授業を受けて、最後の時間が同じだった皆と一緒に坂を下って、駅前についた。時間まで、集合場所で待つことになった。
色々話しながら、ふと、まだ写真を見てなかった事に気付いて、スマホを取り出した。
「前回のクラス会っていつだったっけ?」
「んー、4月の半ばじゃなかったっけ? 春休み会えなかったからしよーっていってさ」
聞かれた事に答えながら、玲央とのトーク画面を開いて、写真をタップする。
「――――……」
……あー。
あんまり見せたくないって、言ってたの……分かるかも。
なんか、すごく、かわいー、玲央……。
カッコよくて、ちょっと澄ましてる時の玲央とは、正反対みたい。
無邪気な笑顔。
……もちろんカッコいいんだけど。可愛いなあ。愛しすぎる。
玲央から来てたのは、五枚。
めくる度に微笑んでしまう。
どうしよ。
オレも、これ、誰にも見せたくないかも……。
……写真、見せなくても、信じてくれるか、頑張ってみようかな。
オレだけの宝物にしておきたいとか、思ってしまう。
「またスマホ見て笑ってるし。……彼女?」
「――――……」
聞かれて、ふふ、と笑ってしまう。
「……うん、すごく、好きな人」
大好きすぎると思っていたタイミングだったせいで、ついつい、すごく素直にそう言ってしまった。
すると、周りに居た皆が一気に盛り上がってしまった。
「何々、マジで付き合ってんの、優月」
「どんな女ー?」
「ん、後でゆっくり……」
ここで叫ばれたくないし。
苦笑しながらそう言うと、皆、はー?と眉を寄せる。
「もーどんだけ気を持たせんだよ」
「すげー楽しみにしてっから」
「う、うん……あの、でも、一つだけ言っておくと――――……」
何?と、皆がオレを見つめてる。
「……多分皆が思ってるような人じゃないと思うから……びっくりすると思うけど」
「はー? 何それー?」
「別に優月が誰と付き合ってたって、びっくりしねえけど……」
そう言う友達の横で、「あーでも」と一人の友達がちょっと考えながらオレを見つめる。
「優月の彼女が、すっげえド派手な人だったらびっくりするかも」
「あー……確かに。めちゃくちゃ化粧ばっちりとか?」
「そうそう。 体のラインめっちゃ出てる服とかさー、胸見えそうな服とか? そんなの着てたら……」
「あー、それはすっげーびっくりするー」
「騙されてんのかと思うよなー?」
――――……えーと……。
皆があれこれ、続けていくのを聞きながら、正直苦笑いしか浮かばない。
めっちゃくちゃド派手な、目立つ、超イケメンの男の人だけど。
今言ってるので、オレが騙されてるとか、心配されちゃうなら……。
玲央って言ったら、何て言われちゃうんだろ。
う、うーん。ちょっと話すのが怖くなってきた。
「……あのさ」
目の前で楽しそうに、何だかもはや笑い話かネタみたいな感じで、オレの彼女がこうだったらびっくりする、を続けてる皆の事を見回しながら。
「……もっとびっくり、するかもしれない……」
オレの言葉を聞いた皆が、何秒か、え、と固まる。
――――……まあ確かに、今皆が言ってたのよりもびっくりするかもとか。
普通、ないもんね……。
「ちょっと待って、優月……」
隣に居た友達に、肩を組まれる。
「……こんな事聞くのは、悪いんだけど……」
「うん?」
「なんか、買わされたり、すごいこと、させられたり……」
「……してないよ」
「……何かの書類とかサインしたり……」
「してないってば」
周りの皆が、そのやりとりに笑ってるけど。
もー、どんな質問なんだよー。
……だめだ、さっきの写真、見せよう。
玲央が、悪い人じゃないって分かってくれるに違いない。
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