「崩壊の街」ボクは不倫に落ちた。

ポンポコポーン

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「明日一緒にいたい!」書けない文言。



二人でお弁当を食べた。

ボクはロクに亜貴を見ることができず・・・終始引きつった笑いを浮かべ・・・亜貴は、終始ボクを笑顔で見つめながら・・・それでも、話は弾んだ。
・・・ピグで、電話で、いつだって話は尽きなかった。それが、リアルに顔を合わせて話せれば、それこそたまらなく楽しい時間になった。

・・・・ホントに楽しい時間だった。
ホントに、すっごく、すっごく楽しい時間だった。


「迎えに行かなきゃ・・・・」


亜貴が言った。
いつものとおり、娘さんを迎えに行かなきゃなんない。
今日は会う予定にしてなかった。そこを無理やり時間をあけて来てもらった。
それでも、ギリギリ1時間近く一緒にいてくれた。


一緒に部屋を出た。
・・・やっぱり亜貴の方が少し背が高いかも・・・精一杯背筋を伸ばして歩く。


亜貴の車はホンダの大きめのミニバンだった。・・・・いかにもってなトヨタのミニバンじゃないのがよかった。威圧感を感じない。
少し車高が落とされている。ほんの少し。
タイヤとホイールも純正から交換されている。
いいセンスには、まとまっていると思った。

「わたしは、あんまり好きじゃないんだけどね・・・」

苦笑気味に笑う・・・確かに亜貴に似合っているとは言い難い・・・ってか、女の人が運転しているって感じには見えない。
それでも大人しい無難なボディカラーが、尖った印象を消している。
当然、足回りを交換したりは旦那さんの趣味らしい。

・・・・本当は、旦那さんは、トヨタの「いかにも」ってなミニバンを選びたかったんじゃなかろうか・・・田舎では車選びにも神経を使う。目立つことを最も嫌う日本の村社会だ。

ボクは・・・今でこそプリウスに乗ってるけど、ずっとスポーツカーに乗ってきた。・・・ボクにとっての唯一の趣味といっていい。
その派手なスポーツカーに乗って田舎に帰った時の、咎めるような、刺さるような視線を忘れない。・・・もちろん、そんなことは知ったこっちゃない。


亜貴が車に乗り込み方向転換をする。
笑顔で手を振る。


走り出す。乗り慣れたハンドルさばきだ。
コテージから出て行った。
「颯爽とした」という言葉がぴったりだ。


・・・・見送った。

部屋に入って、座椅子に座り落ちた。


ふぅ・・・・溜息をついた。


緊張した。
・・・なんというか、ドッと疲れが出た。
400kmを運転してきた疲れより、亜貴に見つめられた方がドッと疲れが出た。

テーブルの上にお弁当が乗っている。
食堂もやっていない。コンビニも近くにはない。
今日の夕飯にと、亜貴は多めに買ってきてくれた。

「とりあえず、お湯沸かそっか?」

亜貴の眩しい笑顔が頭をよぎる。


・・・・明日も会いたいと思った。明日は1日一緒にいたいと思った。
ボクは、亜貴を愛していた。・・・それを実感していた。

明日は会うことになっていた。
最初から、その予定にしていた。
・・・だから、来てくれるとは思う。
ただ、1日一緒にいてくれるかはわからない。・・・その約束は怖くて確認できなかった。


今までは「会いたい」それだけだった。それが一番だった。

ピグで出会っただけで、実体に結びつかなかった。現実に、この世に存在している女性なのかもわからない・・・にもかかわらず「愛してる」という想いにまでなってしまった。
・・・だから会いたかった。ただ、確かめたかった。
亜貴という人間の存在を、現実だと・・・この世に存在するもんだと確かめたかった。
震災があった。亜貴の無事を確かめたかった。

「会いたい」

その気持ちが一番大きくて、ほとんどで・・・それだけを考えて400kmをやってきた。


携帯を開く。メール画面・・・文字を打つ・・・

「今日はありがと 明日一緒にいられると思うと今日は嬉しくて眠れない・・・」

・・・違うな。

一緒にいることを強制してるみたいだ・・・まだ、亜貴が来てくれるかどうかさえわからないのに・・・一緒って言葉は違うな・・・
メールの文面が思いつかない・・・なんて言えばいいのかわからない・・・文字を消す。携帯を閉じる。


