「崩壊の街」ボクは不倫に落ちた。

ポンポコポーン

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「ふたつの家」格差。



「ゆい」の部屋にいた。

夕方4時を回っていた。
窓からは冬の空が見えた。
・・・もうすぐ暗くなっていく。


図面を描きながら、ゆい の部屋にいた。
ゆい のいない間の ゆい の部屋。
女の人の部屋に一人でいるって、なんとなくドキドキする。・・・ピグなのに。

ピグの部屋もリアル世界と同じで「模様替え」ができるようになっていた。

ゆい の部屋は、センス良く小綺麗にまとまっていた。

初めて会った時から、ずいぶん物も増えてきていた。
家具。機能的なテーブル。座り心地の良さそうなソファー・・・etc

殺風景な部屋だったのが、引っ越しが完了して生活が始まった。・・・そんな感じだった。

「可愛い」というより「機能美」といった趣だ。
センスよく実用的に。しかし、可愛い小物があって、無機質にならないようにしている。
ゆい の性格なんだろうな。

・・・・そして、家具、小物を揃えるということ。

小物は、家具でも、洋服でも、無料で使えるものと課金されるものがあった。
課金されるといったところで、100円とかの金額だ。

それでも、そこに100円を出せるということに ゆい の生活基準がみえた。

・・・・ボクの部屋は、ほとんど手をかけていない。
アメーバーからの最初の設定から変化はない。

それでも ゆい 専用のクッションが置いてあったり ゆい からもらった小物が飾られてあった。

・・・・なんとなく「深窓の奥さま」と「貧乏学生」の秘めた逢瀬ってな感じだった。
ボクは冬なのにランニングシャツ1枚だったし。

「ピグとも」になれば、相手が「IN」しているのかどうかもわかるようになる。
ゆい は、まだ入っていなかった。

しばらくして ゆい が入ってきた。

「ごめんね。遅くなって・・・」

深窓の奥さまにとって、この時間は夕食準備、子供のお迎え・・・・バタバタと忙しい時間帯だ。

・・・・まぁ、ボクだって忙しいんだけど。リアルは学生じゃない。大人の自営業だ。・・・ったく何やってんだか・・・


ゆい がソファに座った。

「いや、平気。タンスからパンツとか漁ってたから(笑)」

「いやだ、もぉーー」

「黒いTバックがあった(笑)」

「そんなのないもん(笑)」

「・・・・旦那さんの趣味なんじゃないの・・???(笑)」

「そんなことないよ!(笑)」


一気に ゆい の表情が明るくなった。

・・・一気に、ふたりの世界に入り込んでいく。

・・・どんなにリアル世界で嫌なことがあっても、 ゆい に会えれば、 ゆい と話せば笑顔になった。
本当にそうだった。

ゆい とピグで話しているとき、ボクは自然と笑顔になっていた。

・・・・いや・・・ ゆい と話しているときだけが笑顔だった・・・

ゆい は・・・
ゆい は、どうなんだろうな・・・

ゆい が入ってきた時、何か、ちょっと疲れたような印象を受けた。

ピグでのことだ。
ピグから、アバターの向こうの「人間」の表情は見えない。
感情は見えない。

それでも、ふとした時に、その感情の機微、起伏を感じることがある。

・・・・読みとってしまうこともある。

・・・・時間があるのか、ないのか。
話に引き寄せられているのか。
つまらないのか・・・・他に考え事をしているのか・・・話を聞かずに相槌だけをうっているのか・・・

ピグは・・・
会話が・・・会話が「文章」だけの世界だ。
音・・・声もない。ピグだから動作もない。そんな世界だからこそ、より感情が見えること、感じることもあるんじゃないかと思う。


「鍵かけた?」

「うん」

ゆいが返事をする。


ピグの部屋にも鍵がある。

開けておけば誰でも入れる。

ブログで知り合ったヒトとピグで話すことはよくあった。

ボクの場合は、植物の生育の相談をピグで受けた。

読者同士、電話感覚で話すことも多い。

ボクが ゆい の部屋に入ると、 ゆい が誰かと話していたり、その逆の事もよくあった。


ふたりっきりになりたい・・・

だから、部屋にふたりになったら鍵をかける。

そうじゃないと、二人で寄り添ってソファでチョコンと座っていて、そこに第三者が入ってきて、ひじょーに気まずい空気が流れることになる。
・・・何回もあった。


ボクは、時間があればピグに入るようになっていた。
それは ゆい も同じだった。

1時間くらい話して、いつもどおり、

「じゃあ、迎えに行くね・・・」

と、ゆい が消えていった。
リアル世界へと戻っていった・・・・

ゆい は中学生の娘さんを学校から塾へと送っていた。
そして、塾帰りに、また迎えに行く。


仕事部屋を出た。

キッチンで米を洗った。
炊飯器にセットする。

冷蔵庫を開けて何が入っているかを確認した。

回鍋肉かなぁ・・・

味の素のクックドゥ、数種類を買い置きしていた。
同じような商品の中では一番美味しいと思っているからだ。


お嫁さんは駅前の「弁当店」でパートをしていた。

帰って来るとき店の余物ををもらって帰ることが多い。

・・・・それを見ながら最終的な献立を決める。

一人暮らしが長かった。
だから、家事はひと通りできる。苦にもならない。

基本、夕食の準備はボクがした。・・・洗濯もだ。

キッチンが汚れていた。・・・ここに引っ越してからレンジ台は掃除したことがないんじゃないかな。

部屋の四隅には埃が溜まっていた。

パートとはいえ、お嫁さんも働いている。
二人で働いていれば部屋が片付くことはない・・・・こんなもんだろう。


座卓の上には、国民健康保険、国民年金の督促状があった。
・・・都銀からの赤文字のスタンプの押された封書もあった。

・・・そうなんだ・・・ピグの世界で、100円とはいえ簡単に使える生活じゃなかった・・・


ボクには二つの日常ができてしまっていた。
「リアルの世界」と「ピグの世界」

食べるために、生活するために働くリアルの世界。
・・・そして ゆい のいるピグの世界。

ふたつの世界を行き来していた。

「リアルの家」と「ピグの家」

埃にまみれたリアルの家。
督促状がやってくるリアルの家。
機能美・・・センス良く小奇麗にまとめられた、ゆいのピグの家。

・・・・そして、ブログで見る ゆい の家は・・・
キッチンに塵ひとつなかった。
美しい家庭料理が並んでいた・・・


ボクは・・・ボクは、ふたつの家を行き来していた。


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