【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇同居までのetc

「大丈夫な気が」*優月

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 玲央と大学の正門で別れて、教室に入る。
 それぞれの授業で、大体は座る席、一緒に受けるメンツが何となくは決まっている。今日もいつものところに向かった。

「おはよー」

 そう言うと、ふ、とオレを見上げた皆が、「おはよ」と言いながら、めちゃくちゃ見てくる。金曜のクラス会のメンバーは今は居ないんだけど……もう知れ渡っちゃったのかな? と思いながら、とりあえず空いてる席に座った。

「優月、なんかさ」
「うん?」
「オシャレんなった気がする」
「ああ、オレもそう思うー」
「誰かも言ってた」

「何だろなあ。髪型かな?」
「服もなんか、違うよな?」

 皆が立て続けに言ってくる。

「――――……」

 えーと……玲央がオレをちょこちょこ弄るようになってから、これほんとに皆が色々言ってくる。……ほんとに、皆、よく気づくというか……。

 何て答えるのが正解なんだろ?

「自分で選んだ? 服」
「えーと……これは、違う」

 白い服を見ながら、そう答えると。

「へえ? プレゼントなの?」
「うん」

「高そうだよなー、なんか」
「そうなの?」

「なんか質、良さそうじゃね?」

 ……服の値段とか、高そうとかも、全く分からない。
 玲央が着てると、なんでもカッコよく見えるけど。

 玲央が着てると確かになんでも高そうに見えるけど……。
 これ、高いのかな……? でも皆がそう言うならそうかもしれない。

「なんか優月、可愛くなってくような気ぃすんね?」
「たしかにそんな感じー」

 それを言ってる皆も、聞いてる皆も、あははー、とか笑ってるから、本気なのか、冗談なのかはよく分からないけれど。

 可愛いなんて言葉に、さっき、正門前で別れる前の玲央が、頭によみがえる。


 玲央と別れようとした時、服から顔まで視線を動かして、玲央はクスッと笑った。

「可愛いな、優月。その服、似合うだろうと思ったけど、マジで似合う」

 すり、と頬に少しだけ触れて、見つめられる。
 正門前だからかな。一瞬だけで、離れた。

「そ、う? ありがと」
 嬉しくて微笑むと、玲央が、んー、と口を少し尖らせた。

「あんまり可愛くなるのもなあ……」
「?」

「迫られても、キスさせるなよ?」
「へ――――……え? 誰が?」

「優月が。迫られても」
「――――……」

 真顔なので、益々意味が分からない。

「オレ、迫られないと思うし……キスなんか、絶対させない、けど…??」

 思うまま、そう答えると。
 玲央は、分かってるんだけど、と言ってから、笑う。

「でも優月、オレと最初に会った時、キスさせてって、断らなかっただろ」
「――――……」

 確かに。そういう言い方をしてしまえば、確かにそうなのだけど。

「……だって――――……玲央、だった、から」

 思わず言った一言に、玲央はぴた、と固まった。

「……?」

 不思議で顔を見上げると。
 玲央は、は、とため息。

「……それさ」
「……それ?」

「オレだったから、ってセリフ」
「……うん?」

 じっと玲央を見つめると。

「可愛いって、分かって言ってる?」
「――――……」

 言われて、良く分からず、思わず首を傾げてしまった。

 ……迫られてもキスするなとか、びっくりなこと言われたから、玲央だったからだって、言っただけだし。

 だって、玲央だったから。
 多分もう、一目惚れみたいな感じだったんだと思うんだよ……。
 じゃなきゃキスなんて……。

 困りはてて、玲央を見つめていると。
 玲央はオレの困り果てた視線を受けて、ふ、と微笑んだ。

「……初対面の時も、オレだからキス、断らなかったんだろ」
「……うん」

「他の奴だったら?」
「……男も女も、いきなりキスなんてされたら、やだよ」

「ふうん……」

 玲央はなんだかとっても嬉しそうに笑うと。
 オレの頭に触れて、くしゃくしゃ、と撫でた。

 なんだかやたら、嬉しそうな玲央と、バイバイして、ここに来たんだっけ。

「優月またぼーとしてる」
 クスクス笑われて、はっと気づく。

「また彼女のこと、考えてんの?」
「服も彼女?」

 周りが好きに話してくる。
 オレは時計を見て――――……少し時間がある事を、確認。

「あのさ」
「ん?」

「声出さないでね?」

「は?」
「なになに?」

 周りの皆が、ん、と頷いてる。

 なんか、金曜のクラス会の感じだと。
 きっと、皆、平気な気がして。

「どうせ、その内伝わると思うんだ、クラス会で言ったから」

 うんうん、と皆が頷いてる。

「オレの付き合ってる人ね……男、だから。彼女じゃなくて、彼氏、なの」

 皆、ちょっとびっくりした顔をして。
 一人だけ騒ごうとした友達は、両隣に口を塞がれてる。

 ふふ、と笑ってしまう。

「冗談――――……じゃないよな?」

 一人が言って。
 皆が見てるので。

「うん」

 と、頷くと。
 皆、へーーーとか。なるほどー、とか、そんな感じ。


 何かオレ。
 ……大丈夫な気がしてきた。




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