74 / 106
第五章
訪問者、2人+2人 (1)
しおりを挟む
そして日曜日。
中間試験が後10日もするとやって来るので、僕は午前中は試験に向けて勉強していた。
梓達の話しによると、やっぱり間近に遊びに行くのはヤバいだろうと、遊園地行きも一週間延期になったらしい。
で、今。
お昼ご飯を食べ終わって、僕は姉さんとまったりタイム。
「由紀也もケーキ食べるでしょ?」
「うん! ラズベリー系かオレンジ系でよろしく」
「分かった。彼女はどんなのが好きか知ってる?」
「梓? レアチーズとか…あ、ベリー系も好きみたい」
「そっか。じゃあ参考に買ってくるわ。みんな3時に来るって言ってたよね?」
「うん。僕が3時に休憩に入るって言ったから、それに合わせて3時前には来るって事になった」
「じゃあ、これから行ってくる。あとでね由紀也」
「うん。行ってらっしゃい」
「由紀也、そうじゃないっ!」
今、僕は立稽古に入っている。
僕の役は「お紗代」という大店の一人娘で、その店の奉公人と恋に落ちるという設定だ。お紗代の父親は、仲の良い別の大店の二男を婿養子にと考えているので、紗代の恋は前途多難だ。
そして今僕が怒られているのは、恋仲の奉公人の後姿を切なく見つめているというシーンだった。
「もう少し感情を込めろ。お前せっかく好きな人が出来たんだろ? その彼女と思うようにいかず、後姿を眺めるしかなかったという思いで演じてみろ」
親父のその言葉に、母さんや若手の団員が僕の方を見る。
母さんなんか、「あらまあ」といった感じで、心なしか頬が緩んでいるように見える。
なんてデリカシーのカケラも無い奴なんだ!
覚えてろよ~(返り討ちにされるのがオチだけどっ)
「ほら、分かったらもう一度、そっからやってみろ」
僕はフーッと息を吐き、立ち位置に戻った。
さんざん怒鳴られたまに褒められ、やっと3時の休憩に入った僕は、居間へと足を向けている。
廊下を歩いていると姉さんの声が聞こえてきた。
「由紀也もそろそろ休憩に入ると思うので、ちょっと待っててくださいね」
ああ、もう来てるんだな。
僕はひょこっと顔を覗かせて、「いらっしゃい」と声をかけた。
中間試験が後10日もするとやって来るので、僕は午前中は試験に向けて勉強していた。
梓達の話しによると、やっぱり間近に遊びに行くのはヤバいだろうと、遊園地行きも一週間延期になったらしい。
で、今。
お昼ご飯を食べ終わって、僕は姉さんとまったりタイム。
「由紀也もケーキ食べるでしょ?」
「うん! ラズベリー系かオレンジ系でよろしく」
「分かった。彼女はどんなのが好きか知ってる?」
「梓? レアチーズとか…あ、ベリー系も好きみたい」
「そっか。じゃあ参考に買ってくるわ。みんな3時に来るって言ってたよね?」
「うん。僕が3時に休憩に入るって言ったから、それに合わせて3時前には来るって事になった」
「じゃあ、これから行ってくる。あとでね由紀也」
「うん。行ってらっしゃい」
「由紀也、そうじゃないっ!」
今、僕は立稽古に入っている。
僕の役は「お紗代」という大店の一人娘で、その店の奉公人と恋に落ちるという設定だ。お紗代の父親は、仲の良い別の大店の二男を婿養子にと考えているので、紗代の恋は前途多難だ。
そして今僕が怒られているのは、恋仲の奉公人の後姿を切なく見つめているというシーンだった。
「もう少し感情を込めろ。お前せっかく好きな人が出来たんだろ? その彼女と思うようにいかず、後姿を眺めるしかなかったという思いで演じてみろ」
親父のその言葉に、母さんや若手の団員が僕の方を見る。
母さんなんか、「あらまあ」といった感じで、心なしか頬が緩んでいるように見える。
なんてデリカシーのカケラも無い奴なんだ!
覚えてろよ~(返り討ちにされるのがオチだけどっ)
「ほら、分かったらもう一度、そっからやってみろ」
僕はフーッと息を吐き、立ち位置に戻った。
さんざん怒鳴られたまに褒められ、やっと3時の休憩に入った僕は、居間へと足を向けている。
廊下を歩いていると姉さんの声が聞こえてきた。
「由紀也もそろそろ休憩に入ると思うので、ちょっと待っててくださいね」
ああ、もう来てるんだな。
僕はひょこっと顔を覗かせて、「いらっしゃい」と声をかけた。
0
あなたにおすすめの小説
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる