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「貴女を盗み見ていた・・・」熱弁の理由。
車内に三味線の音楽が流れている。
津軽三味線とはいえ民謡じゃない・・・洋楽の構成だ。
ドラムがあって、ベースがあって・・・
リードギターの代わりに三味線が入っている。そんな音楽だ。
「上妻宏光」
ボクが亜貴に渡したCDだ。
「すごーく気に入ってるの・・・・いつも一人の時は聞いてるんだよ」
ニコニコして・・・・ニコニコという表現しかない笑顔だ。
助手席から、話す亜貴の横顔を見ていた。
運転する亜貴の横顔をマジマジと見ていた。
・・・・やっと会えた。
やっと再会できた。
毎日声を聞いた。「愛してる」毎日確認しあった。・・・それでも、現実に亜貴と会うのとでは全く違う。
顔を見ることが一番安心できた。堪らない幸せを感じる。
・・・綺麗だ・・・溜息が出る。
ボクは、呆けたように見惚れてしまっていた。
「そんなに見ないで」
はにかむ笑顔。左手で顔を隠すように言う。
綺麗な八重歯が見えた。
「この前のお返しだよ」
我に返って、ボクも笑って返事をする。
初めて会ったとき・・・コテージで、亜貴は、ずーっとボクの顔を見ていた。
ボクは、亜貴の眼差しが眩しくて見返すことができなかった。
・・・だからの「お返し」の意味もある。
なお一層に、ワザと亜貴の横顔を見つめた。
「カズくん、ダメ~~~、運転できない~~~危ないから前向いて!」
照れて、少し上気している。
・・・だろ?見つめられるのは恥ずかしいんだよ。
亜貴が運転している。
顔を隠すことも、逃げることもできない。
それをいいことに、面白がって、さらに、わざとらしく亜貴の横顔を見つめ続けた。
・・・冗談ぽく話しているけれど、実際に目を離すことができなかった。
改めて美しいと思った・・・東京に戻ってから思い出していた亜貴よりも、実物はさらに美しかった。
ずっと見続けていたかった。
目に焼き付けておきたかった。
何でもないジーンズ姿。
地味なチェック柄のシャツ。そしてロングカーディガン。
ことさら目立つものじゃない・・・・全くの普通のものだ。
・・・・いや、絶対「ダサく」着こなしている。
おそらく「目立つ」ことを避けている。
田舎では「目立つ」ことは悪だ。
亜貴も「目立つ」ことの弊害を味わって生きてきたんじゃないのか・・・そう思っていた。
・・・・ボクが、そうだったからだ。
ボクも田舎の住民だった。
田舎暮らしで「目立つ」ことの弊害を嫌というほど味わってきた。
・・・・だから、ボクは東京へ出た。東京へ逃げた。
亜貴が身に着けているものは・・・・服装は、いたって「普通」だ。
それでも、その「普通」の洋服がプチプラではなかった。
スーパーで買った安物じゃない。
同じファッション・・・出で立ちでも、スーパーの安物と本物では違う。
同じテイストのスーツでも、格安スーツとシャネルでは、身にまとった・・・立ち姿が全く違ってくる。
素人目には、どこがどうという説明はできない。・・・・それでも、説明できない「空気」が違う。
・・・全てが「普通」
しかし、そのブランドは、全てが嫌味のない程度の「一級品」だった。
スタンダードな一級品を身に着けていた。
それが、亜貴の生活水準を物語っている。為人、生き方を物語っていた。
まだ、朝が早い。
通勤時間といっていい。
国道は、朝のラッシュ時間帯なのかもしれない。
流れが悪かった。
ノロノロと走る車の中。
三味線の音が響いていた。
「もともとはさ・・・・高橋竹山を聞いて・・・・」
