574 / 856
◇同居までのetc
番外編◆クリスマス🎄1
しおりを挟むクリスマスが近い。
青いイルミネーションを見に行くことにして、玲央と待ち合わせた。今日は午前中から二人とも別々の用事があって、駅で待ち合わせ。
オレの方が先についたみたいで、玲央に「着いたよ」と入れて、顔をあげた時。ふわ、と白いものが落ちてきた。
あ。雪だ……。
空を見上げると、まだ淡い淡い、結晶。
すごい綺麗。
クリスマスに降ったら、ホワイトクリスマスだなあ……それもいいなぁ。
今日、初雪だ。朝からめちゃくちゃ寒かったもんね。
手を差し出したら、雪が手の平に乗って、すぐに溶けた。
早く来ないかな、玲央。
雪、やむ前に。
一緒に見たいなあ。
思った時に、スマホが震え出した。
「もしもし?」
『優月? どこ? もう来てるけど、人が多くて』
「えと……横にポストがある」
目印になるような物がそれしかなくて、分かるかなと思いながら言ったら、クスクス笑う玲央に「ポスト?」と言われた。でもすぐに「あった。優月見えた。待ってて」と言われた。
どこだろ、玲央。
思って、周りを見た瞬間に、玲央が目に入る。駅から続く階段から、降りてくる。
「――――……」
ていうか。
……目立つ人だな、ほんと。
人、ものすごくいっぱい居るんだけど。
玲央しか見えない……みたいな気がする。
「ごめんな、寒かった?」
オレだけじゃなくて、なんとなく周りの人も絶対玲央を見てるような気がするんだけど。
まっすぐオレに向かってきてくれて、オレだけに笑ってくれるのって。
……すごい嬉しい。
「ほっぺ赤い」
クスクス笑って、玲央がオレの頬に触れる。
絶対見られてるんだけど。
……玲央は全然気づいてない。
両手ですりすり温められて、「玲央の手、暖かいね」と言うと。
「あ、そうそう。これあげる」
ポケットから、何かを取り出して、手に持たせてくれる。
「カイロ貰ったんだ、これ握ってたから、手暖かい」
むぎゅー、とほっぺを挟まれて、暖められるけど。
ちょっとさすがに人目が……。
「玲央、歩こ?」
「ん」
一緒に歩き始めてすぐ、「優月、手」と言われて、「手?」と差し出すと、ぎゅと握られる。
「――――……」
なんだかな。
胸がいっぱいで、言葉が出ない。
「こっちの手の方が暖かいだろ?」
「うん」
なんだろうな。手も暖かいんだけど。
……気持ちもぽかぽかする。
「初雪だよな」
玲央が空を見上げながら言う。
「うん」
そうなんだよ、初雪なんだよ。
玲央とみたいなって、思ってたんだよー、と、心の中で、言葉がいっぱいなんだけど。なんだか、口に出てこない。
イルミネーションスポットはもう少し先なんだけど、歩いてる街はもう全部綺麗だし。……玲央の手は暖かいし。雪は、綺麗だし。
なんだろう。幸せすぎて、言葉が出ないとか。玲央と居るとたまにある。
「――――……なんか静か? 優月」
玲央が不意にオレを覗いてきた。
「ううん」
首を振って、笑って見せる。
クスッと笑った玲央に、くいくいと手を引かれて、少し道路の端に。
「?」
見上げた瞬間。
ほんとに一瞬、ちゅ、とキスされた。
多分、誰もこっちは見てない。と思うけど。
キラキラした歩道で、ひといっぱいなとこで。
オレにキスした、めちゃくちゃカッコいい人は。
クスクス笑うと、またオレの手を引いて歩き出した。
「可愛いんだもん。ごめんな」
「――――……」
全然。ごめんじゃないし。
「……玲央」
「ん?」
「ありがと」
そう言うと、「ありがと?」と言って玲央が笑う。
「うん。オレと居てくれてありがと」
そう言うと、玲央はちょっと不思議そうにオレを見てから。
「ずっと居るけどな?」
と笑った。
323
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
ルームメイトが釣り系男子だった件について
perari
BL
ネット小説家として活動している僕には、誰にも言えない秘密がある。
それは——クールで無愛想なルームメイトが、僕の小説の主人公だということ。
ずっと隠してきた。
彼にバレないように、こっそり彼を観察しながら執筆してきた。
でも、ある日——
彼は偶然、僕の小説を読んでしまったらしい。
真っ赤な目で僕を見つめながら、彼は震える声でこう言った。
「……じゃあ、お前が俺に優しくしてたのって……好きだからじゃなくて、ネタにするためだったのか?」
隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。
下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。
大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。
ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。
理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、
「必ず僕の国を滅ぼして」
それだけ言い、去っていった。
社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる