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第二章

吉田さんには嫌われている

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「はい、では今日はこれまで。当番の人はボールを片付けてくださいね」
 はあっ、やっと終わった。

「楓、いこう」
「あっ、うん」

 授業が終わると同時に、佳奈が一直線に私のもとにやってきた。
 吉田さん、めっちゃこっち見てるな。

「ねえ楓、日曜日とか暇?」
「今度の?」
「うん。もし予定なかったら、一緒に勉強してくれないかなあと思って」
「いいけど、珍しいね」
「うーん。バレーにかまけてたらさ、お母さんに勉強おろそかにしちゃ駄目だからねって言われちゃったんだよね」
「あの優しいおばさんが?」
「アハハ。優しくはないよ」
「そ……」
「――イライラするんだもん。やる気ない人見てたらさあ」
「分かる。こっちは勝ちたいから頑張ってるのに、ボーッとしてるんだもんね」

 私と佳奈から少し離れたところを、吉田さんたちがおしゃべりしながら歩いている。
 私に聞こえるように話しているんだろう。きっとあれは私のことだ。その証拠になにやら笑った後、体育館へとまるでからかい終えて逃げるように走っていった。

「……嫌な感じだな。吉田さん悪い子じゃないんだけど、バレーに命かけてる感じあるからなあ」
「……そうだね」
「あとでそれとなく言っとく」
「いいよ、そんなの。同じ部活でしょ? 佳奈まで悪く思われること無いから。それに、一生懸命やってる人が私の態度見てイライラするの、なんとなく分かるもん」
「楓……」
「で? 日曜日は、何時に来る?」
「あっ、うん……。二時ごろに来ようかな。大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「ああ、よかった。楓が付き合ってくれるんならなんとかなるわ」
「大げさだなあ」
「だって……知ってるでしょ? 私の勉強嫌い」
「眠くなるんだったっけ?」
「そう。とても一人で勉強なんてできないよ」
「なんでもそつなくこなせそうなのにね」
「そんなふうに見える?」
「見える、見える。人は見かけによらないってことだよね」
 
 ニヤリと笑って言ってやると、佳奈は苦笑した。
 体育館から既に着替えを済ませた子たちが何人か出てきたので、私たちも急いで着替えを済ませ、教室へと戻った。
  
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