28 / 60
#28.okinawa 決断
しおりを挟む
「佐倉さん、40年前の大きな事件ですがいくつかありました。中でも・・・」
「太田、その件なら悪いが解決した。とにかく急ぎで杏奈を探すぞ」
「え?解決って本当ですか?」
「詳しくは後だ。友人関係の線から杏奈の居所を探ってくれ。もしくは杏奈が沖縄を発つ日を調べるんだ」
「え、ええ。わかりました」
「頼んだ」
太田との会話を一方的に終えると、佐倉は深く1度だけ深呼吸をして、目の前の建物のインターフォンを鳴らした。
「はい」中から出てきたのはこの家の家政婦だ。
「沖縄県警の仲間刑事をお願いします」
「え?」
「中にいるのはわかっています。沖縄市の佐倉が来ているとお伝えください」
「しょ、少々お待ちください」
家政婦が慌てて家の中に戻ったと思えば、入れ替わりに目的の人物、沖縄県警の仲間刑事が現れた。
「堂々とやってくるなんて、どういうつもりだ?」
その声には少し怒りの感情が含まれているのを感じる。
「誘拐について進展は?」
「・・・話す程の進捗は無い」
「40年前のことについて知事から何か聞けたか?」
「いや、本人は何のことかわからないとの一点張りだ」
「知事は?」
「公務中に決まっているだろ。今はいない」
「俺を家の中に入れてくれ」
「は?馬鹿かお前は。そんなこと認められるか」
「40年前、知事が何をしたのか俺は知っている」
「何だそれは?」
「知りたければ中に入れてくれ。知事の家族と話したい」
「家族と?」
「あぁ」
仲間が佐倉を凝視する。佐倉もその視線を逸らさない。
「事件に進展が無いんだろう?なら新しい風が必要なんじゃないか?」
「ハッタリを言っているわけではなさそうだな。・・・・・入れ」
佐倉を中に招き入れる。玄関口にはいくつもの靴が並べられている。それだけで多くの捜査関係者がこの家にいるのがわかった。靴箱から絨毯、ニスが奇麗に塗られている床、入口から色々な香りが混じっている。奇麗な家具から醸し出される匂い。警察の匂い。そしてこの家の主の権力欲の匂いも。
本来は広々としたリビングであっただろう。しかし今は数名の警察関係者が集っているせいで、その空間は窮屈に感じ、仲間の後に続く佐倉へは、いくつもの視線が痛いほど集中した。
「彼なら気にしないでくれ。奥さん、ちょっとよろしいですか」
「あ、はい」
仲間に言われ、具志堅功の妻である香苗が反応する。我が家のように家の中を歩く仲間に、佐倉と香苗夫人が続く。通された部屋は知事の書斎だった。応接セットが配置されているが、誰1人そこに座ろうとしなかった。
「奥さん、彼は私の友人で佐倉という男で信用出来る男です。彼が聞きたいことがあるそうですが答えてください。もしかしたらお孫さんを誘拐した事件解決の糸口になるかもしれない」
「この方がですか?」
懐疑的な目で香苗夫人は佐倉を見つめる。無理も無いとは思いつつも、警戒の氷をゆっくりと溶かしながら話している時間は無い。それが相手の為でもある。
「突然の訪問、大変失礼します。私はお孫さんの家庭教師を務めている桐谷杏奈さんについて調査をしているものです」
「調査?同じ警察関係の方ですか?」
香苗に尋ねられた仲間が首を横に振る。
「違います。しかし答えてください」
「桐谷杏奈さんが家庭教師としてこちらに赴任した時期と経緯を教えて下さい」
香苗の疑問などお構いなしに仲間と佐倉が続け、香苗も仕方なしに答える。
「桐谷先生が孫の由里の家庭教師としてこの家にやって来るようになったのは、ちょうど1年前からです。経緯も何も家庭教師派遣のチラシがポストに投函されていましたので、そこでこちらからチラシの番号に電話したのが始まりです。由里もその時は中学2年生。高校受験を考えて依頼しました。ごくごく普通の流れでしょ」
「その時のチラシはまだお持ちですか?」
「そんな1年前のチラシなんてとっくにゴミに出しています」
「電話番号は携帯番号?」
「はい。桐谷先生が個人で家庭教師をしてくれると。それも無料で」
「無料で?」
「はい。週に3日ほど。由里の学校がテスト前になると部活動もお休みでほぼ毎日いらっしゃってくれます」
