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捕食する瞳
迷惑な大石君
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正直、今まで大石君の事は綺麗でカッコイイけど自分には係わりの無い人だと思っていた。
……ていうか、正直係り合いたくない……。
あの日から、なんだか大石君に変に目を付けられてしまったような気がして困る。彼に悪気はないのかもしれないけれど、時々沙良に睨まれているように思うのはきっと気のせいなんかじゃない。
「おはよう、いづみ」
今日も教室のドアを開けて真っ直ぐあたしの机の前まで来た彼は、優しげに微笑んで挨拶をした。
女子の視線が一斉に集中する。
もうヤダ!
なんでそう毎日、毎日、あたしの所に一直線で来るかな。きっと沙良が背後から凄い顔で睨んでいるに違いないのに。
だけどこの男が、あたしが挨拶を返すまで絶対に退こうとしないという事は、連日の挨拶攻撃で学習済みだったりする。
「……おはよう」
しぶしぶといった感じで返事をした。迷惑だという事を、大石君にも周りの女子にもちゃんと分かって欲しい。
だけどそんなあたしに動じる事も無く、彼は綺麗な二重で切れ長の瞳を嬉しそうに細めてにっこり笑い、満足したかのように自分の席へと歩いていった。
「気に入られちゃったね」
ご愁傷様とでも言いたげに、真奈美が声をかけてくる。
「だね~」
千夏ちゃんまで同意する。
「困るんだけど……」
あたしはハアッとため息を吐いて、こっそりと大石君を窺う。すると既にそこには沙良と由美が陣取っていて、異様な雰囲気があった。
だけど多分大石君は何も気にしてなんかいない。けだるそうに腰かけて、どこか冷めた笑顔で見ているだけだ。
「いづみ、呼んでるよ!」
真奈美に大声で呼ばれてびっくりした。振り返ると高坂さんが立っていた。
「いづみ! ほんっとーに申し訳ないんだけど、今日の図書当番変わって欲しいんだけど!」
「え?」
図書当番? あたし、図書委員じゃないんだけど。
「ちょっとー、いくらいづみが人が良いからって、関係ないいづみに頼むのはいくらなんでも無いんじゃないの?」
いつも、のほほんとしておっとりしている千夏ちゃんが珍しくあたしの代わりに抗議してくれている。ビックリとともにぽかんとして千夏ちゃんを見ていたら、高坂さんが慌てて言い訳をした。
「ゴメン。そうなんだけどさ、委員の子に頼みに行ったら用事があるから無理だって断られちゃったんだよ」
お願い! と、両手を顔の前で合わせて上目使いであたしを見る高坂さん。
ああ、もうこれはあたしには断れないか。
「良いよ。別に部活とかしてるわけじゃないから。去年やってたから問題ないし」
「ありがとう! ありがと、いづみ。じゃあ、今日の放課後お願いね」
「うん。分かった」
高坂さんが席に戻って行くと、真奈美と千夏ちゃんが呆れたような目であたしを見ていた。
「いや、まあ図書館嫌いじゃないし……。でも、ありがとね。千夏ちゃん」
千夏ちゃんの肩をポンポンと叩きながらお礼を言うと、照れたように、「別にいいし」と口をとがらす。子供っぽいその表情が可愛らしくて笑ったら、頭をぽかりと叩かれた。
……ていうか、正直係り合いたくない……。
あの日から、なんだか大石君に変に目を付けられてしまったような気がして困る。彼に悪気はないのかもしれないけれど、時々沙良に睨まれているように思うのはきっと気のせいなんかじゃない。
「おはよう、いづみ」
今日も教室のドアを開けて真っ直ぐあたしの机の前まで来た彼は、優しげに微笑んで挨拶をした。
女子の視線が一斉に集中する。
もうヤダ!
なんでそう毎日、毎日、あたしの所に一直線で来るかな。きっと沙良が背後から凄い顔で睨んでいるに違いないのに。
だけどこの男が、あたしが挨拶を返すまで絶対に退こうとしないという事は、連日の挨拶攻撃で学習済みだったりする。
「……おはよう」
しぶしぶといった感じで返事をした。迷惑だという事を、大石君にも周りの女子にもちゃんと分かって欲しい。
だけどそんなあたしに動じる事も無く、彼は綺麗な二重で切れ長の瞳を嬉しそうに細めてにっこり笑い、満足したかのように自分の席へと歩いていった。
「気に入られちゃったね」
ご愁傷様とでも言いたげに、真奈美が声をかけてくる。
「だね~」
千夏ちゃんまで同意する。
「困るんだけど……」
あたしはハアッとため息を吐いて、こっそりと大石君を窺う。すると既にそこには沙良と由美が陣取っていて、異様な雰囲気があった。
だけど多分大石君は何も気にしてなんかいない。けだるそうに腰かけて、どこか冷めた笑顔で見ているだけだ。
「いづみ、呼んでるよ!」
真奈美に大声で呼ばれてびっくりした。振り返ると高坂さんが立っていた。
「いづみ! ほんっとーに申し訳ないんだけど、今日の図書当番変わって欲しいんだけど!」
「え?」
図書当番? あたし、図書委員じゃないんだけど。
「ちょっとー、いくらいづみが人が良いからって、関係ないいづみに頼むのはいくらなんでも無いんじゃないの?」
いつも、のほほんとしておっとりしている千夏ちゃんが珍しくあたしの代わりに抗議してくれている。ビックリとともにぽかんとして千夏ちゃんを見ていたら、高坂さんが慌てて言い訳をした。
「ゴメン。そうなんだけどさ、委員の子に頼みに行ったら用事があるから無理だって断られちゃったんだよ」
お願い! と、両手を顔の前で合わせて上目使いであたしを見る高坂さん。
ああ、もうこれはあたしには断れないか。
「良いよ。別に部活とかしてるわけじゃないから。去年やってたから問題ないし」
「ありがとう! ありがと、いづみ。じゃあ、今日の放課後お願いね」
「うん。分かった」
高坂さんが席に戻って行くと、真奈美と千夏ちゃんが呆れたような目であたしを見ていた。
「いや、まあ図書館嫌いじゃないし……。でも、ありがとね。千夏ちゃん」
千夏ちゃんの肩をポンポンと叩きながらお礼を言うと、照れたように、「別にいいし」と口をとがらす。子供っぽいその表情が可愛らしくて笑ったら、頭をぽかりと叩かれた。
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