異世界に転生したけど、手を取り合って生活してます。

東雲はち

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プロローグ4

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「さてさて~、目の前に荘厳にそびえるのがオイラのご主人のセレネー様が住まう神殿だよ~」

のんびりとした口調で蝙蝠型眷属のナハトはそう言って闇夜の中を飛んでいく。
幸い街灯らしき光を放つものが所々に置かれているため悠もナハトを見失うことなく付いていく。
それに闇夜だがなぜか明るい気がする、これもこの謎の場所の効果なのだろうか.......。

「にしても普通に話せてるし普通に呼吸も出来てるし、一体何なんだ。夢、じゃないよな」

悠はあれこれ考えながらも神殿へと一歩一歩近づいていく、これがどういう状況なのかを解決するために。

「いや~、オイラヒト族ってこうやって会うのは初めてなんだよ~、基本領域のなかを飛んでるだけだからね~」

「ははは、俺も喋る蝙蝠と出会ったのは初めてだよ、ついでにこんな世界に来るのもね.......」

そんな感じで雑談を交えながら歩いていると、遠目に見えていた神殿の近くまでたどり着いていた。

「あっという間の案内だったねぇ~、ちょっとそこで待っててねぇ、セレネー様を呼んでくるよぉ」

そういってナハトは翼をバサバサとはためかせながら神殿の奥へ飛んでいく。

「さてと待っててと言われてもなぁ」

悠はそう言って辺りをきょろきょろと見まわしたりしている。
空を見上げると何が輝いているのか分からないが様々な光が夜空を照らしている。
他にも月の様な天体が浮かんでいたり、時折良く分からない鳥の様な生物が飛んでいる以外は意外と良い景色だななんて考えながら待っていた。
そうして少しの間慣れない景色を楽しんでいた所、ナハトの羽音が聞こえてきた。

「お~い、呼んできたよぉ~」

呼んできたとは言うものの人影らしいものは見えないなと悠は目を凝らして見ていた。

「......?どこにも居るようには見えないけど?」

そう言ってると目の前に影や闇が集まり、黒い人型を形成していく。
完全な人型を形成すると長い黒髪の女性が姿を現した。

「......ようこそ我が領域へ.......突然の事で驚いていると思われますがひとまず中へ......」

その登場の仕方に驚いているとその女性は消え入りそうな声でそう告げて神殿の中へと歩いていく。
驚きの連続で質問をすぐするに気にもならなった悠は現した女性の後ろについていくのだった。

神殿の内部は豪華な装飾が随所に施されており、外と比べて照明も多いため比較的明るい。
とは言え全体的に暗い印象を持ってしまう。それは黒を基調とした色合いが多いせいだろうか。
その中のメインホールと思われる場所、豪華なシャンデリアや大きな階段などが設置されている。
敷かれたカーペットの上を悠は歩いていた。

「......申し遅れましたが、私はセレネー。この領域を管理しています......そしてあなたの元居た世界も......」

「えっと、それは神様とか仏様とか言う意味ですかね」

「神......そうですね、広義で言えばそうなのかもしれません......」

「はぁ......?」

いまいち要領の得ない受け答えを繰り返しながら、大きな階段を上り神殿の奥の一室。
豪華な紋様の描かれた両開きの扉の前までやってきた。

「......色々疑問はあるでしょうがひとまず中へ......座って話しましょう......」

そう言って扉に手をかけて開いていく。
部屋の中は執務室といった感じで大きめな応接テーブル、それにワイドタイプのソファーが二席。
奥には恐らくセレネーと名乗ったこの人物が仕事をするための机に、よくわからないがモニターの様なものまで壁に設置されていた。

「.......どうぞ座ってください......ナハト......何か接待用の飲み物などを用意してきて......」

そう言ってセレネーは悠にソファーに座るように促す。
蝙蝠のナハトはどうやって運んでくるのか分からないが部屋を出ていった。

「さて......何から説明しましょうか......」

「まず、えっと異世界に来てもらうってどういうことだ?えーっとガブリエルとかいう人に言われたんだけど......」

「話せば長くなります......が、説明しましょう......」

そうしてセレネーはどうして悠が地球から別の世界に行くことになった経緯を説明し始めた。
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