フラれるためにやって来た。
・・・それは本心だった。

「会いたい」

その気持ちが一番で・・・亜貴の存在を確認すること、亜貴の無事を確認することが一番だった。・・・次に頭をよぎっていたのは「どうせフラれる」ってことだった。

会えた・・・会ってしまった・・・現実の亜貴に会ってしまった・・・


・・・でも、フラれたくない・・・・


亜貴に会えて嬉しかった・・・堪らなく嬉しかった・・・会いたくて会いたくてしょうがなかった亜貴に会えた・・・
一番の夢は叶った。


・・・フラれたくないと思った。
欲が出てきてしまった・・・


・・・でもさぁ・・・フラれるよな・・・絶対だよ。こんなの完全にフラれるよ・・・
あんな綺麗な女性が・・・亜貴とボクでは住む世界が違いすぎる・・・
亜貴は笑顔で会ってくれてたけどガッカリしてると思うんだよなぁ・・・

・・・でも嫌だ。

・・・・明日も一緒にいたい・・・

せめて、明日だけでも一緒にいたい・・・良い「思い出」にしたい・・
フラれるのはいい・・・でも・・せめて、明日一緒にいて・・・帰ってからフラれたい・・・

もう、亜貴に対しての「愛してる」は最高潮に達していた。

今までは抑えていた。

「愛してる」・・・・でも感情は抑えていた。感情が爆発することは抑えていた。

抑えることもできた。

「会いたい」

それが一番だった。
会えた・・・亜貴の無事を確認した。・・・そして、愛していると再確認させられた。・・・どころじゃない「愛してる」が沸騰している。

・・・・もう、抑えきれない・・・
会いたい・・・一緒にいたい。もう、今すぐにでも会いたい・・・


窓から外を見ていた。・・・携帯を開く。


「とにかく明日は一緒にいてほしい・・・明日だけでいいから・・・」


違うな。
フラれる前提は、やっぱりおかしいよ・・・自分でフラれやすいように誘導してどうすんだよ・・・
・・・メールを書いては消した。
陽が沈んでいく・・・・綺麗な夕日だ。


・・・・明日一緒にいたいなぁ・・・・
フラれたくないなぁ・・・
・・・・どうしよう・・・
なんかメールしないと・・・

亜貴が帰ってから1通もメールをしていない。・・・メールは来ない。

・・・でも亜貴はどう思ってるんだろう・・・メールが来ないのが亜貴の答えなんじゃないか・・・

ボクは400kmの距離をやってきた。・・・まだ地面が揺れる中・・・命を賭してやってきた。
それに恩を着せたように亜貴に会うことを強要したくない・・・
・・・でも、明日会いたい・・・そして、フラれたくない・・・でも亜貴に嫌な思いはさせたくない・・・


悶々と・・・グルングルンと「負のスパイラル」が頭の中で堂々巡りをしていた。


陽が沈んだ。
もう夜だ。テレビ画面を見ながらメールの文面を考える・・・

ポットからお茶を入れる。
ポットのお湯は亜貴が沸かしてくれた。

「とりあえず、お湯沸かそっか?」

亜貴の笑顔がグルグルと頭をよぎる・・・
悶々と考えながら、亜貴の持ってきてくれたお弁当を食べる。

・・・亜貴からメールは来ない。
ボクもメールができない・・・

テレビからは震災情報が流れている。
座椅子の下では常に微振動のような地震が起こってる。
・・・常に震度3クラスがくる。思い出したように震度4が。・・・ったら、忘れちゃ困ると震度5が。

・・・なんかメールしないと・・・
なんかメールしないと・・・でも、どう言えばいいんだろう・・・

ぼんやりテレビを見ながら考える・・・気がつけば時計は22時前だ。


携帯が鳴った。メールの着信音だ。
飛びつくようにメールを読む。もちろん亜貴からだった。


今日は少しだけど会えて良かった
遠いのに・・・来てくれてありがとう
明日いっぱいお話しようね~💕

カズくん・・・会ってからも大好きの気持ち変わってない?ピークから下がってない?
私は大好きなままだよ💕


・・・・助かった。見事なメールだった。
ボクの不安を見事に吹き消してくれた。
見事に「優しさのツボが同じ」だと思った。


「ぜっんぜん変わってないよ・・・亜貴が大好きだ!! 大好きなんか超えてる 亜貴を愛してる! すっごいすっごい愛してる!!!」


・・・送信ボタン・・・・メールを消した。


「ボクこそ 今日は会ってくれてありがとう 気持ちはぜんぜん変わってないよ・・・亜貴が大好きだよ・・・大好きがすごく上がってるんだ・・・明日 いっぱい話をしよう!」


・・・送信ボタンを押した。


・・・亜貴・・・愛してる!


・・・「愛してる」は顔を見て言いたい!

明日は「愛してる」って絶対に伝えるんだ!そのためにやってきたんだ! 


感想 10

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