【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇同居までのetc

番外編◆【優月・お誕生日】*8

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 写真は見切れない位あって。一樹と樹里があれこれと楽しそうに止まるから、余計に進まない。皆の片付けの方が先にどんどん進んでいくのを、なんとなく目に映していると。

「ゆづ兄~?」
「ん~?」

 樹里に呼ばれて返事をすると、樹里はオレを見て、あらら、と面白そうな顔をして笑う。「ん? どした?」と笑ってると、そのやりとりに、写真を見てた一樹も顔を上げてオレを見た。

「……ゆづ兄、なんか、ぽわーん、てしてるね」
「ねー」

 二人にクスクス笑われて、「え、そう?」と顔に触れる。
 確かにちょっとだるいというのか。ぽわぽわは、している。

 て言っても、玲央にキスとかされて、頭のなかぽわぽでおかしくなっちゃってる時よりは、全然マシだと思うのだけど……。

「ねー、おかあさーん」

 樹里が母さんを呼んで、「ゆづ兄がー」と訴えている。母さんが近づいてきてオレを見ると、またクスクス笑われる。

「少し酔った? 気持ち悪いとかはない?」
「ないよー。どっちかというと、イイ気分かも」

 ふわふわしてて、幸せで。
 ふふふ、と自然と笑いが零れた。

「「ゆづ兄、大丈夫?」」

 一樹と樹里の声がかぶる。

「大丈夫だよ。もう今日、飲まないし」

 そう言って、二人に微笑む。

「玲央くんにいっとこう!」
「うん、そだね!」

「え、何を??」

「「もう飲ませないでって!」」

 二人がまたハモって、たたたたー、と玲央のもとに走っていく。気づいた玲央が、ん?と優しく笑んで話を聞いてる姿も大好き、だなんて思いながら見守っていると、ふ、と玲央が顔を上げて、オレを見た。

 あ。

 ちょっと離れた所で目が合う。
 ……こんな視線が絡むだけでも、ちょっと、ドキっと、するとか。
 オレ、玲央のことが、大好きすぎる……。

 何とも言えず、視線を合わせたまま止まっていると、玲央は、ふ、と笑んで、それから一樹と樹里に何かを話した。

 二人は、うんっと頷いて、こっちに戻ってくる。

「玲央くん、何て?」

 お母さんがクスクス笑ってそう聞くと。

「もう飲ませないから、安心して、て言ってた」
「あら」

 樹里の言葉に、母さんはクスクス笑う。

 あれれ。
 ……あとで玲央と二人で、お酒飲もうって、思ってたのになぁ。
 ちょっと残念に思いながらも、オレそんなに、酔ってるように見えるのかな。とちょっと心配になる。

「じゃあそろそろ退散、しよっか」

 勇紀たち何人かがそう言いだして、皆、鞄を持ったり、上着を着たり慌ただしく動き始めた。準備ができた人から、靴を履いて、ドアの外に出ていく。

 最後に靴を履いた蒼くんが、忘れ物無さそうか見てきて、と玲央に言う。頷いて中に戻った玲央が、大丈夫そうと言うと、蒼くんが玄関を開けた。オレと玲央も靴を履いて一緒に廊下に出る。鍵を持って出た玲央に、蒼くんは「良いよ、見送りは。皆駐車場とか駅とか、バラバラだしな」と言った。

 玲央とオレが顔を見合わせていると、皆も「ここでいいよ~」「またね~」と口々に言いながら、歩き始める。

「じゃあエレベーターまで行こっか」
「うん」

 玲央の言葉に頷いて、エレベーターまで一緒に移動した。到着したエレベーターに順番に乗り込んでいく皆と色々話しながらお別れしていって、最後になんとなくバンドのメンバーが残った。

「ありがとな」
 玲央がそう言うと、皆、ニヤニヤ笑う。

「優月が言うとこなんじゃない?」
「そーだよ、何でまっさきにお前が言うの」
「オレの嫁が世話になったー的な感じだよな」

 勇紀、颯也、甲斐がそれぞれからかうように言って笑いながら、玲央を見る。苦笑いの玲央の横で「ありがと、皆」とオレが言うと。

「なんか、優月、少し酔ってるでしょ? ははっ。やっぱ、可愛い感じになるんだねー」

 クスクス笑いながら、勇紀がオレの肩をポンポン、と叩いた。

「また近々飲もうなー?」
 そんな話をしている内に到着したエレベーターに、皆が乗り込んだ。

「おやすみー」

 そう言い合う中、エレベータの扉が閉まる。エレベーターの窓からのぞく皆とバイバイして、それが見えなくなると、一気に、静かになった。


「帰ろ、優月」

 玲央の手が、肩に回ってきて、そっと、促される。

「うん」

 皆が居なくなって、ちょっと寂しいんだけど。
 ……玲央と二人だなぁと思った時から、めちゃくちゃドキドキし始める。

「酔ってる?」
「んー……いい気分、かなぁ?」
「どん位、飲んだ?」
「あのちっちゃいグラス二杯と……あと、勇紀が飲んでたのも貰った」
「何飲んでた?」
「ブドウのサワーだって。ジュースみたいって思って飲んだんだけど」

「初の酒は、美味しかった?」
「うん、甘かったー」

 言うと、玲央は、クスクス笑いながら、部屋のドアを開けた。

「まあ、初のお酒が、いい思い出になったなら良かった」

 靴を脱いで、玄関に上がりながら、玲央がそう言って、オレを振り返った。オレも靴を脱いで、玲央の側に立った瞬間。


 やっと。
 抱き付ける。


 そう思った。








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