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第2章
「ハードル高い」
しおりを挟む「どうだろね。オレ達、いつか、喧嘩するかな」
「どうやろな」
「……喧嘩っていう喧嘩、したことあったっけ?」
「んー。お前が、わーって何か言ったり、少しむっとしてたりはある気ぃするけど」
「それは別に喧嘩じゃないよね? なんかこうもっとさ。もう本気で絶交、みたいな」
思い出そうとしてみるけど。
高校一年から四年目。
こんなにずっと居てもあんまり、そういうのは思い当たらないような。
「まあ今までは友達だったからなー。これから、付き合ってくなら、あるのかもよ?」
「せやなあ……どうやろな?」
しばらく、何でなら喧嘩するかなと考えてみたら、はっと思いついた。
「啓介が浮気したら、喧嘩するかも」
「とんでもないとこ、いきなり言うたな」
啓介が苦笑いでオレを見下ろしてくる。
「それは絶対喧嘩でしょ」
「……雅己が浮気っちゅーのは、ないん?」
「えーオレがー??」
あるかなあ、と考えてみる。
「……オレは無理かもしんない」
「無理、なん?」
「うん。オレが浮気するとしたら、相手は女の子だと思うんだよ。てなるとさ。女の子としたことない訳じゃん、オレ」
そう言うと、啓介は、ん、と頷きながら首を傾げる。
「女の子と初めてっていうハードルとさぁ、啓介を裏切るっていうハードル、結構高いの二個も超えないと、浮気出来ないんだよ。分かる?」
「……分かるけど」
啓介は、ぷ、と笑う。
「それは、結構高いん?」
「えーすげー高いでしょ? 初めてで浮気とか、すんごい、ドキドキな気がするじゃん? そんな二個もドキドキをクリアしてまで、浮気なんてしないと思うんだよね……そこいくとさ、啓介は、女の子とするのに、何の障害もないよなー。したことあるわけだし、オレとする時も、する方だし」
「せやから言うてんやんか、お前がしたいなら、ええよ、て」
啓介のそのセリフに、きっ、と啓介を睨んでしまう。
あー、またとんでもないこと言い出したしー。
「そんな話してないの! ていうか、今の流れでオレに経験させようって、オレの浮気防止のハードルを一個クリアさせることになるけど、いーのか!」
「――――……」
少し後、ぷは、と啓介が笑い出して、くっくっと肩をゆすってる。
「良くなかったわ。なかったことにして」
「だよな!」
もう、と怒ってると、啓介の手が、オレの頭を撫でた。
「ちゅーか、こんな可愛えから、男と浮気するかも? お前を好きな男、現れたら困る」
「――――……えっ?!」
「ん?」
超びっくりして、大きな声が出てしまった。
「なになになに、今の」
「ん?」
「オレが、啓介以外の男と、浮気して、抱かれるとか言ってんの??」
「そうなったら嫌やなーって。でも可愛ぇから、あるかも」
「ないないないないない」
ぶるぶる、首を振る。
「言っとくけど、無理。啓介以外の男に触りたいって思えない。男は、啓介だけでいい」
「――――……」
啓介は、なんだか面白そうにオレを見つめる。
「あ、でも……これも違うか」
「ん?」
「オレ、男も女も、全部の人の中で、啓介だけでいいよ」
「――――……」
うん。だって、なんか。誰にも触りたいとかキスしたいとか、思わないし。
――――……啓介を裏切ってまで。とか。絶対無い。
そんな風に思って、うんうん頷きながら言ったら。
啓介の手が、オレの首にかかって、引き寄せられて。
肩を組んだみたいなかっこで、キス、された。
どうせ真っ暗な河原だし、誰も居ない。
遠くから見えたとして……肩を組んでるみたいには見えるだろうけど。まあいいや。
……ていうか。ほんとこいつって。
キス魔だなー。
結局全然我慢してないような。
ちょっと可笑しくなる。
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