「家の中以外では特に接点は無い?」
「はい、ありません。あの、先ほどから桐谷先生のことばかりお話しされていますけれど、桐谷先生が何か?誘拐事件と関係あるのでしょうか?」
「無関係ではないと思っています」
次に仲間が佐倉に質問をぶつける。
「では1年前から誘拐の計画を練っていたということか?」
「それはまだわからない。ただパリで起きた殺人事件が引き金になっているのは事実だ」
「やっぱりあの日本人被害者と関係あったのか?」
「殺された日本人と桐谷杏奈は親子だ」
2人のやり取りに香苗が驚きの表情を見せる。
「あなた方、さっきから何を言っているの?パリだの殺人だのって。私たち家族と何の関係があるのよ!」
少し興奮気味な口調になっている。確かに1番の被害者は誘拐された孫の由里であり、何も知らないその家族だ。香苗の表情は怒りのぶつけどころを探しているようにも見える。
「関係あるんだよ。いいか、あんた。あんたのご主人が今回の一連の騒動を引き起こしているんだよ」
たまらず香苗と同じ温度で佐倉も言い返す。
「おい、佐倉」
仲間が冷静を促すが佐倉は止まらない。
「あんた、知事と結婚したのはお互いがいくつの時だ?」
「主人が27で私が28の時よ」
「だったら何も知らなくて当然だろうな。いいか。あんたのご主人は40年前に大きな過ちを犯した。スキャンダルものだ。これが世に公になれば政治家人生にも大きく影響される。誘拐犯が求めているのは、その40年前の真実の公表だ」
「おい、やめろ」
仲間が佐倉のジャケットを握る。香苗を責めることに何も意味は無いことは佐倉もわかっていた。
「3億円事件」
香苗がボソッとつぶやいた。
「あんた知っていたのか?」
「ええ。主人から1度だけ聞いたことがあります」
「3億円事件?何のことだ?」
状況を把握出来ていない仲間に佐倉は説明を始めた。
「3億円事件。40年前に東京都府中市で起きた未解決事件。この人の旦那、つまり具志堅功はその3億円事件の実行犯なんだよ」
「何だと?」
仲間が驚きの表情を見せる。
「具志堅知事だけではない。犯行グループは4人いた。そのうちの1人は桐谷杏奈の祖父だ。その祖父は事件直後に殺されている。おそらく知事を含む他の3人にな。そして杏奈はその3人に復讐しようとしているんだよ」
「桐谷先生が・・・。じゃあ私たち家族に近づいたのは・・・」
「もちろん知事が目当てだ。ただ事を起こすことまでは具体的に考えていなかったはずだ。それが先日、パリで自分の父親が殺されたのが引き金になった」
「ちょっと待て。話が突拍子すぎるぞ」
「突拍子だけど真実なんだよ」
「それでも孫を誘拐するなんてやり過ぎだ」
「いや、杏奈は3億円事件の実行犯に祖父を、そして父を殺された。彼女の目的が復讐ならターゲットの家族から狙うのもわかる」
「そんな、じゃあ由里は・・・」
香苗の声と身体が小刻みに震え始めた。そしてポケットから携帯を取り出す。
「何をしているんです?」
仲間の言葉を無視し、香苗は携帯を操作し続ける。
「もしもし、あなた!」
あなた?電話の相手は具志堅功か。
「あなた!犯人の要求を呑んでください。由里の命がかかっているんです!40年前のことを公表してください!え?・・・はい、はい。え?では由里のことを見殺しにするんですか?知事なんて立場、どうでもいいじゃないですか!・・・ちょっと!」
佐倉が香苗から受話器を奪い取ったが、既に通話は切れていた。
「ご主人は何と?」
「公表も何も私は知らない。犯罪者に屈するつもりはない。と」
香苗が目に涙を浮かべる。仲間も何も言葉が出ないといった感じだ。
「悲しんでいる場合か。お孫さんを助ける方法ははっきりしているはずだ」
佐倉が冷徹に香苗に投げかける。動揺しているものの香苗は涙を流すまいと必死に堪えている。その表情は佐倉の言葉の意味を十分に理解しているようだ。
「はい。夫が反対しようとも、私が10日の新聞広告に40年前のことを掲載します」
「太田、その件なら悪いが解決した。とにかく急ぎで杏奈を探すぞ」
「え?解決って本当ですか?」
「詳しくは後だ。友人関係の線から杏奈の居所を探ってくれ。もしくは杏奈が沖縄を発つ日を調べるんだ」
