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愛ちゃんマリアの家庭訪問
30 波乱の家庭訪問②
しおりを挟む三十話 波乱の家庭訪問②
「あ、そうだー。ちょっと前から気になってたんですけどー。」
高槻さんはふらふらと立ち上がり、オレの背中に抱きつき手を回す。
「ちょ!高槻さん!?」
「あの白装束の女の子は誰なんですかー?」
オレの肩に顔を乗せながらキッチンを指差す。
「え?」
背中に当たる胸の感触に心奪われながらも高槻さんの指差す先を目で追う。
……嘘だろ?
『妾が見えるのか?』
御白が自分を指差しながら高槻さんを見ている。
「あなた幽霊さんですよねー。私、それとなーく視えるんですよー。」
高槻さんはニコニコしながら御白に笑いかける。
「あの、怖くないんですか?」
「あー、危険なのってそういうオーラ出てるじゃないですかー。そういうときは視えないフリしてるんですー。」
…器用な人だな。
「…で、あなたはどちら様なんですかー?」
『妾は御白。御白神社の神じゃ。』
自分が視えて嬉しいのか御白は笑顔で胸を張って答える。
「御白神社って……あの恋愛成就で有名な隣町の神社ですよねー?」
高槻さんが前のめりになりながら尋ねる。
それによって胸が強くオレの背中に押し付けられる。
ー…ナイス感触!
『そうとも言われておるようじゃな。』
そうだったんだ。
「私、高校生の時に親友に教えてもらってから気になってたんですよ。今度お参りに行きますねー。」
『うむ!待っておるぞ。』
御白の言葉の返しからして、あまり高槻さんへの興味はなさそうだ。
しかし自分のことを知ってくれていて嬉しかったのだろう…御白はかなり上機嫌で二階へ消えていく。
さしずめオレの部屋で漫画だろうな。
最近御白は時間があるとオレの部屋で漫画を読んでいる。
なかでも御白の今のお気に入りは異世界転生系の漫画だ。
御白曰く異世界は本当にあるらしく、たまに酷似しているところを見つけるのが楽しいんだとか。
オレは鍋の中の様子を確かめるために立ち上がろうとする。
「んーーー。」
高槻さんがオレの肩にもたれかかっていて立ち上がれない。
「舞せんせー、大丈夫ー?」
「先生、起きる。」
愛ちゃんとマリアが高槻さんの体を揺する。
「もうちょっとこのままー。」
酒に酔った人でたまにこう目が開けにくくなる人いるよな。
前に父さんの同僚の人たちが家で飲んでた時に立つのがしんどそうな人がいた。
「私カレー見てくるね。」
「マリアも。」
二人が鍋のチェックをする。
「もうちょっとみたい。」
愛ちゃんがオレに報告する。
「ありがと。じゃあお風呂入れといてもらえる?」
「はーい。」
「愛、その後マリアの部屋で少しゲームしよう。」
「うん!」
…………え?
二人は仲良くリビングから出て行く。
このリビングにはオレと高槻さんだけになってしまった。
「あのー…高槻さん?」
「んーーー?」
「そろそろ起きた方がー。」
オレは高槻さんの拘束から逃れるため、腕をそっと掴んでゆっくり解いていく。
「んーー!」
重心がずれたことにより高槻さんのバランスが崩れる。
「ちょちょちょっと!」
急いで支えようとするも腕に高槻さんの胸が当たり、躊躇して支えきれなかったオレは高槻さんの下になるように椅子から落ちて倒れこむ。
「あいたたた…。あの、大丈夫ですか、高槻さ……。」
高槻さんが無事か確かめようと顔を上に向けようとすると目の前に高槻さんの顔があったので途中で止める。
このまま真上向いたら唇が当たってしまう。
というかこの状況………。
仰向けのオレに対して高槻さんはうつ伏せで覆い被さるように倒れているので少し体を動かすたびに胸の感触が直に伝わってくる。
足に力を入れようにも、股のところに高槻さんの太ももが入り込んでいるので下手に動かすことができない。
「あ、あのー…高槻さん。」
「んーー?」
「起きてほしいかなって…。」
オレも少し痺れを切らして腕で高槻さんの両脇を持って持ち上げる。
「んー…あれ、私何して…。」
意識が少し戻ったのかゆっくりと朧げな目を開ける。
「あーよかった、あの、どいてもらえないですかね。」
オレは安心して高槻さんに声をかける。
「………これは夢?」
「いえ、現実です。」
オレは夢のような感覚を体験させてもらったけどな。
高槻さんはパシンと自分の頬を叩く。
よし、これで解放される。
「………痛くない。」
高槻さんはぼーっとした顔のまま虚ろな目でオレを見る。
「……え?」
「痛くないってことは……夢…だよね。」
「いえいえいえいえ!超現実です!」
「こんな現実味のある夢初めてー。」
高槻さんはオレのツッコミを無視し、妖艶な笑みを浮かべながらオレを強く抱きしめる。
「ん!?え!」
これは一体どういうこと!?
