【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

文字の大きさ
815 / 856
◇ライブ準備

「熱」*優月

しおりを挟む

 ホールに入って、チケットの番号を見ながら席に着いた。VIP席はめちゃめちゃ舞台に近くて、びっくり。これだともう歌う人達、ほんとすぐ側って感じ。端から、甲斐、颯也、勇紀、玲央、オレ、で横並びに座った。
 
「今日出る人たちって、先輩なんでしょ?」
「そう。去年オレ達が負けた人達」
 玲央が苦笑しながら言うので、「そう言ってたよね。仲のいい人達なの?」と聞いてみると。

「全然。普段会わないし。あの大会の時に初めて会って、挨拶くらいはしたけど。そんな感じだよな?」
 玲央か皆に聞くと、皆も頷く。

「一年と四年なんて学校でも会わないしね」
「大会で結果が出て、ステージの上で話したくらいかも」

 そう言う勇紀と颯也に「なるほどー」と頷く。

「でもさすがにここにいたら、気付かれるかもな。覚えてたらだけど」
 と甲斐が笑う。

「皆の顔、そう簡単に忘れないと思うよ。一人なら気付かないかもだけど、皆一緒に居るし。あれだね、ここで見てたら、その先輩達、びっくりするかもだね」

 ふふ、面白いなあ。 あれ? って顔、されたりするのかなあ。気付くか、見てようっと。

「オレ、その人達初めて見るから……ちょっと楽しみ」
 なんだかわくわくしてきた。すると、玲央がオレを見て「すごい楽しそうだな?」と微笑む。

「だってさ、玲央達すごいのに、それに勝った人達なんでしょ。なんかもうそれだけで、すごそうだもん」

 そう言うと、皆は「オレらの評価がめっちゃ高くない?」と笑ってる。

「えー高いよ、評価。皆めちゃくちゃカッコいいし、歌も好きだし、なんていうか……熱、みたいなのがあって、すごく、感動するし」

 この前見たライブを思い出しながら、そう言うと、皆、クスクス笑う。

「まあ優月は、玲央が歌ってるから余計ってのもありそうだけど」

 勇紀がクスクス笑いながらオレをからかうので、「違うもん。あ、でもそれもあるかもだけど」とよく分からない反応を返してしまうと、また皆に笑われたけど。

「でも、違くて、それ抜いても、すごく、感動したよ。皆、練習もカッコいいもん」
 言い切ると、玲央が、ぽふぽふ、とオレの頭をなでる。

「負けた理由、な。一応みんなで考えたんだよな、去年」
 玲央の言葉に、皆が苦笑しながら頷く。勇紀が、続けて、クスクス笑う。

「そうそう。今まで人気投票とかも負けたこと無かったしさ。結構オレら、ショックだったもんね」
「まあでも、中高の遊びみたいな中では、良かったっつうだけの話だったって結論になって……」

 颯也も考えながらそう言って、ふ、と苦笑い。

「で、結局、本気度の違いだなって結論かな。あの人達はプロを目指して頑張ってて、真剣度も全然違ったし。優月が言った「熱」みたいなの、マジですごかった」
 甲斐の言葉に、そうなんだ、と頷くと、玲央が、ふ、と笑った。

「あれからだもんな、もっと頑張ろうみたいな、言い出したの。だから、優月は、オレらが負けて、頑張ろうって言い出して、一年弱経ってから見てるから、どうして負けたのって思うかもだけど――……」
「そうだよ、それまでは練習とかだって、結構適当に楽しくわいわいできればいいやって感じだったもんね」
「練習の回数も全然。してなかったよな?」

 ははっ、と勇紀と甲斐がおかしそうに笑う。

「てことは、優月は、過去一番良いオレらから、見たんだな」
 颯也がクスクス笑って、オレを見つめてくる。確かに。なんかお得な気分。

「しっかも、あれだよね、玲央、優月に夢中になっちゃってるから、いいとこみせようと思って、超頑張っちゃってるしね。その玲央を見てるんだから、そりゃ、カッコいいってなるよねー」

 あはははーと笑って、勇紀がそんなことを言ってくる。

 いいとこ見せようと頑張って……くれてるのかな? 隣の玲央を見つめると、玲央は、クスクス笑いながら、「まあ、否定はしないけど」と言ってくる。キラキラな瞳が、オレを見て揺れるので。
 玲央の向こう側に皆が見えては居るのだけれど。
 間近で、そんな風にキラキラ見つめられると。

 かぁ、と頬が熱くなる。

「はいはい、そこ、こんなとこでラブシーンやめてね。後ろから丸見えだから」
「そんな明るくねえし大丈夫だよな?」

 本気で玲央しか見れなくなっちゃうから今はやめてください。
 なんて思って、「だめだめ」というと、ちょっと面白くなさそうな顔をした玲央の手が、頬にふれて、ぷに、とつまんだ。


「あーもう。優月はいちいちそんな可愛い顔で反応しなくていいからね」

 勇紀が呆れたように言う。
 ……玲央がオレだけを見ちゃうと、向こうの三人からはオレの顔しか見えなくて。ちょっとこの座り位置は失敗かな……むむ。




しおりを挟む
感想 830

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ルームメイトが釣り系男子だった件について

perari
BL
ネット小説家として活動している僕には、誰にも言えない秘密がある。 それは——クールで無愛想なルームメイトが、僕の小説の主人公だということ。 ずっと隠してきた。 彼にバレないように、こっそり彼を観察しながら執筆してきた。 でも、ある日—— 彼は偶然、僕の小説を読んでしまったらしい。 真っ赤な目で僕を見つめながら、彼は震える声でこう言った。 「……じゃあ、お前が俺に優しくしてたのって……好きだからじゃなくて、ネタにするためだったのか?」

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

処理中です...