21 / 21
それから(番外編的な?)
しおりを挟む
帰りはいつもデートがてら一緒に帰るのだけど、朝はやはり余裕がないから学校近くで待ち合わせをすることにした。
朝から翔君と待ち合わせることが出来ることが、私は嬉しくて嬉しくてしょうがない。
だからちょっと早く来過ぎてしまった。
「あれー、しのちゃん。なに? 結城と待ち合わせ?」
「あ、元木さん。おはようございます」
相変わらず元木さんの周りには女子が群がっている。キレイ系の人から可愛い系の人まで。
モテてるなー、相変わらず。
「そうだ、しのちゃん、しのちゃんも見てよ。これ、可愛いだろー?」
そう言ってズイッと差し出された画面には、かわいらしい表情で愛くるしく動き回る子犬の姿だった。
「うわぁ、ほんと。可愛いですねー。あっ!」
「うわっ!」
あまりの可愛さに見入ってしまった私は、思わず声を上げた。その横で元木さんも、声を上げている。
子犬が大きなボールに前足をかけてよちよち進んでいたのだが、バランスを崩したのか足が滑りコロンとひっくり返ってしまったのだ。
「く~、可愛すぎる。たまんねーな」
「ホント、ホント! ……あ」
感情移入しすぎちゃった。横からすごい嫉妬にまみれた視線がグサグサ突き刺さる。
いや、本命は翔君ですからね。てか、元木さんはただの犬友達ですから。
のめりこむように見ていた画面から、姿勢を正して少し離れた。
「……それにしても元木さん、動画なんて見てました?」
「いや? 見てなかった。俺は実物を見に行ったり、たまにふれあいコーナーみたいなところで触ったり抱っこしたりするのが好きだったから、動画とかは見ようとも思ってなかったんだよな。でもさ、真美に薦められて見てからは、コメント書いてみんなと気持ちが共有できる楽しさを味わっちゃったら、やっぱこうやって見ちゃうんだよなー。な?」
そう言って、元木さんは後ろを振り返った。視線の先では、その真美とかいう人がちょっぴり得意げな顔をしている。
あ、そっか。翔君のおかげなのかな?
あんなに知られたがらなかった犬好きを、カミングアウトしたんだね。
「香子!!」
聞き覚えのありすぎる声が背後から聞こえた。翔君の声だ。
「翔君、おは……!?」
ちょっぴり怒った顔をした翔君が、私をグイッと引き寄せる。
「お前、なんだよ? 朝っぱらから他の男となんて一緒にいやがって」
「え?」
男? おと……、ああ、元木さんの事?
「なんだお前、しのちゃん絶賛束縛中ってか? べたぼれかよ」
「悪いかよ」
そう言いながら、キュッと翔君が私を抱きしめる。
悪くない、悪くないよ翔君!!
てか、もっと溺れちゃって私だけを見てくれると嬉しいよ。
私はその気持ちをちょっと知ってほしくて、私からも腕を回して翔君をギュッとした。
「香子……。ああ、やばい。変なスイッチ入りそう」
入ってもいいよぉ。
もう、翔君大好き!
パコン!
「……って!」
翔君の頭が突然叩かれたので、二人してムッとして顔を上げる。
私たちの視線の先には、かなーり呆れ顔の元木さん。
「お前らな、ここは公道だ。少しは慎みというものを知れ」
「……あ」
「…………」
「じゃあな、遅刻は嫌だから、先行くぞ。真美、広菜、裕理、千陽、行こう」
元木さんに説教されちゃったよ。
でも、うん。こんなとこでイチャイチャしていたら迷惑だよね。
チラッと翔君を窺うと苦笑いを零している。
だけど、
「んっ」
少し頬を染めながら、翔君が右手を差し出した。その手を左手で取って並んで歩く。
なんだか初々しいカップルみたいだ。
しばらく無言で歩いた後、翔君がポツリと呟いた。
「……らしくないと思うかもしんないし、自分のこと棚に上げてって思われるかもしれないけどさ……」
「うん?」
「……香子には、他の男とあんま楽しそうにしてほしくない。……鬱陶しいかもしれないけど」
「そんなことないよ! ヤキモチ……でしょ? それはちょっと嬉しい……かな?」
「……あ~、ヤッベ!」
「え?」
空いている方の手で頭をガシガシした翔君は、周りをささっと見て通りの陰になるところに私を引っ張った。
そして私の体をちょっぴり引き寄せて、ちょんと素早く私の唇に唇を触れ合わせた。
……え?
ええっ!?
い、今のって……、今のって!!
