536 / 856
◇同居までのetc
【番外編】「ある夏の日」2/2 ※
しおりを挟む少し離れた玲央の首に腕を回して、オレは、ぐい、と引いた。
「優月?――――……」
ちゅ、とキスして。
玲央を見つめてから、またキスする。
「――――……ありがと、玲央」
少し唇を離してそう言ったら。すぐに、玲央の方から、深く塞がれて。
「っん……――――……ン、う……っ……」
後頭部を押さえられて、玲央に押し付けられるみたいな感じで、めちゃくちゃ、激しいキス。
「ん、ふ……っ……ぁ」
舌、噛まれて、ぞくん、と震えると。
玲央が、そっと、キスを離した。
「……ホテル、いこ。あそこの」
「…………ホテル……? あそこ……?」
ぽー、としながら、玲央の指さしたほうを見ると。
少し離れた所に、煌々と明るい、大きな建物。
「あのホテル、予約したから。泊まろ。温泉入ろうぜ」
「――――……え? そ、なの??」
「そ。風呂入って、続きしよ。立てる? 優月」
玲央が立ち上がって、オレに手を差し出してくれる。
「うん、まだ、立てる」
「まだ……」
クスクス笑いながら、玲央の手を掴んだオレを立たせてくれて。
また手を繋いだまま、歩き出した。
「朝のバイキング、うまいってさ」
「そうなの?」
「食べたら、また湖来て、デートしような?」
「うんうん」
コクコクコクコクたくさん頷くと、玲央が、頷きすぎ、と笑う。
「――――……でもチェックアウトは、遅い時間にしといたから」
「ん?」
「今夜は付き合って」
「――――……」
ぼぼ。と。熱が顔に一瞬で上がる。
またまた、顔から、湯気が出そう。ていうかもう、出てるんじゃないかな、と思いながら。
うん、と頷くと。
繋いだ手を、親指で、すりすりされる。
「――――……」
玲央を見上げると。
すぐにオレを見下ろして、優しく笑う。
もう、この、笑顔が、大好きすぎて。
きゅん、て、するんだけど。胸の奥が、ほんとに。
じっと見つめ続けていると。
ちゅ、と、側頭部辺りに、キスされて。
「――――……オレ、お前に見上げられるの、すげー好き」
クスクス笑う玲央。
「おかしいかなって位、可愛く見える」
なんだかとってもゆっくりした口調でそんな風に言って、繫いだ手をすこし引かれて、すごく密着してる感じで、のんびり歩く。
「……静かだな」
「ん……」
「たまにはいいよな、静かで暗いとこ」
「うん……」
……前なら、玲央みたいな人には、こんな場所はちょっと似合わないなあとか思ったかもしれないけど。
……というか、派手でオシャレなとこが似合うっていうのは、きっと今も変わっていないんだけど。
「――――……なんか、玲央と、ふたりきりみたいだね」
きゅ、と手を握って、玲央を見上げると。
微笑む唇が近づいてきて、優しく、キスされる。
見つめ合って、微笑み合って。
それからまた、ゆっくり歩き始める。
「――――……来週、花火の絵、描くね」
ふと思って言うと、玲央はオレを見下ろして、なんだかとっても嬉しそうに笑うと、ん、と頷いてくれた。
◇ ◇ ◇ ◇
月明かりの中をゆっくり歩いてホテルについて、温泉に入った。
部屋で軽食を頼んでくれて、一緒に少し食べたところで、玲央に抱き上げられて、ベッドに連れてこられた。
いつもと違うライトの感じ。
オレの上に居る玲央の体、すごく綺麗に見えて。
それだけでも恥ずかしいし、体の奥が、きゅう、と苦しくなる。
「……っん、ぁっ……」
中が、熱くて。
擦られて、突かれて、気持ちよすぎて、声が上がる。
自然と腰が揺れて――――……もっと、と、ねだってるみたいで。
恥ずかしいけど。
「……かわいすぎ、優月――――……」
熱っぽい声で、耳元で囁かれて、舌が入ってきて。
「ん、んんっ……は……ぁ、んっ」
イッちゃうの――――……オレばっかな気がして。
「……れ、お……」
ぎゅ、と抱き付いて。
キスを、交わす。
「……好き……れお」
もう泣きながら、そう言ったら。
玲央はふ、とオレと瞳をあわせて笑うと、ぐい、と更に奥まで入ってきた。
「――――……っあ……っ」
声も出なくて。
ぎゅう、としがみつく。
「……ゆづき、おいで」
腕を取られて、体勢を変えられて。
座る玲央の上に乗せられるみたいな感じ。つながったまま、向かい合って、真正面から、見つめられる。
なんか、中もいつもと違う感じだし、真正面すぎてちょっと恥ずかしいし。
どうしよう、と思っていたら、深く、口づけられた。
「ん、……ん……っ」
舌を奪われて、下からも刺激されて。頭が真っ白。
ただただ、気持ち良い中で。
玲央に、しがみついていた。
◇ ◇ ◇ ◇
「――――……」
……例によって、例のごとく。
またまた、寝落ちたオレは、玲央の腕の中に、居た。
それに気づく前に少しだけ動いてしまってたみたいで。
玲央が、オレの頬に触れてくる。
「……起きた?」
玲央の声。
「……うん」
見上げると、玲央が、くす、と笑ってる。
「水飲んで」
「ん」
枕元に置いててくれたペットボトルを渡してくれて、起き上がって飲むと。
飲み終えたところで、玲央がオレを抱き寄せた。
「……まだ眠いだろ?」
「……うん」
ぎゅ、と抱き締められる。
「――――……デートだからな?……いっぱい寝といて」
クスクス笑う玲央に、オレも、ふふ、と笑いながら頷いた。
触れてる顔に、額で、すりすりくっついてしまう。
「……だいすき、れお」
「――――……こっちのセリフ……」
クスクス笑う声が重なって。
そのままゆっくり、眠りについた。
いつもとおんなじ、幸せな。
ある夏の日の夜。
-Fin-
(2022/10/20)
番外編おしまい♡
348
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。
下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。
大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。
ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。
理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、
「必ず僕の国を滅ぼして」
それだけ言い、去っていった。
社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる