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第2章
「ザ・強引」
しおりを挟む朝から温泉入って、釣りして、バスケして、温泉なんて入ってしまったオレは、どうやらめちゃくちゃ疲れていたみたいで。変なヤキモチに、むー、てしながら、隣で座ってる啓介をぼんやり見てたら、もうあっという間に眠ってしまっていたらしい。
「……雅己?」
頬に触れられて、啓介の声。
ん、と薄く目を開けると、部屋は暗い。
「――――……?」
啓介はオレを見下ろしていて、「起きた?」と微笑む。
「……あれ?」
何度か瞬き。あれれ誰も居ない。
「……皆は?」
「先行ってバーベキューの準備しとる」
「え」
「お前めっちゃよう寝てたから、皆、電気消して、出てった。オレは残っとくて言うたから」
「……あーごめん」
むく、と起き上がって、あくびをひとつ。
「気持ち良さそうに寝とったな」
クスクス笑う啓介に、うん、と返す。
「すっごい気持ちよかった。ありがと、寝かせてくれて」
「……ん。まあオレは、役得やし」
「やくとく?」
「寝顔見とった」
「……変な顔してた?」
そう言うと、啓介は、「なんでやねん」と笑う。
「可愛い顔しとったよ」
「またそういうこと言う……あ、そうだ」
ふと思い出して、すぐ近くでクスクス笑ってる啓介を真顔で見つめる。
「……ヤキモチ妬かないって言ったじゃん、ここに来た時」
「ああ。言うたけど」
「けど?」
「それは部活の皆の話な」
「えー……そうなの?」
「志門、雅己のこと、めっちゃ気に入っとるやろ? だから言うとる」
え? と啓介を見つめる。えと。本気? と目で問うと、「オレは本気で言うとるけど?」とため息。
「んー……ちょっと、前々からずっと謎なんだけど」
「何や?」
「啓介はさぁ。オレがそんなにモテると、ほんとに思ってるの? しかも、男のことまで言い出してるし」
「――――」
女の子ならまあ、たまには、告られたり、良い感じになってみたりあったけど……なんか啓介、ほんと、前から言ってることおかしいんだよなぁ。
……ていうか、それよりも、自分の超モテるのをどうにかしてほしいんだけど。
「あんなぁ、雅己?」
「うん」
「……先輩にも、お前のことめちゃくちゃ可愛がっとる人おったし。お前を可愛えて思う奴は、居るから」
「ん……啓介とか?」
ぷぷ、と笑いながら聞いてみると、啓介は、「オレもそーやし」とまっすぐ肯定してくる。肯定されると、言ったこっちが恥ずかしい。
「……もーとにかくさ。前から思ってたんだけど、オレ、そんなモテないから。心配しないで。ていうか、むしろ、啓介は自分のこと気をつけろよなー」
「は? ――オレが何を??」
「つか、オレよりお前のがモテるじゃん」
言ってるとちょっと嫌になってくる。
何で、オレの方が気にしないといけないんだか。もう。
「啓介は、どんなに可愛くて綺麗な子が、迫ってきても、恋人居るから無理、って絶対言うんだからな」
「――――」
「お酒飲んでて、よっぱらってる子が寄りかかってきたりしたら、そーっと離させるんだからな? ちょっとホテルで休もう、とか、絶対乗っちゃダメだからね?」
むむ、と想像しながら眉を寄せ、啓介に向かって言い終えると、啓介は少しの間オレを見ていたけれど。少し俯き加減で笑うと、そのまま、オレの頭を抱き寄せて、自分の肩に押し付けた。
「オレは絶対無いて」
「――――……」
「雅己より大事にしたいもの、無いから」
その言葉をちょっと心の中で噛みしめた後。
オレは、啓介を見上げた。
「……ん。じゃあずっとそのままでね?」
言うと、啓介は、ん、と頷いて、オレの頬にキスをした。
なんだかとってもいい雰囲気で、じゃあ皆の所に行こうか、と言おうとしたら。
「せやけど、お前は、なんかちょろーと連れてかれそうやから、気ぃつけろや、て言うてんの」
「な……! ちょろーって……! 失礼、啓介」
「せやかてなんやちょろいんやもん。強引なのにはめっちゃ弱いし」
「……てか、ザ・強引って奴に言われたくないー」
「まあそこは否定せえへんけど……」
「しないの?」
「してもええん?」
「……だめ」
と、いい雰囲気はあっという間に元通り。何やらわーわー言いながら部屋を出たオレ達だった。
まあいつも通りだけど。
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