高橋竹山は、津軽三味線の演奏者だ。
盲目の三味線奏者。
その昔、視覚障害者にはマッサージ師くらいしか職がなかった。同じように、三味線・・・芸事も、彼らにとっての生きていくための術だった。
ボクが高橋竹山を知ったのはバブル期だ。
日本全国が「バブル景気」に浮かれ、それに警鐘を鳴らすように「真面目さ」や「実直さ」・・・・地に足をつけた生き方を紹介する・・・・そんなテレビ番組で知ったんだった。
東北らしい・・・朴訥とした三味線の中に「何か」を感じた。
同じ、交響曲でも指揮者が違えば「何か」が違う・・・・同じように、高橋竹山の三味線の中に「何か」を感じた。
指揮者は、その人生が指揮に出る。
同じように、奏者もまた、その人生が演奏に現れる。
高橋竹山に心を掴まれた。
・・・・力強く・・・・そして切なく・・・・そして優しく・・・
三味線の「畝り」「鳴き」が身体に染み渡ってきたんだった。
・・・ボクは熱弁を揮っていた。
亜貴が頷き、質問し、感嘆していた。
ユルユルと車が進む。
2車線の国道をユルユルと進む。
もっともらしい三味線の熱弁をしながら、亜貴の横顔を見つめていた。
・・・そして・・・そして・・・悟られないように盗み見ていた。
ハンドル操作のたびに動く亜貴の身体・・・スッとした腕・・・綺麗にネイルが施された指先・・・魅力的な胸の膨らみ・・・
アクセル、ブレーキで動く、長く伸び切ったジーンズの足。
横顔を真剣に、ことさらわざとらしく見ながら・・・ほんとうに見ていたのは長い足だ・・・・運転操作で動く魅力的な足だった。
いたって「普通」の、なんら特徴のないジーンズの足が魅力的だった。
決して、長さや、スタイルを誇張するタイトなスキニーを履いてるわけじゃない。
「普通」のジーンズ・・・・足のラインを見せないようにだろう。太さにも余裕がある・・・・にもかかわらず、肉付きの良さが想像できた。
・・・・いや、想像じゃなかった・・・
ボクは・・・このジーンズの中身を知っていた。
この手で抱き、指を這わせた。
肌ざわり・・・色・・・弾力の様まで脳裏に焼き付いている。
舌を這わせた・・・その味すら覚えていた。
深く息を吸い込み、その魅惑の芳香すら覚えている。
国道を南下していた。
ホテルが見つからなかった。
ラブホテルを探して走っていた。
普通に走っていればラブホテルはよく見かける。
探すと意外とないものなのか・・・
CDが終盤にさしかかっている。
上妻宏光の三味線が鳴いていた。
・・・・高橋竹山の三味線に魂を揺さぶられた。
それで、三味線、和太鼓といった日本の伝統音楽にも興味を持った。・・・・「聴く」という素地ができていた。
そこに入ってきたのが上妻宏光だった。
最近では、「和」だけじゃなく、洋楽テイストの和楽器奏者も増えてきている。
「ジャパンクール」といった海外の声も相まって、世界で活躍するアーティストが増えてきていた。
その急先鋒が上妻宏光だった。
アーティスト・・・だけではなく、津軽三味線全国大会で3連覇を果たす本物の三味線奏者だった。
上妻宏光の三味線には、洋楽の・・・・ブルースギターに通じる「鳴き」や、魂の「叫び」があった。
大好きだった、ゲーリームーアと通じるものがあった。
「何か」に心を撃たれた。
CDを買ってからは毎日聴いた。
毎日の仕事終わり、上妻宏光の三味線を聴きながら首都高を走った。
ベイブリッジ。夕日。三味線の音色が一日の締めくくりだった。
曲が変わった。
一躍、上妻宏光を有名にした、大河ドラマ「風林火山」のテーマ曲が流れてきた・・・
力説していた。
