ゲーマー女子ですが魔王(♂)に転生してしまいました。殺されたくないので運命回避させていただきますっ!

近藤蜜柑

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始まりの章

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魔王とは、悪魔や魔物の王様。

こういったファンタジーの世界では、人間に害を与える種族・勢力の頂点に君臨する。勧善懲悪をテーマにした作品では倒されるべき悪の象徴として登場し、ラスボスになる事が多い。
Wikipediaより抜粋。



そう。多くの魔王は倒すべくして作り上げられ、倒される為にこそ存在する。

が・・・





「あーもう無理だよ!」
真央はそう言いながら、脳内でコントローラーを放り投げた。
実際には壊しでもしたら本当にクリア出来ないのでゲーセンでとったクッションに押し込むだけにとどめる。

幾度となく見たゲームオーバーを知らせる画面がスタート画面に変わり、宇宙をバックにして黒い表紙の太陽と月の描かれた古びた本がくるくると回っている。スタートを押すと、表紙のページが開かれてゲームが始められる。

幾度となく見たその画面を無視してそのまま寝転がり、不貞腐れる。真央の黒いボブも床に寝転ぶ。ついでに黒い瞳も休めるように閉じる。梅雨明けの夜でも暑い。扇風機を下に向ける。
部屋にエアコンはあるが、昼間しか使わないようにとリモコンを取り上げられている。

「真央!静かにしなさい!宿題は終わったの!?」
真央の母がドアを開けて寝転がっている真央を上から覗き込む。
夕飯を終えるなり、2階に戻りまたゲームに齧り付く娘を心配している。この年頃なら話題のドラマやアニメに夢中になる頃だ。
「残念。宿題はありませんよ~!」
「ならお風呂入りなさい」
「んー。後で~」
生返事を返してケータイをいじる。

「ケータイ触るならゲーム消しなさい」
と母親は言うが、
「倒す方法調べてみるの」
と言いながら眼鏡を直す。困った時の真央のクセだ。
「あらそう。ちゃんと消しなさいよ?」
真央が普段から興味がある事にしか眼に見えない事を知っている。その集中力は凄いモノなので、母親としてはスポーツや勉強に集中してほしいと思いながら黒と青がベースのボーイッシュな部屋を見回す。柄はチェックやストライプなど。
真央の洋服もボーイッシュな物がほとんどだ。
唯一の可愛らしさは飾られているゲームのぬいぐるみで、ヨッツィーやカーブィ、テカチュウなど。真央がゲーセンでとったり、一番くじで当てたり、友達から貰ったものである。

母親は可愛さとは少し離れたゲームでいっぱいの部屋を出てため息をついた。


真央はゲーマーだ。凝り性で、地味に戦う耐久も好きで、プレイ動画をネットにアップする事も少なくない。
普段は自分でゲームをプレイしながら地図を描いたり、どう戦うか追求する事が多いので、ある程度予想ができる。
しかし今回は、いろいろな方法を試すもことごとく失敗。レベルが低い訳でもない。こんな事は初めてだった。


真央が今クリア出来ないゲームはよくあるファンタジー物のRPG イノセント ワールド。
普通の村で平和に暮らしていた主人公に災害が降りかかり、故郷を失い、村を出る。
頻繁に起きるようになる災害は、旅をして行く中で原因は全て魔王であるラスボスによるモノだった事を知り、魔王を倒す為に仲間を増やし、ラスボスを倒す事で世界を救う。という王道なストーリーだ。

倒せない魔王について検索すると、マイナーなゲームだからかタイトルがヒットしなかった。魔王の名前もわからない。
やっと名前を見つけたと思ったらゲームで語られていない過去ばかりで、倒し方は出てこない。
友人に電話してみるとマイナーなゲームでもヒットしないはずないと、信じてもらえないし、そんな過去は無いと言われてしまう。

真央は納得出来ないと、色々な所で色々な検索の方法で調べまくった。





「真央!起きなさい!遅刻するわよ!」
母親の声で飛び起きる。服もそのままで、お風呂も忘れて調べまくっていたらしい。
お陰で過去はほとんど覚えてしまった。
少し汗をかいていたらしい。身体がじんわりしている。そろそろエアコンの使用を願いでるべきだろう。

何故か眼鏡だけはテレビ台の上にあった。
着けたままだった扇風機を止めるが、何処か違和感を感じた。
ゲームはロード画面のままだったので、テレビの電源だけ消しておく。

真央は気づかなかったが、扇風機は逆に回り、ロード画面は真っ黒な裏表紙から開いていた。



大急ぎで服を着替えて顔を洗い、ゼリー飲料を片手に家を飛び出した。

駅まであと少しのところで踏み切りが落ち、電車が来てしまった。
友人が真央が乗らなくてはいけない電車に乗るのが見える。駅に階段なども無い田舎なので、ここを渡り、改札を通れば電車に間に合う。
しかし、真央は以前にも何度かココで諦めて遅刻し、先生に目をつけられている。

仕方ない。今回だけだから!
踏み切りが閉まって、カンカンと音が鳴り響く中、真央は潜り抜けようとした。
ココで止まってから発進する電車だ。誰かの静止する声を無視して走り出したが、もう少しのところで真央の意識は飛んだ。


いつのまにか自分は倒れていて、身体中が痛い。友人が泣き叫ぶ声と救急車の音が聞こえていたが、眠気に襲われて真央は目を閉じた。
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