一冬の糸

倉木 由東

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#2.paris 事件

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 公園内にある池が通報のあった事件現場だった。
 楕円形の形をしているその池は、建築された複数の柱の上部が連結され列をなして並んでいる、いわゆるコロネードに囲まれており、一建造物としての歴史と芸術を感じさせる。
 だがこの日は違った。そのコロネードの柱の一つに、腰あたりの高さでロープを三重に巻かれ、磔のような形にされた人間の死体が発見されたという。
 公園内に入ると、立ち入り禁止を意味する幾多の黄色いビニールテープが既にあちらこちらに張り巡らされていた。すれ違う数人の警官と挨拶を交わしながらモーリスとマルセルは池に向かって歩く。やがて多くの制服警官が密集しているのが確認出来た。一歩一歩近づく。

「やぁ、ご苦労様」
 こちらの存在に気づき、前方から声をかけて来たのはマルセルの上司であり、モーリスと同地位にあたるメグレ警視だった。
「かなり酷いです」
 言いながらメグレは顎で遺体を指した。
 遺体は顔の左半分が皮膚ごと抉られ、その傷口からは薄ら白い骨が見えた。
「確かに酷いですね」
 そう言いながらマルセルがモーリスに目をやった。その表情はひどく驚いた顔をしていた。
「どうしました?お知り合いですか?」
「・・・いや、そうじゃない。あまりにも残酷すぎて驚いているだけだよ。メグレさん、鑑識の結果は出ていますか?」
「あぁ。ちょっと待ってください」
 そう言うとメグレは「おーい」と鑑識の人間を大声で呼んだ。身長180センチ、体重100キロの巨漢から発せられる声は、太く迫力がある。
 周りが木々に囲まれていることもあってか、はたまた深夜の公園だからか、メグレの大声はいつも以上に響き渡っている気がする。
 モーリスはメグレと階級こそ同地位であるが、自分より年下で先に出世したこのエリート男に一目置いており、常に尊敬の念を持って接している。メグレのほうも先に出世しても変に驕るようなことはせず、年上のモーリスに敬意を払っていた。

 やがて鑑識分析官がやってきて鑑識結果の説明がなされた。分析によると死因は顔の損傷ではなく射殺で、至近距離から心臓一発の即死。殺した後で柱に遺体をくくり付け、顔の皮膚を抉っているだろうとのことだった。
 加えて遺留品の中の財布からはジャポン(日本)通貨の金と身分証もあったことがメグレの口から報告された。
「凶器や抉られた皮膚は?」
 マルセルがメグレに尋ねる。
「いや、どちらも見つかっていない」
「目撃者はどちらですか?」
「今はあそこのパトカーの中にいる。遺体発見時のショックが大きくてずっと震えている。地元の大学生で公園をランニング中に遺体を見つけたようだ」
「警視庁には?」
「あぁ、これから一度来てもらって再度取り調べを行う。その後、問題なければ家に帰そうと思う」
 そこでモーリスが会話に入ってきた。
「もし良ければ私に取り調べをやらせていただけませんか?」
「モーリスさんが?・・・ええ、もちろん構いません。こちらからもお願いしたい」
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