上妻宏光の三味線の素晴らしさを。
高橋竹山の荒波の人生を・・・・
ノロノロと車が進む。
東京ほどじゃない。それでも渋滞だといっていいんだろう。
走り出してから・・・・駅で再会してから、すでに1時間近くが経っている・・・ちょうど、通勤時間帯にぶつかってしまったんだろう・・・
・・・・焦れていた・・・・
欲情を隠していた。・・・・必死に隠していた。・・・それ故の三味線談義だったんだ。
「私・・・H嫌いだったから・・・」
亜貴に悟られないように必死だった。
務めて平静を装っていた。
「でも・・・竹山は、民謡ばっかりだったからさ・・・」
つまらない話をしている。
欲情を隠して、必死につまらない熱弁を揮っていた。
上妻宏光の三味線が響く。
切ない旋律が響く。
・・・高橋竹山は「津軽三味線」奏者だった。
王道の津軽三味線奏者だった。
既存の楽曲という枠の中で「何か」を伝えてくる演奏者だった。
上妻宏光は・・・
「伝統と革新」
氏がテーマとしてるように、津軽三味線を、見事に現代の音楽へと昇華させている。
優れた演奏家であり、同時に優れた作曲家でもある。
ギターを三味線に代えたバンド構成。楽曲は洋楽ティストだ。
・・・にもかかわらず、見事に、三味線のもつ・・・三味線でしか表現のできない、切なさ・・・・鋭さ・・・そして、優しさ・・・日本人の琴線に響く音色、旋律がそこにある。
日本国内にとどまらず、その活動は世界に広がっている。
見事に、世界に通用するフュージョンとして完成させていた。
窓の外には長閑な陽の光が注いでいた。
亜貴越しに田畑が広がっていた。
・・・・その奥には山々・・・そして点在する桜の色・・・・
手を繋いで「桜」を見るために、ボクは再び東北にやってきた。
亜貴は東北に生きている。
高橋竹山を知っていた。
親戚に三味線のお師匠さんがいるんだと言った。・・・・さすがに東北だ。
脈々と伝統文化が息づいていた。
それで、亜貴に「上妻宏光」のCDを渡した。
亜貴自身は、幼い頃からピアノを習っていた。
・・・・そう・・・学校で「合唱コンクール」とかで、ピアノを伴奏する生徒だった。
音楽の話をしていても、話は尽きない。
この前会った時・・・・ボクが、平原綾香のジュピターを聞きながら・・・・泣きながら運転して来たこと・・・・
高校生の頃からゲーリームーアが大好きだったこと・・・そのゲーリームーアが震災の頃に亡くなったこと・・・
互いの、人生の空白を埋めるように、好きだった音楽、好きな音楽を話し合った。
真面目な顔をして、真面目な話をしていた。
・・・・本当は、そんな話は、どうでもよかった。
亜貴を見つめる・・・その美しい顏を堪能していた。
長く美しい足の動き・・・・身体の輪郭を盗み見ていた。
・・・・妄想していた。
亜貴が、運転して逃げられない、隠せないことをいいことに、眼で亜貴を犯していた・・・・
・・・・部屋に入れば、すぐにこのジーンズを剥ぎ取る。
恥ずかしがる亜貴の脚を拡げさせ、押さえ付け、芳醇な肉を湛えた、シルクの太ももに唇を這わせる・・・舌を這わせ、染み出すエキスを口に含み込む。
脹脛。脛。膝・・・・足の甲さえ・・・1mm刻みで味わってやる・・・
・・・・いや・・・その前に・・・何をおいても、まずは舌だ。
滑らかな・・・別の生き物のようにウネウネと蠢く・・・亜貴の隠された本能が蠢く舌を味わう。
舌を絡め、舌を吸い・・・歯茎の1本1本までに舌を滑り込ませていく・・・
・・・・亜貴の全てをボクのものにしたい。
髪の毛から、足の指までにボクのものだと実感したい・・・
亜貴を貫きたい!
