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第1章
「バスケの皆と」2
しおりを挟む高校時代、啓介とはいつも同じチームだった。
対外試合は当然だけれど、チーム内で適当に別れて紅白戦をやる時も、コンビでの連係プレイの練習のために、必ずオレ達は同じチームに居た。
よく考えたら、練習の短時間のミニゲーム以外は、啓介が敵チームで戦った記憶がほとんどない。
一緒に居ると、すごく、頼もしい。
居てほしい所に居てくれて、欲しい所でパスをくれる。
啓介が転校してきてくれて、バスケするの、ますます楽しくなったっけ……。
「――――……」
――――……絶対、負けないから。
日頃の鬱憤も込めて、絶対勝ってやるー!!
「要、しょっぱな、3点狙うから」
「OK」
こそ、と要にいうと、 ふ、と要が笑う。
開始数秒。スリーポイントを狙った位置でパスを受けて、シュートしようとした瞬間。急に現れた啓介にまんまと邪魔された。
「――――……バレバレ、雅己」
にや、と笑う。
……くっそーー!!!
誰に止められるよりムカつく。
そこからは。
――――……大会レベルの真剣さで。
めっちゃ戦った。
「――――……もーむり……」
体育館に、倒れる。
――――……オレが無理矢理付き合わせた仲間達も一緒に倒れた。
「雅己、おまえ――――……」
「……2試合連ちゃんなんだしさー……」
「……普段、運動不足、なんだからさー……」
「――――……もうむり……」
休憩を入れたとはいえ、2試合連続のハンデのせいもあり、結局後半、あと一歩が追いつけなくなり、結局わずかな差で、負けた。
……悔しすぎる。
……くっそーーー!
「……雅己、大丈夫かー?」
クスクス笑いながら、仰向けに倒れてる雅己の隣にしゃがみこんだ啓介に、周りから一斉にブーイング。
「……倒れてんの雅己だけじゃねーだろ!」
「こっちも心配しろー」
そんな声に啓介は苦笑い。
「せやかて、雅己の走り方が一番やばかったから――――……」
む、としたまま、上から見下ろしてくる啓介を睨む。
「――――……お前、次すぐ試合だろ。負けてこいよ」
「……はいはい」
啓介が苦笑いをしながら、歩き去っていった。
くっそ。
――――……啓介、やっぱ、速いし、うまいし。
やる気になった時の、瞳が鋭くて。
――――……やっぱ、バスケやってる時が、一番カッコいいな。
初めてバスケ部に来た啓介を見た時、あんまりカッコイイバスケをするものだから、ほんとに驚いたっけ。なんて、遠い遠い記憶を呼び起こす。
けれど、悔しくて、すぐにその記憶を頭から、吹き飛ばした。
――――……あー、すげえ悔しい。
試合負けてもいいから、あいつから、3ポイント決めたかったなー……。
しばらく倒れていたけれど、息が落ち着いてから起き上がり、体育館の壁に背中をついて、もう一度ふー、と深く息をついた。
同じ様に起き上がった皆が話し始める。
「なんかここまで走るの、すげー久しぶり……」
「走んねえよな、大学生って」
「体育も適当だしなー」
「ほんとほんと」
「……体なまるからたまにやろうぜ」
オレが言ったら、皆、クスクス笑いながら、頷く。
目の前で試合が始まる。
なんか。
「啓介、手抜きじゃね?」」
ぼそ、と呟くと。
「……つーか、あんだけ雅己について動いてたんだから、結構キてると思うけど」
「そーだよ、お前、むちゃくちゃ。真剣度Maxだったじゃんか……」
「……啓介に負けたくなかったんだよ」
オレがそう言って、壁にズルズルと沈み込むと。
「お前、ほんとに啓介好きなー」
「……は?」
いま何と?
