異世界に転生したけど、手を取り合って生活してます。

東雲はち

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プロローグ1

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「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!」

全身に重力と風を感じながら大空を落下する。
その勢いは隕石でも降ってきているのではないかと間違えるぐらい高速でぐんぐんと地上へと近づいている。

「これ本当に大丈夫なんだろうなぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

その叫び声は誰も存在しない上空に響きながら男は地上へとまた少しと近づいていく。
幸いなのか不幸なのか男には上空から落下するだけの理由があり、落下しても大丈夫な様になっているのだがその事を男が確認する術もない。

落下地点はどうやら広い農地のようだ、小麦に似た作物が黄金色に茂っているのが男の目に映る。

「くそ!覚悟を決めるしかないか!」

そう言いながら男はどうしてこんな状況になっているのかと言う少し前の出来事を思い返していた...。

ーー少し前。

常に光が満ちている場所、天界。
そこは雲海が広がっておりその上に神々が住まう大小様々な領域が構築されていた。
ある場所は獄炎の火山地帯、ある場所は緑の溢れる南国の島。
人々が住まう次元とは別の場所でとある問題が起きていた。

「うーん、確かに問題だけど今すぐに我々が干渉する必要も無くない?」
「そうは言いましても上位の神々からどうにかしておけと言われておりまして...」

白を基調とした荘厳な神殿の一室、その外観に似合う様な意匠を凝らした家具の数々が置かれた部屋で二人、いや一神と天使は大きな机で向かい合って話しあっていた。

「どうにかしておけと言われたけど僕の管理する第3世界の人間達の時間換算すると、問題が起きるのは300年とか400年先だよ?なんで折角第3世界も安定期に入って暇を謳歌出来るって言うのにやらなきゃいけないんだよー」

そう言って机にべたりと身体を寝そべらせるのは中位の神、見た目は幼い少年のように見えるが光を司るヘリオス。

「そう言われましても...私は神々の御柱に仕える天使の1人でございますからそのお心までは...」

そう言って書類をヘリオスに届けたのは天使ミカエル、そう言いながらも天使軍の軍団長の一人である背丈の高く大ぶりな翼を背に纏った凛々しい女性である。
書類をさっと読んだヘリオスはその書類を机にバッと投げ捨てて文句を言う。

「というか他の世界を管理してる神達はどうなってるのさ、僕の所だけ問題があるって訳じゃないよね?それなのに僕にだけそんなすぐにやれなんて不平等だよ!不平等!」

そんな文句を言いつつバタバタと身体を動かして机を叩いて講義などしているヘリオス。

「私も全てを把握しておりませんが少なくともセレネー様の管理している第6世界などは問題なく管理されているとお聞きしました」

申し訳なさそうな声色でミカエルは淡々とヘリオスにそう告げていく。

「セレネーは良いよなぁ、第6世界はなんだっけ?単一宇宙でその中でも地球とかいう惑星にヒト族が繁栄してるんだっけ?」

「そう聞いております、魔素が存在しませんがその代わりヒト族は化学という一種の錬金術の様なものを発展させて様々な機械などを作り繁栄しているようです」

ミカエルから兄妹であるセレネーの管理する世界の事を聞いたヘリオスは身体を伸ばしながら返事をする。

「やっぱりねー、種族なんて少ない方が良いんだよ。まぁ様々なテストケースが必要でセレネーの所は単一種族に絞った場合、僕の所は様々な種族が居た場合のテストだから仕方ないけど...。にしても上位の神々は無理難題を言うなぁ」

椅子に座りながらその椅子をクルクルと回転させながらヘリオスはどうしようかと考えていく。

「下手に世界に干渉するわけにもいかないし、かと言って弱すぎる干渉をしても効果は逆、強すぎて特定の種族のみ繁栄するのも問題あり。あー!もう!どうすればいいんだ!」

椅子を回転させるのを辞めて声を上げて立ち上がるヘリオス。

「てか問題ってなんだよ、このまま行くと300年後ぐらいに魔王と呼ばれる存在が出現して世界のバランスが乱れる可能性アリって。それもまた自然の摂理なんじゃないかなって僕は思うんだけど?」

不意にそんな質問を投げかけられた入口付近で佇んていたミカエル。

「愚考するに第3世界は様々な種族の融和、共存を目的の一つとしてますから...第7世界等の種族の強さをテストしている世界では魔王などいう強大な存在が現れても問題ないと考えますが...」

凛とした声でミカエルはそう淡々とヘリオスに告げていく。
その事を聞いてヘリオスはまぁそうですよねという顔をして椅子に座り考えていく。

「だよね、分かってたけど解決策が思いつかないなぁ」

暫くの間書類を抱えて考え込んでいたヘリオスだが、ゆっくりと立ち上がって動き出した。

「分からないことは調べに行こう、ということでセレネーの領域まで行くよ」

そう言って部屋の出入口の扉まで歩いていくヘリオス。

「えっと、私もですか?」

「当たり前じゃん、上官命令だよ!」

「この後天使軍の訓練がありましてその監督をする予定なのですが...」

「天使たちはみんな真面目だから監督が居なくてもちゃんと訓練するよ!」

歩きながらそう言うヘリオスに渋々付いていくことになったミカエルだった。
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