【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

文字の大きさ
704 / 856
◇同居までのetc

「好きなこと」*優月

しおりを挟む


「余計な心配だったかもね」
 笑う春さんに、オレは首を横に振った。

「オレが春さんの立場で、その噂聞いたら同じように心配すると思うので」
「……まあ。だよね」
 春さんは、頷いて、クスクス笑い出した。

「もうさ、ほんと、昨日聞いた時は、どうしようかなーと思った」
「元は知らなかったですか?」
「うーん、なんか、モテるらしいとか、まあ当然遊んでそうっていうイメージはあったし、聞いたことあったような気もしたんだけどさ」

 言いながら、アイスコーヒーを飲んで、苦笑い。

「あんまり興味もないし、関係も無いから、ちゃんと聞いてなくてさ」
「ぁ、分かります。オレもあんまり噂話知らないので」
「男の噂話なんか、ほんと関係ないからさ。イケメンナンバーワンとか、それは学祭で見たし目立つから顔は見かけて知ってたんだけどね」

 うんうん、と頷くと、春さんは苦笑い。

「優月くんが一緒に暮らすとか言うから、大分タイプ違うけど大丈夫かなとか思って、聞いちゃったんだよ。そしたら皆が結構色々知ってて、総合すると結構すごい噂でさ。もう、ほんと大丈夫かなってなっちゃってさ」

 そこまで話して、春さんはもう一口コーヒーを口にして、少しだけ沈黙。

「ごめんね、急に呼び出して」
「全然。呼んでくれてよかったです。ずっと心配かけちゃってたら嫌なので」
「んー……そうだね。もう、心配でしょうがなくて、一緒に暮らす前に止めないと、って思ってた」

 クスクス笑われて、オレも笑ってしまう。

「でもさ、優月くん」
「はい」
「悪い子じゃなさそうだし、優月くんを騙してるって感じはなくなったんだけどね」
「はい」
「まだ少しは心配なんだよね。……優月くんは、本当に良いの?」
「――――……えーと、男同士とか、ですか?」

 考えて、そう聞いたら、春さんは少し首を傾げながら頷いた。

「んー。そう、だね。まずそこかな。……今まではさ、考えることもなく、将来は女の子とって思ってたんだよね?」
「……ん、そう、ですね。それが普通だと思ってたのかも」
「そこを覆して、大丈夫?」
「――――……」

 覆して大丈夫、かぁ。……大丈夫っていう言葉よりは、むしろ。
 ……オレが、玲央を好きなことを、伝えた方がいいような気がしてきた。

 そう思って、オレは少し考えてから、春さんを見つめた。
 

「春さん、あの」
「うん」

「オレ、今まで、可愛いなとか好きだなって、確かに女の子に向けてきたんですけど……今思うと、玲央を好きなのとは、全然違う、ぼんやり好きだったなーて感じで……」
「うん」

「今オレ、本当に、自分でもびっくりするくらい、玲央のことが好きなんです」

 そう言うと、春さんは、ふ、と自然と笑んだ。
 その笑みを見ながら、オレは考えながら、続ける。

「女の子だからとか、男同士だからとか、オレにはあんまり関係なかったのかなって思ってて」
「――ん」

「もしこれから何があっても……最悪、別れることになっちゃっても、今好きなことは絶対後悔しないと思えてるので」
「――――……」

「もちろんずっと一緒に居られたらって思ってますけど」

 オレの言ってるのを、春さんが面白そうに見つめてくる。


「だからね、春さん。心配しないで見守っててもらえたら嬉しいなって……感じです」

 そう言って、春さんの返事を待ってると。
 春さんは、ふ、と笑って、何度か小さく頷いた。

「いつもフワフワしてるけど。それこそハムスターとか、似てるし」
「……似てますか?」
「うん」

 クスクス笑って、頷く春さん。
 一度息をついてから、オレをまっすぐに見つめた。


「でも、覚悟決めてる優月くんは、強いね」
「――――……」

「まあ、なんとなく、そういう子なのは知ってたけど」

 可笑しそうに笑って、春さんは「ん」と一度大きく頷いた。

「分かった。心配はやめとく」
「え。……あ、はい」

 嬉しくなって笑顔で頷くと、春さんもなんだか嬉しそうに、クスクス笑った。





(2023/9/18)






◇ ◇ ◇ ◇
この春さんエピソードの裏話を読みたい方だけどうぞ……。

といつも書くけど、後書きまで読んでくださる方って、僅かなのかもと思いながら書きます……(笑)↓


進み方完全ノープランで春さんと話し始めちゃったので、私も優月と一緒にどうしよ~と思ってました(笑)

途中、玲央に来させようかなーとか、春さんを玲央達のところに連れて行って勇紀たちともはなさせようかなーとか、それかもう飲み会開いちゃう? いやでも春さん一人を囲うのもなーとか、色んな案が浮かんでは消えていき(´∀`)アハハ。
結局、優月の話すまんまに任せてたらこんな感じに。

私の小説の書き方って、キャラが勝手に喋ってっちゃう感じなのですが。この子だとこう言いそう、ていうのを書いていくことが多いんです。というか、この場面、このセリフしか言わないぞ!みたいなキャラが結構いる。……だから、本当は、こういうこと言わせて、こう進めたかったのに、進んでくれないーあっち行っちゃうよー!てことが、結構あるのです……。素人で、好きに書いてるから許されるのかなと……(^^;

特に恋なんかじゃないはいつもそんな感じ。日常を書いてるから余計ですね。
これでいいのかな( ゚д゚)?と思う時も多いんですけど、一番読んで頂けてるお話でもある……なぜだろう、ほんとに不思議。でもいつもありがとうございます。

……と、春さんが落ち着いてくれたので、作者もほっとした、というのが書きたかった後書きでした(笑) 後書き長いですよね。私文章書くの長いのは自覚してます。これでも、後書きも読み直して要らないとこは減らしてからお見せしてるんですよ~( ´∀` ) デモナガイ……(笑)

次回更新時ここは消しま~す。

しおりを挟む
感想 830

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

処理中です...