「あいつ引っ越してきてからずっと、啓介大好きだもんなー」
「……大好きなんじゃなくて、負けたくなかったんだっつーの」
しかも大好きって。
何言ってんだ、こいつら……。
「大好きだから、負けたくないんでしょ?」
「違う。むかつくから、負けたくねーの」
周りの皆が、ぷぷ、と笑う。
「この試合終わったら、いける奴らで、飯食いにいこっか」
「いいね」
「そーしよー」
「雅己は?」
「んー、たぶん行ける」
「多分て?」
「啓介のバイクで来たから……啓介が行くなら」
「はいはい」
「なに。はいはいって」
「だから結局啓介が大好きなんでしょ」
「一緒に来ただけだし」
「だから、今朝一緒に居たって事でしょ? 仲良しだよねえ、ほんと」
「―――……っ」
要のクスクス笑いに、ぐ、と黙る。
確かに一緒に居たけど……。
何となく黙って、試合を眺める。
――――……やっぱ、うまいなぁ……啓介。
傍から見てると、分かる。
別にオレだけにとって、やりやすいんじゃなくて。
多分、誰にとっても、啓介と組むと、やりやすいんだろうなと思う。
全体を見て、場をよく読んで、誰にパスを出して攻めさせるか、それとも自分で行くか。常に気を配ってる、感じ。
安心感が、半端なかったもんなあ、啓介とバスケしてると。
その安心感が……確かに、大好きすぎて。
大好きすぎるから、今の関係も、断れなかったし。
……断ったら啓介と居れなくなるのかなって、思ったから……。
緩くドリブルしながら誰かにパスを出そうとしてた啓介が、急に速く動いてマークを外し、手本みたいなシュートを決めた。
「おー、啓介かっけー!」
「さすがー!」
一緒に見てた皆がはやし立てる。
見学してた女子達も、キャーキャー言ってる。
なんかむかつく、なー……。
むす、としてると。
啓介が汗を拭きながら、こっちを見て。
むす、としたオレを見て、ぷ、と笑った。
――――……何、笑ってンのかな、ほんと。むかつくな。
そのまま、啓介のチームが勝利して、今日のバスケは終了。
着替えたり、片づけたり、帰る準備をして、そのまま結構な大人数で、昼を食べに行く事になり、近くの和食の店が広い座敷があるというのでそこに決まった。
「雅己」
啓介が隣に来た。 さっきのまま、少しむっとして、見上げる。
「行くやろ?ごはん」
「……お前行くなら」
「ん?――――……ああ、バイクあるから?」
「……そうだけど」
「別にあの店からなら、おまえんち、歩いて帰れるやろ?」
「……ん?――――……あ、そっか」
啓介に言われて、そっか、別に啓介が来る来ない関係なく、いけるのか……と思いながら、啓介を見上げてると。
「――――……オレんちに帰るていうなら、バイク乗せたるけど?」
ふ、と笑って。
――――……まるで、オレが絶対それに頷くかのような聞き方で。
……なんだか、それが、またムカついた。
「……いい。 自分ち帰る」
ぷい、と啓介から離れて。
要たちの居る所に近づく。
「要たち、店まで歩いてく?」
「うん。歩くよ」
「じゃ一緒に行く」
「啓介のバイク乗ってくんじゃないの?」
「いい。歩く」
「ふーん? まーいいけど。 啓介、バイクで店いくのかー?」
「ああ。とりあえずオレ先行っとくわ」
普通にそんな風に言ってる。
まあ……別に、無理やり乗ってけとは、いつも言わないけど。
そんな風に普通に答えてる啓介に、若菜が近づいてく。
「先輩、バイク一人ですか?」
「ん、そやで」
「後ろって、乗せてもらえたりしますか?」
聞こえるけど。見ない。
そっちは見ない。
頑なに見ないでいると。
「別にええよ。店まで、5分やけど」
「全然良いです! 嬉しいー!」
「はは。そんな嬉しいん?」
クスクス笑って、啓介が答えてる。
――――……。
乗らない事、選んだのオレだけど。
……ふーん。
……女の子、乗せるんだ。
…………ふーん……。
別に、良いけど……。
オレは、なにも聞こえない、聞こえてない。
皆と楽しく話しながら、店に向かって歩き出す。
おそらく駐輪場に行ってた啓介が、若菜を乗せて、歩道の近くを減速して走りながら、「先行くなー」と言いながら、消えていっても。
……気にしない気にしない。
啓介んちは、親父さんがバイクを好きな事もあって、高校で免許取って、バイクを買ってもらってから。啓介のバイクなんて色んな奴が乗せてもらってて。
だから、今更、こんな5分位の道、啓介の事を大好きな女子を乗せていったからって。
………何にも気にならない。筈。
そもそも、オレの好きは、別に、そんなの気にする、好き、じゃない、筈。
啓介と付き合うって言ってしまってるけど。
それは恋愛感情で好きとか、そんな風には思った事、無いはずだし。
……これ、オレが気にするって。
変だもんな。
気になんか、なって、ない。
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