会談道中

shishamo346

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田舎の裏

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 会社では、すっかり、祟り神係りにされていた。お供えの相伴を持って行ったら、社長直々に出てきて、これからよろしくね、なんて笑顔で言ってきた。

 そうして、普通に過ごして、また、週末、稲荷神社に行った帰りに、観世の家の駐車場に車を停める。

 いつもの通り、観世が出てきたが、喪服姿だ。


「身内に不幸でもあった? だったら、帰るけど」

「丁度いいところに来たな。私の喪服を貸してやる。今から通夜に行こう」


 稲荷神社の帰りに通夜って、どうなんだろう。

 僕はもう、拒否するのもあれなので、言われた通り、観世の喪服を借りて、徒歩で会場に行く。

 僕は何も持っていないが、観世が道具から金から、全て、用意してくれていた。僕はただ、観世の隣りにいるだけだ。

 そうして、会場に行って、ぞっとした。

 遺影は、観世の元婚約者となった野野木美也子なのだ。

 僕は観世を見る。観世は苦々しいとい顔をして、遺影を見ていた。


「木野さん、わざわざ、ありがとう」


 野野木さんの父親が、わざわざ観世のところにやってきた。

 娘を失ったので、さぞや落ち込んでいるだろう、と僕は見た。



 笑顔である。



 娘を失ったというのに、野野木さんの父親は笑顔でやってきたのだ。


「お役目を放棄して出ていくなんて、罰があたったんですよ。死んで当然だ」

「………そこまで、気になさらないでください、と言ったではないですか」

「解剖したら、妊娠までしていました。本当に、とんでもない娘だ。育て方を間違えました」

「………」


 観世はそれ以上、何も言わない。言えないのだ。

 この通夜の会場で、悲しんでいる人が一人もいないのだ。皆、笑顔である。

 そうして、僕と観世はいたたまれなくなって、通夜の会場から逃げるように飛び出した。

 帰る途中、あの触りのあるT字路を通る。そこで、観世は足を止める。


「ここで、交通事故にあって死んだんだ」

「交通事故じゃ、仕方がないな」


 そこは、事故が多いという話だ。後で、会社の人たちに聞いたら、有名な話だった。


「こんな田舎にも、いくつかの有力者がいるんだ。その有力者には、警察といえども逆らえない」

「………」

「美也子の遺体は、解剖された後、火葬され、あそこに戻された。どういう姿で死んでいたのか、解剖の記録を私はこっそり見せてもらった。交通事故ではない死に方だった。だけど、交通事故として処理された」

「………」

「相談してくれれば、良いようにしてやったのに」


 観世は事故現場だというそこで泣いた。
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