【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇希生さんちへ

「意外」*玲央

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 優月はしばらく、ぽー、とした顔で絵を眺めてて、オレはその優月を見つめてるだけでなんだか穏やかに時は流れていく。

 こん、と一応のノックの音がして、静かにドアが開いた。
 じいちゃんと久先生が、椅子に座ってるオレを見た後、ぽー、と絵を見てる優月を見て、ふ、と微笑む。

「どんな感じで見てるのかなって見に来た」

 言いながら笑う久先生と、隣に、じいちゃん。

「優月はずっとあんな感じ?」
 先生が優月の後ろ姿を見て微笑みながらオレに聞いてくる。はい、と頷くと、そっか、とまた優月の背中に視線を戻す。

「絵画教室の子供たちと、美術館に行こうっていう遠足をしたことが、何回かあるんだけどね。お母さんたちも参加で」

 静かな声で、久先生が続ける。優月はまだ、二人に気づいてない。

「ある時、美術館の後に動物園も行こうって日があってね。もう、動物園の方が楽しみな子が多くて、他の子たちは、ささーっと見ていってね。まあ絵を習ってるとは言っても、子供だからそんな子が多かったんだけど」

 ふふ、と笑っていったん言葉を止める。

「優月、どうしたと思う?」
「えーと……? すごくゆっくり見て、全然出てこなかった、とかですか?」

 なんとなく想像しながら、言ってみると。
 可笑しそうに笑いながらオレを見つめる。

「ゆっくりすぎて全然進まないってお母さんから連絡がきて、せっかくだからゆっくり見せてあげたいから、動物園はやめておきますって。そしたら、蒼が、面白そうに笑って。好きなだけ見てから、動物園にくればいいじゃん、とか言って。で、結局、蒼だけ動物園で優月を待ってて、一緒にまわって」

 クスクス笑う先生に、なるほど、と頷いてしまう。
 そんな頃から、そんな感じだったんだ。

「蒼は、結構冷めて考えるとこがあるから、そんな自分勝手な感じで団体行動乱すなよ、て言いそうだなーと思ったら、そんな感じで。意外で驚いたんだよね。……まあ、なんか。最初から、優月のことは可愛がってて。例外、て感じがすごくするんだよ」

 ふ、と久先生が笑うと、じいちゃんも、頷く。

「蒼は確かに合理的だし割り切るし……でも、優月くんを可愛がるのは、蒼にとってもいいことだったかもな」
「うん。そう思うよ。母親は早くに亡くなったし、兄弟も居なかったし。結構一人でなんでもできて、なんでもやってしまう子だったけど……なんか優月のほのぼのなマイペースが、蒼には良かった気がする。蒼も、優月に早くしろとか、言わなかったし。……多分優月は、早くしなさいって言われたら、我儘言わずに聞く子なんだけどね。お母さんもそんな感じで許してたし、蒼も許すし……」

 久先生は、オレを見て、ふんわり笑う。

「蒼がそんな感じで、ずっと可愛がってるから、ついつい私も、なんだか特別に優月を見てしまってね。表向きは、教室では特別扱いはしないけど」
「――――」

 黙ったまま、先生を見つめ返すと。

「まあ……今優月が幸せそうにしてるのが、嬉しいなと思うくらいには、大事に思ってるかも」
「かも、じゃないよな。ほぼ孫みたい、だろ」
 そうツッコミをいれたじいちゃんに、久先生は、ふ、と可笑しそうに微笑む。

「――まあ、そうだね」

 クスクス笑い合ってる二人に、「ていうか、じいちゃんも孫みたいに思ってる感じするけど」と聞くと。

 少しだけ、ん? と真顔でオレを見た後。
 ふ、と笑って、そうかもな、とか言ってるし。


 優月のあの感じって……守られてきたからあの感じなのかな。
 と思うと。
 なんとなく、その守ってきた人達の気持ちが、分かる気がする。

 オレも守っていけると、いいなと、思ったりするのが。
 オレ自身もやっぱり意外で、不思議だ。








(2024/3/31)

玲央サイド好きって言っていただけて嬉しかったです🥰
たまに書くと、楽しいです(´∀`*)ウフフ
蒼くんsideも書こうかな……。
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