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第2章
「来て良かった」
しおりを挟む途中一瞬だけ冷や冷やしたものの、それ以外はすごく楽しんで、バーベキューが終了に近づいていく感じ。
もう焼くものも無いし、皆お腹いっぱいって言ってるし、あーなんかもう終わっちゃうのか、寂しいなあと思った時、宿の人達が「もう食べ終わりましたか~?」とか言って、やってきた。皆で「ごちそうさまでしたー」と揃う。
「じゃここ片付けちゃいますんで……えーと、こちら、用意していた分です」
「あ、どうも、ありがとうございます」
啓介が何か、おっきな紙袋を受け取っている。
「むこうの広いところでどうぞー」
「あ、これバケツです。そこの水道使ってください」
なんだろー? と皆が見てる。
オレは我慢できなくて、啓介の近くに小走り。
「なになに?」
そう言ったら、バケツの一つを渡された。
「何人かバケツに水入れて、あっちまで持ってって」
「何なの? あっもしかして……」
「せや。花火」
ニヤ、と笑う啓介に、寂しくなってた気持ちが、ぱぁぁぁと明るく輝いたみたいな。
「やったーありがとー!」
わーい、と啓介にぴょん、と抱きついて、一瞬で離れる。
「要―、水入れに行こ―!!」
「水―?? あ、花火?」
「そうだってー!」
わーいと、同じように盛り上がった皆で、バケツを手分けして、花火を持ってる啓介の後ろに、ついていく。
「やったーやったー」
弾みながらそう言ってると、啓介がオレを振り返って、「がきんちょか」とクスクス笑う。でも啓介も楽しそうな顔してるので、まあ良し。
ていうか、今は何を言われても、楽しいから全然オッケイなのだ。
啓介が紙袋から花火を出すと、紙袋を敷いて、その上に花火を並べた。
「もう袋からは出してくれてるんだね」
「そうみたいやな」
「花火袋から出すのめんどいもんねーセロハンテープとかすっごいついててさ。子供ん時、早く花火したいのに取れない―ってなってた記憶がある」
「まあ、花火やからな。袋んなかで動いても危ないやろうし……ちゅーか、子供ん時やなくて、今も雅己はそうなってるやろ」
啓介に、可笑しそうに笑われて、視線を合わせて、ん、と頷く。
「うん。 早くやりたい」
わくわくする。花火、去年の夏以来だもん。
すぐに花火専用のろうそくをいくつかばらけて置いた。
花火の先に火をつけると、ふわ、と炎が燃えて、しゅわ、と音を立てて、光る。音と光。すごく、綺麗。
「啓介、花火ー!」
「ああ。綺麗やな」
「うんうん!」
少し広い方に移動して、花火をじっと見つめる。
皆がやりはじめて、すごい煙と、光。
めっちゃきれー。
手に持った花火をちょっとくるくるまわして、光の残像を追って楽しんでいると。
「雅己」
啓介に呼ばれてそっちを見ると、写真を撮られた。
「は。良い写真」
クスクス笑って言う啓介に、「あとで見せてー」と笑うと、啓介が頷く。
「皆も撮ってくるわ」
「うん。あ、なあ啓介」
「ん?」
「花火ありがとー。なんかバーベキューもう終わりかーって寂しかったから、すっごいテンション上がった」
「――――……」
「あ、終わった」
持ってた花火が終わって、バケツに入れてると、啓介が近づいてきた。
「ん?」
「抱き付いてきたもんな?」
囁かれて、ぱ、と顔を見る。抱き付いたっけ? と考えてから。
「あ、さっき? ああ、だって嬉しくてー」
「……お前今、抱き付いたか考えたやろ」
「あ、バレた」
「お前、ほんま、それ他の奴にすんなや?」
「しないよー……多分」
「多分て……はー。もうオレ、写真撮ってくるわ」
何だかちょっと呆れたように、でも笑う啓介に、オレもクスクス笑いながら。
「あ、オレも皆のこと撮っとくね~」
「頼むわ」
「はーい」
バイバイ、と手を振って、皆の撮影にいった啓介を見送る。
抱き付く……。
うーん。オレ、割と高校ん時の部活、やってた気がする。
さすがに大学ではそんな人に抱き付くようにこと無かったけど。だから多分、久しぶりにあんな風に抱き付いたんじゃないかなあ……よく覚えてないけど。
他の奴にはしないほうがいいみたいだな。うん。
ていうか。
ほんと、啓介ってば、ヤキモチ焼き。
ぜーんぜん、オレには意味ないのにな。なんて思うと、ちょっと可笑しい。
絶対オレ、そういう意味で好きなのも、触るのも、
啓介だけなんだけどな。とか思うと、くすぐったくて、笑っちゃう。
「あ、その花火、超きれー、こっち向いて!!」
「おー」
綺麗な花火と、楽しそうな皆を撮ったり。
オレも花火いっぱいして、撮ってもらったり。
旅行、来て良かったなぁ、としみじみ思った。
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