【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

文字の大きさ
738 / 856
◇希生さんちへ

「うっかり」*優月

しおりを挟む



「うーん……まあでも、カッコいいお兄ちゃんだったけど……蒼くんはちょっと、特殊だったかな?」
「何が?」

 真顔で聞かれるとちょっと怖いんだけど。

「だって、ちょっと怖そうなのに優しいし。挨拶ちゃんとしろ、とか皆に言ってたし。めんどくさって言うのに、オレの学校の運動会来てくれたり。オレ、子供だったけど、色々不思議だった。……あ、蒼くんの高校の制服もカッコよかったよね」

 ふふ、と笑いながら言うと、蒼くんは、何か言おうとして、結局何も言わない。すると、久先生がクスクス笑って、オレと蒼くんを見比べた。

「そうそう、なんかね……優月が相手だと、蒼はたまに言い返すのやめるんだよね。優月が小さい頃からそうだった。今もそうなんだね」

 可笑しそうに言われて、「そうだっけ……?」と蒼くんを見上げる。確かに今は何か言うのをやめたみたいだったけど。

「優月の前だと、めんどくさ、が減るの、面白かったな」

 クスクス笑う先生に、んー?と首を傾げる。「でも、蒼くんが言うのはオレも聞いてましたよ?」と、不思議がっていると。

「優月が居ないと、それの十倍くらい言ってたよ」
「えっそんなに?」

 蒼くんを見上げると、蒼くんは苦笑い。

「十倍は言いすぎ。んな訳ないだろ」
「あ、そうだよね」

 あは、と笑いながら、蒼くんを見上げる。

「蒼も勝てないのか? 優月くん」

 希生さんが笑うと、蒼くんは一瞬黙って、「勝ち負けじゃないし」と苦笑いを浮かべている。

 蒼も、って。も、って、何だろう。
 ……ていうか、そもそも、の話で。

「そもそもオレ、蒼くんに勝てたと思ったこと、一回もないですけど……」

 そう言うと、皆がクスクス笑うので。
 思い切り納得されたのかなと、それはそれでどうなんだろうと苦笑していると。

「優月は本気でそう思ってるんだろうけどな」
 と、玲央がオレを見つめてくる。

「……どういう意味?」
「いや。良いよ。蒼さんは、お兄さんみたいって言ってたもんな」
「んー、うん。そう」

 ふふ、と笑うと、蒼くんもそれ以上は何も言わず、玲央の写真に目を向ける。

「つかさ。……どう見ても、オレより玲央のが尖ってるだろ」
「そうですか?」

 玲央が自分の写真を見ながら、ふ、と笑う。

「そんな感じも、カッコいいよねー」

 紺のブレザーにネクタイしてるんだけど、ちょっと緩めた感じが、めちゃくちゃカッコよくて。なんか大人っぽくも見える。

 んー。なんか。
 オレの高校時代と並べたら、同じ年とは思えない、と思う。


「玲央って、高校生の頃から大人っぽいね」
「……そう?」

 ふ、と玲央が笑ったオレの後ろから。

「大人っぽくなかったぞ? ガキんちょだった。完全に」

 希生さんの、笑いを多く含んだ声が聞こえてきて、あ、と固まる。


「ていうか、優月くん、今の玲央を大人っぽいと思ってるのか?」
「え。あ、はい。すっごく……」

 そう答えると、んー、と希生さんは自分の顎に触れて、何やら悩んでいる。

「玲央、どうやって、思い込ませた?」
「ちょっと、じーちゃん、人聞き、悪すぎねー?」

 玲央がめちゃくちゃ嫌そうに言って、「優月聞かなくていいぞー?」と言うので、ふふ、と笑ってしまったら。

「何で笑うのかなー優月は」
 と苦笑で見られて。

「だってやりとり面白いから……」

 そう言うと、ふーと息をついた玲央は、くしゃくしゃとオレを撫でる。

「!」

 何で今ここで、よしよし撫でたんだろう、と思った瞬間。
 あ、やべ、という表情の玲央。

 
「んー……」

 蒼くんがそんな風に言いながら、オレの向かい側のソファに腰かけて。

「……まあなんか、あれだよな」
「……?」

「うっかり撫でるくらい、いつもそうしてンのは、分かったって感じ?」

 そんな風に言って笑いながら、蒼くんは久先生を見る。
 ぼぼ、と赤くなったオレに、久先生は、「からかうなってば」と言いつつも、何だかニコニコ笑ってるし。

 希生さんの方は真隣すぎて、今見れないのだけど。

「お前が人の頭撫でてる姿自体、あんまり見たことないかもな」

 追い打ちなのか何なのか、そんな風に言って笑う。




しおりを挟む
感想 830

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ルームメイトが釣り系男子だった件について

perari
BL
ネット小説家として活動している僕には、誰にも言えない秘密がある。 それは——クールで無愛想なルームメイトが、僕の小説の主人公だということ。 ずっと隠してきた。 彼にバレないように、こっそり彼を観察しながら執筆してきた。 でも、ある日—— 彼は偶然、僕の小説を読んでしまったらしい。 真っ赤な目で僕を見つめながら、彼は震える声でこう言った。 「……じゃあ、お前が俺に優しくしてたのって……好きだからじゃなくて、ネタにするためだったのか?」

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

処理中です...