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「気持ちが知りたい」生殺しの壁。
「やっぱりセブンイレブンかなぁ・・・お弁当も、おにぎりも、パンだってセブンイレブンが一番美味しいって思う・・・」
プリウスの助手席。PC画面の中で「カズくん」が言った。「ゆい」が、いつものように並んでソファに座っている。
どこにいるの?って話からコンビニの話に。
ボクの仕事は車移動だ。
昼ご飯もコンビニで済ますことが多い。
今も、セブンイレブンの駐車場、運転席で昼食だ。
ピグで話しながらサンドイッチを頬張っていた。
「家の近くはミニストップしかないんだよ。ミニストップのハロハロ好きだけどね(笑)夏は、イートインでちょっとお休みが贅沢時間なんだ(笑)」
あいかわらず、朝の「きたよ」のベルを鳴らして1日が始まっていた。
毎日数時間も ゆい と話していた。
会えば、いつもと変わっていない。
仲良く、笑って話していた。
ブログで、お互いにパートナーの・・・・ボクにとっては お嫁さん ゆい にとっては旦那さんの記事は書かないという暗黙の了解があった。
・・・・ボクが勝手に思っていただけなのかもしれないけど・・・・
なのに、ゆい は、バレンタインに旦那さんとの仲良し記事をアップした。
心にひっかかった。
心に「棘」が刺さっていた。
・・・・いや、それだけじゃなかった。
嫌われてはいない。もちろん遠ざけられてもいない。
だけど、強固な「線」が引かれている感覚・・・・・
11月に出会ってから毎日のようにピグで話した。
会えない日は寂しく、日常生活にすら影響していた。・・・寂しさから些細なことでお互いを言葉の「棘」で傷つけあった。
そこから「のめり込みすぎない」と、お互い気持ちに線を引いた。
話し合ったわけじゃない。
それも、お互いの暗黙の了解だった。
・・・しかし、その「線」は日増しに強固なものへとなっていった。
ボクは ゆい を愛していた。
愛していることに気づいてしまった。
・・・・お嫁さんよりも愛していることに気づいた。
でも、それがおかしなことなのは理解していた。
ゆい に会ったことはない。
それどころか、声すら聞いたことがない。
写真を見たこともない。
「一目惚れ」というのは確かにある。・・・・でも、それは、姿を見て始まるものだ。
姿を見ていない・・・・どころか、声も聞いていない。
ピグというアバターを使って、文字による会話をしてきただけの関係だ。
・・・・そんな相手を「好き」になること、ましてや「愛する」なんてことがあるんだろうか・・・
ましてや、お嫁さんよりも愛している・・・・
ありえない。
普通じゃない。
おかしなヒトでしかない。
気持悪い。
そう思われても不思議じゃない。
だけど・・・
ゆい はどう思ってるんだろう・・・・・?
毎日毎日、仲良く話している。
話が弾めば弾むほど
・・・・ふと、気持ちを打ち明けたい衝動にかられる。
「好きだ」
言ったらどうなるんだろう・・・
たぶん ゆい は受けつけない
・・・・・たとえ、もし・・・ ゆい にボクへの気持ちがあったとしても受けつけない。
ゆい は「不倫」を受けつけない。
世間一般の主婦がそうであるように
・・・・いや、それ以上に「不倫」に対しての罪悪感をもっている。
・・・・そんな女性だというのはわかる。
どこか、毅然としているところがあった。
凛としたところがある・・・・
「高嶺の華」
ボクが、そう感じるのは、そんなところからだった。
だから、心を告げることはできない。
告白する・・・・それは、結果をだすことだ。白黒をつけることだ。
告白すれば、ゆい は・・・
ゆい なら、・・・・もし、 ゆい にボクへの気持ちが有ったとしても拒絶するに違いない。
「不倫」は悪であって、
結婚したなら家族が一番大事。
・・・まして、地方名士の長男の嫁。
「不倫」しかも「W不倫」
ぜったいに、そんな世界には踏み込まない。
・・・・だから、告白はできない。
断られてしまうのが怖いから。
関係が終わってしまうのが怖いから。
この幸せな関係を失いたくなかった。
・・・おかしな人間だと思われるのが怖かった。
ピグで知り合ったというだけで「好き」になってしまう。
そんな変な人間だと思われたくない。
「もう行かなきゃ・・・」ボクが言う。
「うん、わかった」
・・・ゆい が消えた。
缶珈琲を飲み干してPCの電源を落とした。
ゴミをまとめたコンビニ袋を持って車を降りた。
冬晴れだった。
つくばにいた。
遠くに雪を被った山々が見えた。
営業エリアは広い。
プリウスには冬用タイヤを履かせている。
冬は、東京でも数日は積雪になる時がある。
ましてや、いきなり北陸を走ることになる時もある。
年末から春先までスタッドレスを履かせていた。
「ヤダ・・・」
ゆい に言われるときがある・・・・
「もう行かなきゃ・・・」
「ヤダ・・・」
ボクにとっては幸せな「ヤダ・・・」だった。
ゆい の「ヤダ・・・」はボクにとって、たまらなく魅力的だ。
「もうイオン行かなきゃ・・・」ゆい に言われる。
「ヤダ・・・」ゆい を真似て言う。
そんなやりとりをふたりで楽しんでいた。
プリウスの電源スイッチを入れる。
インジケータ―が点灯する。
モーターの起動する音が聞こえる。エンジン音はしない。
走りだす。
「ヤダ・・・」
ゆい に言われることがなくなった。
ゆい に引かれた強固な「線」・・・それが「壁」になっていた。
「線」であれば、見ることはできた。感じることはできた。
・・・しかし「壁」となってしまっては・・・・「壁」の中に入り込まれては何も見えない。
まるで、表に出た時だけの、当たり障りのない近所づきあいのようだった。
もどかしさが募っていた。
ゆい の気持ちを知りたい。
・・・・このまま「壁」を築かれて、生殺しのような・・・もどかしい感覚を味わっていくのなら・・・
会えなくていい。
「不倫」に踏み込まなくてもいい。
ゆい の、本当の気持ちが知りたい。
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