修行のため、女装して高校に通っています

らいち

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第四章

こっちが本性です2

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「由…」

デートという言葉に反応したのか、梓が顔を赤くして僕を見る。
椎名がいったん梓に視線を移動した後、僕に視線を戻し睨みつけてきた。

「何だよお前、佐藤くらい格好良くて性格もいいんなら納得もいくけどな、そんな線の細い奴が何で牧野の隣にいるんだよ」

「ちょっと!」
僕が言い返す前に梓が反応してしまった。

「由紀は良い奴だよ。それと、外見とか自分で変える事の出来ない事を貶すような奴だったの? 椎名は」

ああ、やっぱり男前だ、梓は…。
でも、良いんだけどさ、出来れば由紀也と呼んで欲しい…。

「いや…それは…」

意外な梓の反撃に、椎名は戸惑ったように目線をずらした。

「大丈夫、梓。気にしてないから。それに僕、細いけどしっかり鍛えているから意外と筋肉ついてるよ」

僕はわざと口角をゆっくり上げて、気にも留めて無い事をアピールした。
こういう時、どうも僕は雪乃丞の表情になってしまうみたいだということはちょっと自覚している。
何というか、普段の僕ではなく芝居がかってしまうという感じだ。

その僕の顔を見て梓も椎名たちも呆けた顔をする。
そして梓は顔を赤くして、椎名たちはムッとした顔になった。

「何かお前腹立つ」
「奇遇だね、僕もだよ」

ニッコリ笑って嫌味を返すと、椎名はあからさまに嫌そうな顔をして眉を顰める。

「気の合わない僕たちが一緒に行動したら、梓が気まずい思いするだけだよ? だから4人で遊ぶのは却下と言うことで」

椎名はぐうの音も出ないといった感じで僕を睨みつけ、隣の林はため息を吐いていた。どうやら誰も反論する気は無いらしい。

「行こうか梓」

僕は梓の手を取って歩き出した。
梓はどこかぽかんとした様子で、僕に手を引かれて素直についてきた。

「…びっくりした」

ちゃっかり梓の手は握ったままだ。

「何が?」
「…っ。だ、だって普段の由紀は、あんなこと言ったりしないだろ。意外過ぎだし…」
僕は思わず苦笑して梓を見た。

「な、何?」
「だって、あれは女子仕様だもの。今は地だよ?」
そして、つと梓を真剣な目で見て―――

「…幻滅した?」

梓は一瞬で茹蛸のように真っ赤になり、ぶんぶんと顔を横に振った。

「そ、そんな事ないからっ」
「そっか、安心した」

僕は梓に、にっこりと笑いかけた。
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