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◇ライブ準備
「オシャレ化」*優月
しおりを挟む指輪の交換みたい、なんて思いながら、玲央にも指輪をつけさせてもらって、何だか幸せいっぱい。
慣れないアクセサリーに、なんだかちょっと違和感はあるけど、でもそれは、なんだか嬉しい違和感で。
お店を出て、玲央と一緒に歩きながら自然と笑顔になってしまう。
「嬉しそう」
そう言って笑う玲央に、「嬉しい」と笑い返すと、「オレもだけどね」と玲央がオレの肩を引き寄せて、ぎゅ、と力をこめる。
「もう、会場に向かおうかなーとは思うんだけど。ちょっと、良い感じに遊んでみようかなーと思うことがあってさ」
「遊ぶ?」
「ん。あ、あった。ちょっと来て、優月」
「うん??」
少し表通りから外れた道にあったドラッグストアに、玲央と一緒に入る。
ヘアケアのグッズのところで玲央が足を止めたので、オレも一緒に止まる。スタイリング剤かな? と思ってると、玲央が見てるのは少し違うところな気がする。
「ヘアカラー?」
「ん。ちょっと遊ばせて」
「染めるの???」
「色付けるだけ」
ふ、と玲央が笑う。染めるつて時間かかりそうだから無理だよね。なんだろ、と思いながらも、玲央が楽しそうなので、選んでる玲央を見守っていると。
「これでいいや」
あっという間に決めて会計を済ませた玲央に連れられて、隣のショッピングセンターのトイレに入った。
「優月、ちょっとここ立ってて」
鏡の前で、玲央が今買ってきたものの包装を開ける。
「青と紫どっちがいい?」
「ええと……青……?」
好きな方を答えると、玲央の手が、オレの髪に触れた。何かをスッと、髪の表面に少しだけ滑らせる。
「? あ。わー、すごい、なにこれ」
滑らせたところの髪が、青になった。そんなにきつい色じゃなくて、少し青が入る程度だけど、ちゃんと分かる。
「シャンプーで落ちるから。このままやってっていい?」
「うんうん! いい。楽しい」
ふ、と微笑んで、玲央がオレの髪に触れていく。
指先で髪を挟むようにして、ゆっくりするすると撫でるたびに、青い綺麗な色が、ふわりと浮かび上がっていく。
「それって、なに??」
「チョークタイプのヘアカラー。髪にハイライトをいれたい時に使える」
「そんなのがあるんだね」
すごいねぇ、と言うと、玲央は、「使わないと知らないよな」とクスクス笑う。
「取材とかで、染めるほどじゃないって時、簡単に色が入るから、楽。金とかシルバーとか、色々あるけど」
「青、綺麗」
「うん。似合うな、優月」
玲央の優しい声と、優しい手つき。鏡の中の自分が、少しいつもと違くなっていく。魔法みたい。玲央の手。
「よし、オッケイ」
「ありがとうー」
綺麗に入った、青のライン。
「わーすごい」と盛り上がってる間に、クスクス笑いながら、玲央は自分の髪にも、色を入れてく。
「あの、玲央玲央」
「ん?」
「オレも。ちょっとだけ。玲央のしたい」
「いいよ。ていうか、後ろやって。見えないから」
そう言ってくれて、嬉しくなって、玲央からチョークを受け取った。
玲央の髪の毛、元々こげ茶色っぽいから、綺麗な紫が入ると。すごく個性的で。なんだかそれが玲央だと、なんだかミステリアス。
「……めっちゃかっこいー、玲央」
「はは。そう?」
「これって、ラメが入ってるんだね」
「優月のにも入ってるよ。太陽に当たると、キラキラするかも」
ふ、と笑いながら、玲央がオレの髪に触れる。
なんだか、とってもとってもカッコいい玲央と。
普段に比べたら、大分オシャレ化したオレが、鏡の前で並ぶ。
「可愛い。よし、オッケ。待ち合わせ場所、行こ」
玲央は笑って言うとオレの手を引いた。
「あいつら、ちょっとびっくりするだろうな」
そんな風に言って、玲央がオレを見て、目を細めた。
(2024/9/1)
お知らせ。
エブリスタのスターギフトという、作者応援の機能に「恋なんかじゃない」で参加してみました。お礼のSSも用意しました。詳しいことはエブリのエッセイ「ことばのかけらたち」の9/1のところに書きます。もしもし、応援してやってもいいよと思って頂けたら。
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