63 / 106
第五章
日常ふたたび1
しおりを挟む
今年のGWは、かなり充実したものとなっていた。
稽古はもとより、とうとう梓の彼氏になれたんだ!
もう、嬉しすぎて頬は緩みっぱなしだ。
昨日、梓を送ってから家に戻った僕は、すぐに梓に電話を入れた。帰宅を知らせ、お休みの挨拶をするために。
そして明日からはまた、普通に学校が始まる。
学校では佐藤の彼女で、プライベートでは梓の彼氏という何とも珍妙な状況だけど…。
「ただいまー」
「あー、疲れたー」
玄関からみんなの声が聞こえてきた。
「お帰りー、お疲れ様!」
僕はバタバタと玄関まで走って行き、みんなを出迎えた。
「おう、由紀也。ちゃんと前田さんの稽古について行けたか?」
「と、思うけど?」
「何だ、頼りない奴だな。せっかく「帰ってきて早々なんですか?由紀也、留守番ありがとね」
親父の小言を母さんが遮ってくれた。ナイス、母さん!
リビングで荷物を広げ、母さんや団員の皆が洗濯物とかいろいろと選別している横で、姉さんが僕を部屋の隅に呼ぶ。
「何?」
「明日ね、佐藤君のカーディガンを取りに行くつもりなんだけど、佐藤君にいつ来れるか聞いてくれる?」
「良いけど…。佐藤君部活してるから、日曜日しか来れないんじゃないかな」
「そっか」
「…姉さん、佐藤と連絡先交換してないのか?」
「してないよ。だって、それどこじゃなかったし…」
「じゃあ佐藤に、明日姉さんに教えても良いか聞いておくね」
「…え」
姉さんはちょっと動揺気味だ。
「いや、でも…引かれないかな…」
「大丈夫だよ、心配性だなー。クリーニングの事で直接話した方が良いんじゃないとか適当に言っておくから。それと、無理強いはしないから安心しろよ」
「う、うん。分かった…。じゃあお願いする」
「うん。大船に乗った気で、安心して」
姉さんを安心させようと笑顔を見せたのに、なぜか小首を傾げながら僕の事をじっと見てきた。
「由紀也…、何かいいことあった?」
「え?」
何?
姉さんってエスパー?
それとも僕、そんなに顔に出てた?
「図星って顔してる」
「や、え? まいったな…」
「何、何?」
「ん、えと、彼女が出来た」
「ええっ!? 凄い、凄いじゃない由紀也!」
姉さんの大きな声に母さんたちがこっちを見た。
「あ、何でもないから」
僕は慌ててしまったが、みんなは然程気にも留めていなかったようで、「そ?」と言って、僕らに背を向けた。
「でも変なの」
「何が?」
「だって、女装してるのに彼女が出来るっておかしくない?」
「確かに」
僕は自分の顔に笑みが浮かぶのを感じて、くすっと笑った。そんな僕を姉さんは、楽しそうに見つめている。
佐藤、姉さんの事好きになってくれないかなあ。
僕は家で会った佐藤の顔を思い出してみる。
あの時、姉さんの顔を見て確かに少し赤くなっていた。あれって絶対脈ありだと思うんだけど…。
実際のところは、どうなんだろう…?
稽古はもとより、とうとう梓の彼氏になれたんだ!
もう、嬉しすぎて頬は緩みっぱなしだ。
昨日、梓を送ってから家に戻った僕は、すぐに梓に電話を入れた。帰宅を知らせ、お休みの挨拶をするために。
そして明日からはまた、普通に学校が始まる。
学校では佐藤の彼女で、プライベートでは梓の彼氏という何とも珍妙な状況だけど…。
「ただいまー」
「あー、疲れたー」
玄関からみんなの声が聞こえてきた。
「お帰りー、お疲れ様!」
僕はバタバタと玄関まで走って行き、みんなを出迎えた。
「おう、由紀也。ちゃんと前田さんの稽古について行けたか?」
「と、思うけど?」
「何だ、頼りない奴だな。せっかく「帰ってきて早々なんですか?由紀也、留守番ありがとね」
親父の小言を母さんが遮ってくれた。ナイス、母さん!
リビングで荷物を広げ、母さんや団員の皆が洗濯物とかいろいろと選別している横で、姉さんが僕を部屋の隅に呼ぶ。
「何?」
「明日ね、佐藤君のカーディガンを取りに行くつもりなんだけど、佐藤君にいつ来れるか聞いてくれる?」
「良いけど…。佐藤君部活してるから、日曜日しか来れないんじゃないかな」
「そっか」
「…姉さん、佐藤と連絡先交換してないのか?」
「してないよ。だって、それどこじゃなかったし…」
「じゃあ佐藤に、明日姉さんに教えても良いか聞いておくね」
「…え」
姉さんはちょっと動揺気味だ。
「いや、でも…引かれないかな…」
「大丈夫だよ、心配性だなー。クリーニングの事で直接話した方が良いんじゃないとか適当に言っておくから。それと、無理強いはしないから安心しろよ」
「う、うん。分かった…。じゃあお願いする」
「うん。大船に乗った気で、安心して」
姉さんを安心させようと笑顔を見せたのに、なぜか小首を傾げながら僕の事をじっと見てきた。
「由紀也…、何かいいことあった?」
「え?」
何?
姉さんってエスパー?
それとも僕、そんなに顔に出てた?
「図星って顔してる」
「や、え? まいったな…」
「何、何?」
「ん、えと、彼女が出来た」
「ええっ!? 凄い、凄いじゃない由紀也!」
姉さんの大きな声に母さんたちがこっちを見た。
「あ、何でもないから」
僕は慌ててしまったが、みんなは然程気にも留めていなかったようで、「そ?」と言って、僕らに背を向けた。
「でも変なの」
「何が?」
「だって、女装してるのに彼女が出来るっておかしくない?」
「確かに」
僕は自分の顔に笑みが浮かぶのを感じて、くすっと笑った。そんな僕を姉さんは、楽しそうに見つめている。
佐藤、姉さんの事好きになってくれないかなあ。
僕は家で会った佐藤の顔を思い出してみる。
あの時、姉さんの顔を見て確かに少し赤くなっていた。あれって絶対脈ありだと思うんだけど…。
実際のところは、どうなんだろう…?
0
あなたにおすすめの小説
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる