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第三章
…またバレてしまいました2
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「…由紀也」
ビクリと僕と姉さんの肩が揺れる。
「沢村、由紀也さん」
ヒ~ッ!!
な、なんで僕の名字まで!
恐る恐る佐藤の顔を見ると、僕と目が合った後何気に視線を門柱に向ける。
…あ、表札…。
ガクリとあからさまに落ち込む僕らを見て、佐藤は複雑な顔になっていた。
開き直るわけでは無いけれど、佐藤には常々申し訳ないと思っていたので、腹を括ってすべてを話す覚悟を決めた。そう思った途端、気になった先ほどの姉さんの言葉。
「姉さん、お礼って?」
「…え?」
姉さんは自分の失態にかなり落ち込んでいたらしく、まだ浮上できずにぼんやりとしている。
「だから、何か佐藤君に迷惑とかかけたんじゃないの?」
「あ!」
何かを思い出したらしいが、それでもまだ佐藤にばれたことから立ち直れていないようで、姉さんはさらに僕にも謝ってくる。
「ご、ごめんね、由紀也。私…ついうっかり…」
「うん。それはいいから、で?」
「あ、うん。実は帰りの電車で痴漢にあったところを、佐藤君に助けてもらったの」
「痴漢!?」
僕は思わず佐藤を振り返る。
「ああ、痴漢は駅の職員に突き出しておいたから」
そうか、正義感の強そうな佐藤の事だ。きっと見かねて困っている姉さんを助けてくれたに違いない。
本当に、どんだけ良い奴なんだ、佐藤って。
「…それでね、スカート汚されちゃって…。拭いたんだけど上手く取れなくて、見かねた佐藤君がカーディガンを貸してくれたの」
見ると、姉さんの腰には男物のカーディガンが巻かれている。
「ありがとう」
そう言うと佐藤は、「いや、大したことじゃないから」と笑って言って、
「じゃあ俺はこれで…。カーディガン良いですか?」と、そのまま帰って行こうとする。
このまま佐藤を帰したらダメだと、僕は瞬時に判断して佐藤の腕を掴んだ。
佐藤は僕の突然の行動に、え?と、目を丸くする。
「カーディガンはクリーニングして返します。それより、話をさせてもらえませんか?」
僕と姉の二人から真剣に見つめられて、佐藤は困ったように眉を下げる。
「分かったよ」
緩く笑って了承してくれた佐藤に、僕と姉さんはやっとの事でホッとする。
そして佐藤を部屋に招き入れた。
ビクリと僕と姉さんの肩が揺れる。
「沢村、由紀也さん」
ヒ~ッ!!
な、なんで僕の名字まで!
恐る恐る佐藤の顔を見ると、僕と目が合った後何気に視線を門柱に向ける。
…あ、表札…。
ガクリとあからさまに落ち込む僕らを見て、佐藤は複雑な顔になっていた。
開き直るわけでは無いけれど、佐藤には常々申し訳ないと思っていたので、腹を括ってすべてを話す覚悟を決めた。そう思った途端、気になった先ほどの姉さんの言葉。
「姉さん、お礼って?」
「…え?」
姉さんは自分の失態にかなり落ち込んでいたらしく、まだ浮上できずにぼんやりとしている。
「だから、何か佐藤君に迷惑とかかけたんじゃないの?」
「あ!」
何かを思い出したらしいが、それでもまだ佐藤にばれたことから立ち直れていないようで、姉さんはさらに僕にも謝ってくる。
「ご、ごめんね、由紀也。私…ついうっかり…」
「うん。それはいいから、で?」
「あ、うん。実は帰りの電車で痴漢にあったところを、佐藤君に助けてもらったの」
「痴漢!?」
僕は思わず佐藤を振り返る。
「ああ、痴漢は駅の職員に突き出しておいたから」
そうか、正義感の強そうな佐藤の事だ。きっと見かねて困っている姉さんを助けてくれたに違いない。
本当に、どんだけ良い奴なんだ、佐藤って。
「…それでね、スカート汚されちゃって…。拭いたんだけど上手く取れなくて、見かねた佐藤君がカーディガンを貸してくれたの」
見ると、姉さんの腰には男物のカーディガンが巻かれている。
「ありがとう」
そう言うと佐藤は、「いや、大したことじゃないから」と笑って言って、
「じゃあ俺はこれで…。カーディガン良いですか?」と、そのまま帰って行こうとする。
このまま佐藤を帰したらダメだと、僕は瞬時に判断して佐藤の腕を掴んだ。
佐藤は僕の突然の行動に、え?と、目を丸くする。
「カーディガンはクリーニングして返します。それより、話をさせてもらえませんか?」
僕と姉の二人から真剣に見つめられて、佐藤は困ったように眉を下げる。
「分かったよ」
緩く笑って了承してくれた佐藤に、僕と姉さんはやっとの事でホッとする。
そして佐藤を部屋に招き入れた。
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