「え、ええ。わかりました」
「頼んだ」
太田との会話を一方的に終えると、佐倉は深く1度だけ深呼吸をして、目の前の建物のインターフォンを鳴らした。
「はい」中から出てきたのはこの家の家政婦だ。
「沖縄県警の仲間刑事をお願いします」
「え?」
「中にいるのはわかっています。沖縄市の佐倉が来ているとお伝えください」
「しょ、少々お待ちください」
家政婦が慌てて家の中に戻ったと思えば、入れ替わりに目的の人物、沖縄県警の仲間刑事が現れた。
「堂々とやってくるなんて、どういうつもりだ?」
その声には少し怒りの感情が含まれているのを感じる。
「誘拐について進展は?」
「・・・話す程の進捗は無い」
「40年前のことについて知事から何か聞けたか?」
「いや、本人は何のことかわからないとの一点張りだ」
「知事は?」
「公務中に決まっているだろ。今はいない」
「俺を家の中に入れてくれ」
「は?馬鹿かお前は。そんなこと認められるか」
「40年前、知事が何をしたのか俺は知っている」
「何だそれは?」
「知りたければ中に入れてくれ。知事の家族と話したい」
「家族と?」
「あぁ」
仲間が佐倉を凝視する。佐倉もその視線を逸らさない。
「事件に進展が無いんだろう?なら新しい風が必要なんじゃないか?」
「ハッタリを言っているわけではなさそうだな。・・・・・入れ」
佐倉を中に招き入れる。玄関口にはいくつもの靴が並べられている。それだけで多くの捜査関係者がこの家にいるのがわかった。靴箱から絨毯、ニスが奇麗に塗られている床、入口から色々な香りが混じっている。奇麗な家具から醸し出される匂い。警察の匂い。そしてこの家の主の権力欲の匂いも。
本来は広々としたリビングであっただろう。しかし今は数名の警察関係者が集っているせいで、その空間は窮屈に感じ、仲間の後に続く佐倉へは、いくつもの視線が痛いほど集中した。
「彼なら気にしないでくれ。奥さん、ちょっとよろしいですか」
「あ、はい」
仲間に言われ、具志堅功の妻である香苗が反応する。我が家のように家の中を歩く仲間に、佐倉と香苗夫人が続く。通された部屋は知事の書斎だった。応接セットが配置されているが、誰1人そこに座ろうとしなかった。
「奥さん、彼は私の友人で佐倉という男で信用出来る男です。彼が聞きたいことがあるそうですが答えてください。もしかしたらお孫さんを誘拐した事件解決の糸口になるかもしれない」
「この方がですか?」
懐疑的な目で香苗夫人は佐倉を見つめる。無理も無いとは思いつつも、警戒の氷をゆっくりと溶かしながら話している時間は無い。それが相手の為でもある。
「突然の訪問、大変失礼します。私はお孫さんの家庭教師を務めている桐谷杏奈さんについて調査をしているものです」
「調査?同じ警察関係の方ですか?」
香苗に尋ねられた仲間が首を横に振る。
「違います。しかし答えてください」
「桐谷杏奈さんが家庭教師としてこちらに赴任した時期と経緯を教えて下さい」
香苗の疑問などお構いなしに仲間と佐倉が続け、香苗も仕方なしに答える。
「桐谷先生が孫の由里の家庭教師としてこの家にやって来るようになったのは、ちょうど1年前からです。経緯も何も家庭教師派遣のチラシがポストに投函されていましたので、そこでこちらからチラシの番号に電話したのが始まりです。由里もその時は中学2年生。高校受験を考えて依頼しました。ごくごく普通の流れでしょ」
「その時のチラシはまだお持ちですか?」
「そんな1年前のチラシなんてとっくにゴミに出しています」
「電話番号は携帯番号?」
「はい。桐谷先生が個人で家庭教師をしてくれると。それも無料で」
「無料で?」
「はい。週に3日ほど。由里の学校がテスト前になると部活動もお休みでほぼ毎日いらっしゃってくれます」
「家の中以外では特に接点は無い?」
「はい、ありません。あの、先ほどから桐谷先生のことばかりお話しされていますけれど、桐谷先生が何か?誘拐事件と関係あるのでしょうか?」
「無関係ではないと思っています」
次に仲間が佐倉に質問をぶつける。
「では1年前から誘拐の計画を練っていたということか?」
