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3.ゲーマー系ヒロイン
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「どどど、どういうこと……?」
あまりの衝撃に、素で狼狽える真琴。
思考が高速で回転し、状況把握に全力を注ぐ。だが、回答には至らなかった。
「昨日約束したんだよ。昼飯の時に、コツを教えてくれるってさ」
(──まさか!?)
「だから今日は、土屋《つちや》さんとご飯を食べる。あの人、中々捕まらないからさ」
昨日、ゲーセンで熱狂していた修一の対面を彼女は把握していなかった。
淡白な男をあれだけ熱くさせる対戦相手、よくよく考えれば、可能性はあったのだ。
バッとクラスの最前列に視線を向けると、前を見たままニヤリと笑う美少女《ヒロイン》がいた。
(つ、土屋《つちや》 佳苗《かなえ》……!!)
紫色の髪をした、小柄な少女。
何処となく性格の悪そうな小悪魔的雰囲気を醸し出す彼女は、所謂ゲーマー系ヒロイン。
特性の「男の子との共通の趣味《ダンディズム》」を駆使し、予め伏線を張っていたのだ。
「だからごめん! もし悪いようなら、これ返すよ」
両手を合わせ申し訳なさそうに謝罪をしてくる修一。これには真琴も、弁当を返してとは言えないだろう。
「ううん、大丈夫。余り物だし、どのみち食べてもらわなきゃ捨てちゃうから」
「ありがとう、真琴。それじゃあ──」
お弁当を受け取り、佳苗の元へと駆けていく修一。直ぐに話題はゲームの会話になり、そして二人仲良く楽しそうに教室を出て行った。
「あ~あ、負けちったね」
「アゲハ……あんたが邪魔しなければねぇ!」
「おっとぉ、ウチを言い訳にしないでよ、結末は決まってたでしょ? かなぴょんが一枚上手だったってこと」
「ぐぬぬ……認めない、認めてわよ!」
「完全に作戦負け。かなぴょんが態々昼休みに修一を誘っていた理由、まこっちも分かってるんじゃねーの?」
「──っ、それは……うん、わかってる」
「だったら、潔よーく敗北を認めなさいねーウチは、皆みたいな頭脳戦は無理だから、真っ直ぐ行くだけだけどねぇ。んじゃ、また~」
そう言うと亞華葉は、直ぐにクラスのギャルグループの中へと溶け込んでいった。
相変わらず、能天気な奴だ、と。真琴は思う。
この世界で、主人公と結ばれなかった者の末路を知っているだろうに、と。
「はぁ……爪が甘いのは、私も同じ、か……ん?」
ガクッと肩を落とし、席に戻ろうとすると肩をポンポンと叩かれた。
振り向くと人差し指が頬っぺたに刺さる。
「……古典的」
「手厳しいね」
「そんなくだらない事するようだから、アンタはモブなのよ」
「モブ言うな、俺は名前は最上《もがみ》 博信《ひろのぶ》だ」
「モブじゃん」
「略すな!」
真琴の後ろに立つ、博信と名乗る男。
彼は彼女の言う通り、この世界におけるモブキャラだった。
あまりの衝撃に、素で狼狽える真琴。
思考が高速で回転し、状況把握に全力を注ぐ。だが、回答には至らなかった。
「昨日約束したんだよ。昼飯の時に、コツを教えてくれるってさ」
(──まさか!?)
「だから今日は、土屋《つちや》さんとご飯を食べる。あの人、中々捕まらないからさ」
昨日、ゲーセンで熱狂していた修一の対面を彼女は把握していなかった。
淡白な男をあれだけ熱くさせる対戦相手、よくよく考えれば、可能性はあったのだ。
バッとクラスの最前列に視線を向けると、前を見たままニヤリと笑う美少女《ヒロイン》がいた。
(つ、土屋《つちや》 佳苗《かなえ》……!!)
紫色の髪をした、小柄な少女。
何処となく性格の悪そうな小悪魔的雰囲気を醸し出す彼女は、所謂ゲーマー系ヒロイン。
特性の「男の子との共通の趣味《ダンディズム》」を駆使し、予め伏線を張っていたのだ。
「だからごめん! もし悪いようなら、これ返すよ」
両手を合わせ申し訳なさそうに謝罪をしてくる修一。これには真琴も、弁当を返してとは言えないだろう。
「ううん、大丈夫。余り物だし、どのみち食べてもらわなきゃ捨てちゃうから」
「ありがとう、真琴。それじゃあ──」
お弁当を受け取り、佳苗の元へと駆けていく修一。直ぐに話題はゲームの会話になり、そして二人仲良く楽しそうに教室を出て行った。
「あ~あ、負けちったね」
「アゲハ……あんたが邪魔しなければねぇ!」
「おっとぉ、ウチを言い訳にしないでよ、結末は決まってたでしょ? かなぴょんが一枚上手だったってこと」
「ぐぬぬ……認めない、認めてわよ!」
「完全に作戦負け。かなぴょんが態々昼休みに修一を誘っていた理由、まこっちも分かってるんじゃねーの?」
「──っ、それは……うん、わかってる」
「だったら、潔よーく敗北を認めなさいねーウチは、皆みたいな頭脳戦は無理だから、真っ直ぐ行くだけだけどねぇ。んじゃ、また~」
そう言うと亞華葉は、直ぐにクラスのギャルグループの中へと溶け込んでいった。
相変わらず、能天気な奴だ、と。真琴は思う。
この世界で、主人公と結ばれなかった者の末路を知っているだろうに、と。
「はぁ……爪が甘いのは、私も同じ、か……ん?」
ガクッと肩を落とし、席に戻ろうとすると肩をポンポンと叩かれた。
振り向くと人差し指が頬っぺたに刺さる。
「……古典的」
「手厳しいね」
「そんなくだらない事するようだから、アンタはモブなのよ」
「モブ言うな、俺は名前は最上《もがみ》 博信《ひろのぶ》だ」
「モブじゃん」
「略すな!」
真琴の後ろに立つ、博信と名乗る男。
彼は彼女の言う通り、この世界におけるモブキャラだった。
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