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第1章
「何で?」
「……ちゃんと聞いててな?」
啓介が、まっすぐオレを見つめる。
「……オレが高校ん時に言わなかったのは……狭い世界やったからてのもあるし。確定してなかった、てのもある」
「――――……」
「……部活もやし、クラスも、友達関係も、めっちゃ狭くて、密接やったろ?」
「……うん」
「あんな中で、お前に好きやて言うて、嫌われたらと思うたら言えんし。お前だって、気まずすぎて嫌やろうし、オレらが避けあってたら、周りかて気になるやろうし…… それに、まだ、あの頃は――――…… めっちゃ、好きで、キスしたいとか……触りたいとか――――……そういうんは、かなりやばい事やと思うて抑えてたし。……本当にそうなのかは、よう分からんかった」
「――――……」
まあ。
……言ってる事は、分かるので、うん、と頷いた。
「んで……大学ん入って、合コンとかするようになって、また、色んな女の子と付き合うてみてたけど――――…… 途中から……」
「――――……?……なに?」
そこで止まって、ちょっと言いずらそうにしてる啓介に、首を傾げると。
「……途中からは、合コンで、お前の方が気になって」
「……ん?」
「変な女に連れ込まれないかとか。 そっちの方が気になるようになって」
そう言われると、すぐに思い浮かぶ事が、ひとつ。
「……だから、お前、邪魔しにきてたの?」
そう言ったら、啓介がちょっと嫌そうに、苦笑い。
「……あ、分かっとった?」
「……なんか、誰かと良い雰囲気ぽくなってくると、なんか啓介がいっつも横くるなーとは思ってた」
「……うん。 まあ。そう、やな。そうしてた」
「……合コンで、何してんの、お前」
率直に思った事をまっすぐ伝えたら。
「――――……んな事言うても…… すまんとしか言えへんけど」
思い切り、苦笑いの啓介。
少し考えて。オレは。
「……正直、助かった、て感じもあったから、オレ、邪魔すんなとか言ってないけど……」
「――――……ん、言われてないけど…… 助かったて?」
「……やっぱりオレ、合コンとかで、すぐ相手見つけてどうにかなんの、やだったし。女の子と2人になって、良い雰囲気になってきちゃって、どうしようかなと思ってたら、お前来てたから…… ちょっと助かってた、というか……」
「――――……」
「……つか、お前はいっつも、誰かと消えてたくせに、どーなんだって、思うけど」
ふと思い出して、そう突っ込むと。
「……それは、最初の頃やろ? せやから、途中からって、言うてるやん」
「――――……」
「……雅己の事ばっかり気になって、女の子と付き合うてても、お前の事ばっか思い出すし。……それで、余計に色んな女の子、付き合うてみてたけど……」
「――――……」
……あの、やけくそみたいに女の子と付き合いまくってた時かな……。
話を聞きながら、思い出す。
「で……その内、男でもそういう意味で好きやて、ほんまに思うてるのが、自分で分かったんやけど……」
「――――……」
「告白したんは……大学て、別に、自由やんか。授業の教室かて広いし、好きなとこ座れるし、受ける人数も多いし。もし、避けられて、友達でいられなくなっても…… 高校ん時よりは、お前も避けやすいやろ? もう、好きって言うてもええかなって。……もし、雅己がオレを拒否しても、離れる事もできるやろと思うたから……お前に言う事に決めた」
「――――……」
「まあでも、離れたいとか言わせたくないと思いながら、告白はした」
しばらく視線を落として、啓介の言った事を、自分の中で、考えて。
それから、改めて啓介を見つめると。
「……ここまでは、良い? 納得した?」
そう聞かれたので、「うん」と答えた。
啓介の、言ってる事は。
普通にちゃんと、分かって。
――――……そこまでは、分かった。けど。
肝心なとこが、まだ分からない。
……何で、オレを、好き???
友達として、じゃなくて。
「――――……あとは、何で、お前が好きか、やろ?」
そう言って、啓介は、またまっすぐオレを見つめて。
ふ、と笑った。
「……何でとか必要なん? ……オレがずっと、お前の事、一番好きなんは、お前が分かっとるはずやけど……」
緩む、優しい瞳に、どき、とする心臓。
伸びてきた手が、頬に触れた。
不意に近づいてきた啓介に、優しく、キスされる。
「――――……好きやなかったら、触らんよ……」
囁かれて、そのまま、唇が、重なってきた。
何度か、触れるだけのキスを、される。
全然動けず。
心臓、ドキドキしたまま。啓介のキスを受けて。
――――……好きじゃなかったら……キスなんか……させないけど。
でも。まだ。納得できないし。
そんな風に思っていたら。
また、まっすぐに、見つめられた。
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