「私高校の時はひどい失恋しちゃって、大学も女子校だったからこうして男の人とイチャイチャするの夢だったのよねー…。」
高槻さんはオレに抱きつきながら自分の顔や胸、股間をオレに擦り付ける。
もうスカートなんか完全にめくれ上がっていて、セクシーな下着が丸出しだ。
「た…たたた高槻さん!?」
オレの心臓がこれ以上は爆発するんじゃないかというくらい鼓動が強くなる。
しかしオレも男だ。
これをされて嬉しくないはずがない。
擦り付けに満足したのか、高槻さんはオレの上にまたがり、スーツの上着を脱ぎ捨ててシャツを下からめくり上げる。
………待て待て待て、これはもしかして…。
半分までめくり上げると一度胸のところでつっかえるも、そこを乗り越えるとこれまたセクシーなブラをつけた豊満な乳がボロンと溢れ出る。
「…おぉ。」
オレはその光景をただただ眺める。
……もうなるようになってもいい、そう思った時だった。
勢いよく階段を駆け下りてくる音が、振動とともにオレに伝わってくる。
おいおいゲームしに行くんじゃなかったのかよ!
その瞬間、オレの脳と体が覚醒する。
この状況を二人に見せるわけにはいかない!!
オレは力づくで高槻さんを押し倒して脱ぎ捨てられたスーツを上半身にかけ、めくれたままのスカートを勢いよく引っ張り元に戻す。
「あーん、なんでー?」
甘えた声を出す高槻さんをフル無視し、そのままオレは華麗にローリングしながらキッチンの前に移動。
そこでちょうどリビングの扉が開かれた。
「お兄ちゃーん、そろそろ出来たー?」
愛ちゃんがマリアと手を繋いでリビングに入ってくる。
「う、うん。今できたから用意するね。」
「はーい。」
オレは小さく深呼吸してカレー皿にご飯を盛る。
「んあー…あれ、愛ちゃんにマリアちゃん……?」
ぼーっとした目で二人を眺める。
「うん。舞せんせー、寝てたの?大丈夫?」
「寝たまま服脱ぐのは、先生寝相わるい。」
二人はテーブルの下で服がはだけている高槻さんを珍しいものを見るような目で見る。
「…あれ、夢じゃない………?」
独り言のように呟くと、もともと酔っていて赤いのに、さらにに顔を赤らめオレを見る。
「もうこんな時間ですし、一緒に夜ご飯どうですか?」
オレは何もなかった風な芝居をして高槻さんに尋ねる。
「え…えぇ。じゃあお言葉に甘えようかな!」
高槻さんもオレの送ったアイコンタクトを理解したのかかなり動揺しながら身なりを整える。
このまま高槻さんは夕ご飯を食べた後も酒が抜けずに上手く歩くことができずウチに泊まることとなり、翌朝頭痛と戦いながら愛ちゃん達と一緒に学校へと向かった。
玄関を出ていく時に小さく手を振ってくれたのは、かなりキュンとしてしまったよ。
応援ありがとうございます!
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