「それはまだわからない。ただパリで起きた殺人事件が引き金になっているのは事実だ」
「やっぱりあの日本人被害者と関係あったのか?」
「殺された日本人と桐谷杏奈は親子だ」
2人のやり取りに香苗が驚きの表情を見せる。
「あなた方、さっきから何を言っているの?パリだの殺人だのって。私たち家族と何の関係があるのよ!」
少し興奮気味な口調になっている。確かに1番の被害者は誘拐された孫の由里であり、何も知らないその家族だ。香苗の表情は怒りのぶつけどころを探しているようにも見える。
「関係あるんだよ。いいか、あんた。あんたのご主人が今回の一連の騒動を引き起こしているんだよ」
たまらず香苗と同じ温度で佐倉も言い返す。
「おい、佐倉」
仲間が冷静を促すが佐倉は止まらない。
「あんた、知事と結婚したのはお互いがいくつの時だ?」
「主人が27で私が28の時よ」
「だったら何も知らなくて当然だろうな。いいか。あんたのご主人は40年前に大きな過ちを犯した。スキャンダルものだ。これが世に公になれば政治家人生にも大きく影響される。誘拐犯が求めているのは、その40年前の真実の公表だ」
「おい、やめろ」
仲間が佐倉のジャケットを握る。香苗を責めることに何も意味は無いことは佐倉もわかっていた。
「3億円事件」
香苗がボソッとつぶやいた。
「あんた知っていたのか?」
「ええ。主人から1度だけ聞いたことがあります」
「3億円事件?何のことだ?」
状況を把握出来ていない仲間に佐倉は説明を始めた。
「3億円事件。40年前に東京都府中市で起きた未解決事件。この人の旦那、つまり具志堅功はその3億円事件の実行犯なんだよ」
「何だと?」
仲間が驚きの表情を見せる。
「具志堅知事だけではない。犯行グループは4人いた。そのうちの1人は桐谷杏奈の祖父だ。その祖父は事件直後に殺されている。おそらく知事を含む他の3人にな。そして杏奈はその3人に復讐しようとしているんだよ」
「桐谷先生が・・・。じゃあ私たち家族に近づいたのは・・・」
「もちろん知事が目当てだ。ただ事を起こすことまでは具体的に考えていなかったはずだ。それが先日、パリで自分の父親が殺されたのが引き金になった」
「ちょっと待て。話が突拍子すぎるぞ」
「突拍子だけど真実なんだよ」
「それでも孫を誘拐するなんてやり過ぎだ」
「いや、杏奈は3億円事件の実行犯に祖父を、そして父を殺された。彼女の目的が復讐ならターゲットの家族から狙うのもわかる」
「そんな、じゃあ由里は・・・」
香苗の声と身体が小刻みに震え始めた。そしてポケットから携帯を取り出す。
「何をしているんです?」
仲間の言葉を無視し、香苗は携帯を操作し続ける。
「もしもし、あなた!」
あなた?電話の相手は具志堅功か。
「あなた!犯人の要求を呑んでください。由里の命がかかっているんです!40年前のことを公表してください!え?・・・はい、はい。え?では由里のことを見殺しにするんですか?知事なんて立場、どうでもいいじゃないですか!・・・ちょっと!」
佐倉が香苗から受話器を奪い取ったが、既に通話は切れていた。
「ご主人は何と?」
「公表も何も私は知らない。犯罪者に屈するつもりはない。と」
香苗が目に涙を浮かべる。仲間も何も言葉が出ないといった感じだ。
「悲しんでいる場合か。お孫さんを助ける方法ははっきりしているはずだ」
佐倉が冷徹に香苗に投げかける。動揺しているものの香苗は涙を流すまいと必死に堪えている。その表情は佐倉の言葉の意味を十分に理解しているようだ。
「はい。夫が反対しようとも、私が10日の新聞広告に40年前のことを掲載します」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
秘書と社長の秘密
廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。
突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。
ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる