813 / 856
◇ライブ準備
「白のイメージ」*優月
しおりを挟む
皆で入場したところで、玲央とオレは、甲斐と勇紀からからそれぞれ袋を受け取った。玲央がさっき頼んでくれていたTシャツ。
「とりあえず、着替えといでよ。ここで待ってる」
「サンキュ。優月、トイレいこ」
「あ、うん。勇紀、ありがとう」
三人と離れて、玲央と一緒にトイレに入って、奥の鏡のスペースへ立ち入る。誰も居なかったので、ここでぱっと着替えちゃうことにした。「鞄持ってる」と玲央が言うので一旦預けて、シャツに腕を通してぱっと着替えた。裾をぴんと引っ張って形を整えて、鏡を見た。黒のTシャツに英字のTシャツ。シンプルなんだけど、だからこそ余計に、つけてるアクセサリーや、髪の毛の青が目立つ気がする。
「イイ。似合う」
ふ、と玲央が目を細めながら言ってくれる。嬉しくなって、ありがと、と言ってから、玲央の荷物を全部預かると、玲央も手早く着替えた。甲斐が用意した玲央のTシャツは、白だった。
「白、カッコいい、玲央。そういえば、あんまり着ないね」
「あー確かにな。なんかオレは、白着るタイプじゃないと思ってたかも」
「えーなんで、今すっごくカッコいいよー」
なんか、清潔感が何倍増しになったような。ていうか、いつでも、清潔感はあるんだけど、なんか強烈に。
「カッコいい」
ついついご機嫌で眺めてしまうと、玲央は、「そう?」と笑った。
「優月の黒も、珍しいかもな」
「あー確かに。敢えてあんまり着てないのにしたのかなあ?」
着ていた服をしまってから、皆のところに戻ると、皆は、お、と楽し気に玲央とオレを見比べた。
勇紀がオレを見つめて、うんうん頷きながら。
「優月、いいじゃん。玲央の白も。どっちも、あんまり着ないだろ?」
「あ、やっぱりそう思って、この色なの?」
「そーだよ、三人で、何色がいいかなって相談してさ」
「そうなんだーありがとうー」
なんだかそんなこと、相談して決めてくれたんだと思うと嬉しくて、どうしても笑ってしまう。
「優月の黒は、そうしようってすぐ決まったんだけどさ。玲央、どうするーってなってさ。そういえば、玲央、白のTシャツってあんま着ないよなって。シャツとかは辛うじて白っぽいのも着るけど……」
「だってなんか白のイメージねーし」
勇紀の言葉に続けて、甲斐も可笑しそうに笑う。そのあとを継いで、今度は颯也も笑いながら。
「でも、最近の玲央は、白でもいいんじゃねーのって、オレが言ったら、二人もしばらく考えてから、まあそっか、て言いだして、決定」
――えーと。そんなに玲央って、白いイメージないの? 確かにあんまり着てないなあとは思ったけど。目の前の玲央は、めちゃくちゃカッコいいけどなあと、思ってると。
「最近のオレなら白でもって……」
玲央が呆れながら言って、三人を見て苦笑する。
「ほらだって、優月と一緒で、なんか浄化されてるってことになってるじゃん?」
と勇紀が言うと、玲央はまた苦笑。
「なってるって、それ、甲斐が勝手に言っただけだろ」
「いやいや、オレらの中では、もうそれはそうってことになってるし」
なってる、と颯也も頷いて、なんかニヤニヤしている。玲央は、ちらっとオレを見て、その後、微笑むと、「――まあそれでいっか」と言いながら、オレの頭に手を置いて、くしゃ、と撫でた。
「優月のおかげで、白が似合うようになったらしい」
「えー? ……なんかそれは良く分かんないけど」
言いながら、玲央を見上げる。
「ていうか、玲央はなんでも似合うよ?」
ふふ、と笑いながらそう言うと。
「違うんだよー優月! そう言うことじゃないの!」
あはは、と勇紀が笑う。
「顔とかじゃなくてさぁ、こう、なんつーの? 内面的に似合わないっつか。白ってイメージじゃなかったんだよ」
「そうそう。夜って感じ。黒とかの方があってたけど……なんか最近の玲央って、落ち着いてるしな」
「早起きだし。一限居るし」
勇紀と甲斐と颯也が、ポンポン言ってきて、玲央に「内面的に白があわねーって……」と言い返してるのを聞きながら。
……あ、でも、玲央、そういえば自分でも、白着るタイプじゃないとか言ってたなぁ。と思うと、皆の認識は一致してるみたいで。
ぷふふ、と笑ってしまう。
皆で飲み物を買って、会場への通路を歩いていると、前を歩いていた勇紀が、玲央を振り返った。
「でもさー、なんかこのまま玲央が落ち着いてさぁ、今までのちょっと色気みたいなの、なくなったらどーする?」
皆が一瞬、シン、として、あー、と甲斐と颯也が唸る。
「なんかそれは、バンドの危機なんじゃね?」と、甲斐。
「玲央のそういうのがカッコいいって、ファン、多いもんな」と颯也。
「マジでどうする、まったりとさ、優月と猫だっこして、ほのぼの玲央になっちゃったら」
どうやら、勇紀は、それはちょっと本気で心配してるらしい。ヤバいよね、と眉を顰めている。
(2024/9/20)
(ここに書いてた後書きは消しました。
いつか本にする時が、もしきたらまた詳しくお聞きしますね♡)
「とりあえず、着替えといでよ。ここで待ってる」
「サンキュ。優月、トイレいこ」
「あ、うん。勇紀、ありがとう」
三人と離れて、玲央と一緒にトイレに入って、奥の鏡のスペースへ立ち入る。誰も居なかったので、ここでぱっと着替えちゃうことにした。「鞄持ってる」と玲央が言うので一旦預けて、シャツに腕を通してぱっと着替えた。裾をぴんと引っ張って形を整えて、鏡を見た。黒のTシャツに英字のTシャツ。シンプルなんだけど、だからこそ余計に、つけてるアクセサリーや、髪の毛の青が目立つ気がする。
「イイ。似合う」
ふ、と玲央が目を細めながら言ってくれる。嬉しくなって、ありがと、と言ってから、玲央の荷物を全部預かると、玲央も手早く着替えた。甲斐が用意した玲央のTシャツは、白だった。
「白、カッコいい、玲央。そういえば、あんまり着ないね」
「あー確かにな。なんかオレは、白着るタイプじゃないと思ってたかも」
「えーなんで、今すっごくカッコいいよー」
なんか、清潔感が何倍増しになったような。ていうか、いつでも、清潔感はあるんだけど、なんか強烈に。
「カッコいい」
ついついご機嫌で眺めてしまうと、玲央は、「そう?」と笑った。
「優月の黒も、珍しいかもな」
「あー確かに。敢えてあんまり着てないのにしたのかなあ?」
着ていた服をしまってから、皆のところに戻ると、皆は、お、と楽し気に玲央とオレを見比べた。
勇紀がオレを見つめて、うんうん頷きながら。
「優月、いいじゃん。玲央の白も。どっちも、あんまり着ないだろ?」
「あ、やっぱりそう思って、この色なの?」
「そーだよ、三人で、何色がいいかなって相談してさ」
「そうなんだーありがとうー」
なんだかそんなこと、相談して決めてくれたんだと思うと嬉しくて、どうしても笑ってしまう。
「優月の黒は、そうしようってすぐ決まったんだけどさ。玲央、どうするーってなってさ。そういえば、玲央、白のTシャツってあんま着ないよなって。シャツとかは辛うじて白っぽいのも着るけど……」
「だってなんか白のイメージねーし」
勇紀の言葉に続けて、甲斐も可笑しそうに笑う。そのあとを継いで、今度は颯也も笑いながら。
「でも、最近の玲央は、白でもいいんじゃねーのって、オレが言ったら、二人もしばらく考えてから、まあそっか、て言いだして、決定」
――えーと。そんなに玲央って、白いイメージないの? 確かにあんまり着てないなあとは思ったけど。目の前の玲央は、めちゃくちゃカッコいいけどなあと、思ってると。
「最近のオレなら白でもって……」
玲央が呆れながら言って、三人を見て苦笑する。
「ほらだって、優月と一緒で、なんか浄化されてるってことになってるじゃん?」
と勇紀が言うと、玲央はまた苦笑。
「なってるって、それ、甲斐が勝手に言っただけだろ」
「いやいや、オレらの中では、もうそれはそうってことになってるし」
なってる、と颯也も頷いて、なんかニヤニヤしている。玲央は、ちらっとオレを見て、その後、微笑むと、「――まあそれでいっか」と言いながら、オレの頭に手を置いて、くしゃ、と撫でた。
「優月のおかげで、白が似合うようになったらしい」
「えー? ……なんかそれは良く分かんないけど」
言いながら、玲央を見上げる。
「ていうか、玲央はなんでも似合うよ?」
ふふ、と笑いながらそう言うと。
「違うんだよー優月! そう言うことじゃないの!」
あはは、と勇紀が笑う。
「顔とかじゃなくてさぁ、こう、なんつーの? 内面的に似合わないっつか。白ってイメージじゃなかったんだよ」
「そうそう。夜って感じ。黒とかの方があってたけど……なんか最近の玲央って、落ち着いてるしな」
「早起きだし。一限居るし」
勇紀と甲斐と颯也が、ポンポン言ってきて、玲央に「内面的に白があわねーって……」と言い返してるのを聞きながら。
……あ、でも、玲央、そういえば自分でも、白着るタイプじゃないとか言ってたなぁ。と思うと、皆の認識は一致してるみたいで。
ぷふふ、と笑ってしまう。
皆で飲み物を買って、会場への通路を歩いていると、前を歩いていた勇紀が、玲央を振り返った。
「でもさー、なんかこのまま玲央が落ち着いてさぁ、今までのちょっと色気みたいなの、なくなったらどーする?」
皆が一瞬、シン、として、あー、と甲斐と颯也が唸る。
「なんかそれは、バンドの危機なんじゃね?」と、甲斐。
「玲央のそういうのがカッコいいって、ファン、多いもんな」と颯也。
「マジでどうする、まったりとさ、優月と猫だっこして、ほのぼの玲央になっちゃったら」
どうやら、勇紀は、それはちょっと本気で心配してるらしい。ヤバいよね、と眉を顰めている。
(2024/9/20)
(ここに書いてた後書きは消しました。
いつか本にする時が、もしきたらまた詳しくお聞きしますね♡)
994
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。
下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。
大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。
ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。
理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、
「必ず僕の国を滅ぼして」
それだけ言い、去っていった。
社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる