【やさしいケダモノ】-大好きな親友の告白を断れなくてOKしたら、溺愛されてほんとの恋になっていくお話-

星井 悠里

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第2章

「不意打ち」

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『ん。――――……ほしたら後で電話する』
「ん……じゃな?」

 そう言って、切ろうとして少しスマホを離したオレの耳に、啓介が何か言う声が聞こえた気がした。もう一度、持ち直す。

「……何か言った?」
『言うた』

「何?」
『もう夕飯食うた?』

「ううん。まだこれから」
『ちゃんと食えや?』

「うん。大丈夫、オレ一人暮らし、一応少しはしてたし?」

「そうやけど……」
「分かってるって。 お前何回それ言ってんだよ? 大丈夫だってば」

『せやかて一番心配なん、飯なんやもんなぁ。適当に済ませそうやし』

 啓介の苦笑いが聞こえる。

『ま、えーか。また明日から、オレ、側に居れるしな』

「そうだな。――――……じゃな、啓介」

『あ、なぁ、雅己!』

「ん? 何?」

 なんか、電話、全然切れないんですけど?
 そう思って、クスクス笑ってしまうと。


『……めっちゃ好きやで? めっちゃキスしたい』

「――――……!」


 ……あぁ。もう、不意打ちだなぁ。


 好き、とかは、さっきも言ってたし。結構慣れてきたけど……。

 キスしたいとか、そういうことしたいとか言葉で言われるのは、ほんと、慣れない。

 啓介が側に居ないことに、ちょっと感謝してしまう。
 前触れもなく放たれた言葉に、一瞬にして熱が顔に集まった、から。


「……分かってるってば」

 照れ隠しに言うと、「あ、分かっとる?」と、啓介が笑う。

「……うん。分かってるってば。昨日から、そう言う感じのこと、何回言ってんの?」


 すると、啓介は少しだけ黙って、それから、苦笑いしてる雰囲気。


『せやな。ほんまやな……。ん。じゃな、雅己、またあとでな』
「うん。じゃあな」


 ボタンを押して、今度こそ、通話を切った。

 黒くなった画面を少しの間見つめて、はあ、と息をつく。


 …………オレも好きって。キスしたいとか……言うべきだった、かなあ……??


 でもなあ。面と向かって言うのも恥ずかしいけど、電話に向かって一人で言うのもなあ……。まあ。言わなくても、大丈夫かな、うん。
 
 軽く息を吐きながら、スマホを握り締めた。


 なんか麺類で済まそうと思ってたのに。
 ……ちゃんとって言われたなぁ……。


 んー……。

 とりあえず、ちゃんと夕食を取って。

 それから――――……。
 啓介から電話が来るまで、のんびり待とうかなー……。


 ベッドで、電気消して、啓介と話して。
 「おやすみ」って、あいつの声で聞いてから――――……。

 それから、眠ろう。


 で、今夜が終わったら。 
 もう、「明日」だし。 明日になれば、啓介が帰ってくる。



「――――……おし♪」



 勝手に綻ぶ顔をそのままに。
 さっきよりも少し増えた星を、見上げた。


「――――……」


 細く光る月と。小さくバラバラと瞬く星と。
 耳に残る、啓介の声に。

 何だかますます、微笑んでしまう。



 髪を揺らして吹く風が――――……とても心地よかった。






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