【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

文字の大きさ
721 / 856
◇同居までのetc

「悟りを」*玲央

しおりを挟む

 少し黙った優月が、ふと、「なんかね出会いも不思議だけど」と話し出した。

「やっぱり、玲央のおじいちゃんの家に行くっていうのも、不思議」
「だよな」

 ふ、と見つめ合って笑ってしまう。

「でも玲央がオレの家に居たのも、双子たちと話してたのも、もう不思議を通り越してたけど」
「そう?」
「なんか夢だったのかなーと思っちゃうくらい」

 あは、と笑って、オレを見つめる。

「玲央が居る空間じゃない気がしたから。もしかして、明日、オレが希生さんの家に入ったら、玲央もそういう感じに思うかな?」
「どうだろうな。……まあでも確かに、優月や蒼さんが居る空間じゃないかも」
「だよね」
「オレは、じいちゃんちにしょっちゅう入り浸ってたからなー」
「うん。ふふ、そうなんだ。……楽しみだなぁ」

 優月がオレを見て、微笑んでしみじみ言う。

「屋敷にはさ、色んな大人がたくさん来て、色々世話されたり教わったりしてたけどな。なんか育児、みたいなのをしてたのはじいちゃんな気がする」
「そっか」
「親、不在が多かったから」

 うんうん、と優月が頷く。

「――――優月んちみたいに、家族でどうのこうの、っていうのはあんまり記憶無いし」
「ん」
「……そう考えると、オレんちとお前の家は、大分違うよな」

 多分、雰囲気自体が全然違うと思う。
 ……ってオレは何を話したいんだか、と思わず首を傾げた時。

「前、お母さん、打ち上げ行きたいとか言ってたよね」
「ああ、ライブの時?」
「うん」
「たまに構いたくなるんだろうなって感じかも」

 苦笑いで言うと、優月は、ふふ、と笑った。

「まだ玲央のお父さんやお母さんのことは分かんないけど……オレ、希生さん、好きだよ」
「ん?」

「まだ少ししか話してないけど、オレ達のこと、少しも否定もしなくて。玲央のことが大事なのも分かった」
「――――……」

「優しいよね」
「……口喧嘩、多いけどな」
「喧嘩っていっても、嫌いでしてるのじゃないよね。仲良さそう」

 優月はクスクス笑う。

「希生さんも優しいし。玲央も優しい」
「……オレ、優しくできてる?」
「もちろん」

 ふふ、と笑ってうんうん頷いている。

「玲央より優しい人、居ないと思ってるくらい、優しい」
「――――……」

 それはないだろうけど、と思いながらも、嬉しそうに笑う優月の顔に、自然と口元が綻ぶ。

「オレが優月を好きだから、かもな?」

 そう言うと、優月はオレをまっすぐに見つめた。

「――――……んーでもさ。好きな人に優しくするのだって難しいことだって思うよ? 玲央は、オレにも優しいけど、双子にも優しかったし、お店とかで会う店員さんとかにも、優しいし。友達といる時はまたちょっと違うけど、でも、皆玲央のこと大好きなの分かるし」
「――――……」

「だから、玲央は、別にオレを好きだから優しいんじゃなくて、元から優しいのだと思う……って前も言ったかな? オレ、いつもそう思ってるよ」

 ふふー、とにっこり笑って、むぎゅ、と抱き付いてくる。

「……ほんと大好き」


 すり、と頬に優月の髪の毛。
 なんかほんと。愛しいんだよな。こういうとこ。


 そんな大した奴じゃないけど。

 優月の大好き、が今のままずっとあってほしいと思うと。
 自然と、優月の好きなオレで居られたらいいなと思う。

 でもなんか。
 優月は、オレが無理しなくても。
 ……そのまんまで居たら、好きって言ってくれそうな気もして。

 

「……オレ、優月が、オレと居てくれるなら、仏になれそう」
「え」

 きょとんとした顔でオレを見て。
 優月は、ぷぷ、と笑い出した。「笑うなよ」と言うと。「だって」とケタケタ笑ってる。

 ふ、とまた微笑んでしまう。

「悟り開くの?」
 笑いながら聞かれるので、もう、「ん」と頷くと、またクスクス笑う。


「じゃあオレも修行しよ」

 優月は楽しそうに笑いながら、そう言った。

  
 なにこの会話。
 意味分かんね。と思いながらも。


 なんか、ほっこり穏やかすぎて、笑える。




 

しおりを挟む
感想 830

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ルームメイトが釣り系男子だった件について

perari
BL
ネット小説家として活動している僕には、誰にも言えない秘密がある。 それは——クールで無愛想なルームメイトが、僕の小説の主人公だということ。 ずっと隠してきた。 彼にバレないように、こっそり彼を観察しながら執筆してきた。 でも、ある日—— 彼は偶然、僕の小説を読んでしまったらしい。 真っ赤な目で僕を見つめながら、彼は震える声でこう言った。 「……じゃあ、お前が俺に優しくしてたのって……好きだからじゃなくて、ネタにするためだったのか?」

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

処理中です...