真っ赤になって目を白黒させる私の手を、翔君がギュッと握って引っ張った。
「……急ごう、遅刻する」
「……翔……く、ん」
私をぐいぐい引っ張る翔君の耳は赤い。
赤いし、握る掌にも緊張からなのか何なのか汗までにじみ出ている。
ずっと特定の子なんていなくていいって、そんなスタンスでどこかひょうひょうとしていた翔君。
それなのに……。
それなのに今は私を独占したがって、耳まで真っ赤にして緊張までしてくれて……。
心臓がキュウッてなって、甘酸っぱいドキドキ感が広がる。
「……好き」
「――!! ……分かってる!」
そう叫んだ翔君は、すでに首まで真っ赤になっていた。
おしまいですー
朝から翔君と待ち合わせることが出来ることが、私は嬉しくて嬉しくてしょうがない。
だからちょっと早く来過ぎてしまった。
「あれー、しのちゃん。なに? 結城と待ち合わせ?」
「あ、元木さん。おはようございます」
相変わらず元木さんの周りには女子が群がっている。キレイ系の人から可愛い系の人まで。
モテてるなー、相変わらず。
「そうだ、しのちゃん、しのちゃんも見てよ。これ、可愛いだろー?」
そう言ってズイッと差し出された画面には、かわいらしい表情で愛くるしく動き回る子犬の姿だった。
「うわぁ、ほんと。可愛いですねー。あっ!」
「うわっ!」
あまりの可愛さに見入ってしまった私は、思わず声を上げた。その横で元木さんも、声を上げている。
子犬が大きなボールに前足をかけてよちよち進んでいたのだが、バランスを崩したのか足が滑りコロンとひっくり返ってしまったのだ。
「く~、可愛すぎる。たまんねーな」
「ホント、ホント! ……あ」
感情移入しすぎちゃった。横からすごい嫉妬にまみれた視線がグサグサ突き刺さる。
いや、本命は翔君ですからね。てか、元木さんはただの犬友達ですから。
のめりこむように見ていた画面から、姿勢を正して少し離れた。
「……それにしても元木さん、動画なんて見てました?」
「いや? 見てなかった。俺は実物を見に行ったり、たまにふれあいコーナーみたいなところで触ったり抱っこしたりするのが好きだったから、動画とかは見ようとも思ってなかったんだよな。でもさ、真美に薦められて見てからは、コメント書いてみんなと気持ちが共有できる楽しさを味わっちゃったら、やっぱこうやって見ちゃうんだよなー。な?」
そう言って、元木さんは後ろを振り返った。視線の先では、その真美とかいう人がちょっぴり得意げな顔をしている。
あ、そっか。翔君のおかげなのかな?
あんなに知られたがらなかった犬好きを、カミングアウトしたんだね。
「香子!!」
聞き覚えのありすぎる声が背後から聞こえた。翔君の声だ。
「翔君、おは……!?」
ちょっぴり怒った顔をした翔君が、私をグイッと引き寄せる。
「お前、なんだよ? 朝っぱらから他の男となんて一緒にいやがって」
「え?」
男? おと……、ああ、元木さんの事?
「なんだお前、しのちゃん絶賛束縛中ってか? べたぼれかよ」
「悪いかよ」
そう言いながら、キュッと翔君が私を抱きしめる。
悪くない、悪くないよ翔君!!
てか、もっと溺れちゃって私だけを見てくれると嬉しいよ。
私はその気持ちをちょっと知ってほしくて、私からも腕を回して翔君をギュッとした。
「香子……。ああ、やばい。変なスイッチ入りそう」
入ってもいいよぉ。
もう、翔君大好き!
パコン!
「……って!」
翔君の頭が突然叩かれたので、二人してムッとして顔を上げる。
私たちの視線の先には、かなーり呆れ顔の元木さん。
「お前らな、ここは公道だ。少しは慎みというものを知れ」
「……あ」
「…………」
「じゃあな、遅刻は嫌だから、先行くぞ。真美、広菜、裕理、千陽、行こう」
元木さんに説教されちゃったよ。
でも、うん。こんなとこでイチャイチャしていたら迷惑だよね。
チラッと翔君を窺うと苦笑いを零している。
だけど、
「んっ」
少し頬を染めながら、翔君が右手を差し出した。その手を左手で取って並んで歩く。
なんだか初々しいカップルみたいだ。
しばらく無言で歩いた後、翔君がポツリと呟いた。
「……らしくないと思うかもしんないし、自分のこと棚に上げてって思われるかもしれないけどさ……」
「うん?」
「……香子には、他の男とあんま楽しそうにしてほしくない。……鬱陶しいかもしれないけど」
「そんなことないよ! ヤキモチ……でしょ? それはちょっと嬉しい……かな?」
「……あ~、ヤッベ!」
「え?」
空いている方の手で頭をガシガシした翔君は、周りをささっと見て通りの陰になるところに私を引っ張った。
そして私の体をちょっぴり引き寄せて、ちょんと素早く私の唇に唇を触れ合わせた。
……え?
ええっ!?
い、今のって……、今のって!!
真っ赤になって目を白黒させる私の手を、翔君がギュッと握って引っ張った。
「……急ごう、遅刻する」
「……翔……く、ん」
私をぐいぐい引っ張る翔君の耳は赤い。
赤いし、握る掌にも緊張からなのか何なのか汗までにじみ出ている。
ずっと特定の子なんていなくていいって、そんなスタンスでどこかひょうひょうとしていた翔君。
それなのに……。
それなのに今は私を独占したがって、耳まで真っ赤にして緊張までしてくれて……。
心臓がキュウッてなって、甘酸っぱいドキドキ感が広がる。
「……好き」
「――!! ……分かってる!」
そう叫んだ翔君は、すでに首まで真っ赤になっていた。
おしまいですー
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
21
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
おおっ、面白かった!王道ラブコメ。
予定調和だけど、それだけに安心感があってあっという間に読めました〜。翔の激変ぶりがヤバい(笑)。
アハハ、単純なラブコメですよね。
私自身こういうストレスのほぼ無いお話を読みたくなることが多いので、書いてみたんです。
面白かったと言って頂けて嬉しかったです。
感想ありがとうございました。
元木さんイケメン♡♡
一気に元木さんのファンになりました☆*。
ありがとうございますー
元木さんは器が大きくてユニークな人です 笑
とても面白そうです!!!
実は翔くんの方が溺愛しているっていうのを願います(。ー人ー。)♡
感想ありがとうございます!
ご期待通りに進むかは分かりませんが💦
明るい香子を応援してくれると嬉しいです。