亜貴の顏をマジマジと見つめ続けた。
亜貴の長い足が、運転操作のたびに魅力的に動く・・・
シャツの中身を視姦した。
ジーンズの中身を貫いた。
パンプスから覗く素足に舌を這わせた。
パンプスに隠された、性感のつまった足指を口に含んだ。
・・・もうすぐ触れる・・・味わうことができる・・・
ダラダラと国道が進んだ。
ラブホテルは見つからない。
焦れていた。
それでも、平静を装ってつまらない話を続けた。
何時間でも話していられる。
的確な相槌と、的確な問いかけ。
この相性の良さが、決して、これまでの人生で得られない相手だった。
亜貴の上気した顏を見つめていた。
触りたかった。もう我慢できなかった・・・亜貴に触れて・・・キスをして・・その足に唇を這わせたかった・・・舌を這わせたかった・・・
パンプスの中の足の指・・・その1本1本を口中で愛したかった。
亜貴の快感に歪む鳴き顏を想像した。
脚の質感を・・・蠢く身体の重量感を妄想した。
亜貴の中を・・・熱い・・・亜貴の膣の中を想像した。柔らかい・・・しなやかな締め付けを想像した・・・
・・・想像・・・いや、一度味わったがゆえに、全てを鮮明に思い出すことができた・・・・その行為、ひとつひとつの亜貴の反応を、鳴き声すらも鮮明に思い出すことができた。
そのヤラシイ妄想を悟られないように、笑顔で普通の話をして、亜貴の横顔に見とれていた。
・・・・もう、我慢が出来ない・・・・
すでにジーンズの中では、痺れるほどに欲情が滾っていた。
ジーンズの硬い布地の中。
痛いほどに脈打っていた。
やっとのことで、ラブホテルの看板を見つけた。
津軽三味線とはいえ民謡じゃない・・・洋楽の構成だ。
ドラムがあって、ベースがあって・・・
リードギターの代わりに三味線が入っている。そんな音楽だ。
「上妻宏光」
ボクが亜貴に渡したCDだ。
「すごーく気に入ってるの・・・・いつも一人の時は聞いてるんだよ」
ニコニコして・・・・ニコニコという表現しかない笑顔だ。
助手席から、話す亜貴の横顔を見ていた。
運転する亜貴の横顔をマジマジと見ていた。
・・・・やっと会えた。
やっと再会できた。
毎日声を聞いた。「愛してる」毎日確認しあった。・・・それでも、現実に亜貴と会うのとでは全く違う。
顔を見ることが一番安心できた。堪らない幸せを感じる。
・・・綺麗だ・・・溜息が出る。
ボクは、呆けたように見惚れてしまっていた。
「そんなに見ないで」
はにかむ笑顔。左手で顔を隠すように言う。
綺麗な八重歯が見えた。
「この前のお返しだよ」
我に返って、ボクも笑って返事をする。
初めて会ったとき・・・コテージで、亜貴は、ずーっとボクの顔を見ていた。
ボクは、亜貴の眼差しが眩しくて見返すことができなかった。
・・・だからの「お返し」の意味もある。
なお一層に、ワザと亜貴の横顔を見つめた。
「カズくん、ダメ~~~、運転できない~~~危ないから前向いて!」
照れて、少し上気している。
・・・だろ?見つめられるのは恥ずかしいんだよ。
亜貴が運転している。
顔を隠すことも、逃げることもできない。
それをいいことに、面白がって、さらに、わざとらしく亜貴の横顔を見つめ続けた。
・・・冗談ぽく話しているけれど、実際に目を離すことができなかった。
改めて美しいと思った・・・東京に戻ってから思い出していた亜貴よりも、実物はさらに美しかった。
ずっと見続けていたかった。
目に焼き付けておきたかった。
何でもないジーンズ姿。
地味なチェック柄のシャツ。そしてロングカーディガン。
ことさら目立つものじゃない・・・・全くの普通のものだ。
・・・・いや、絶対「ダサく」着こなしている。
おそらく「目立つ」ことを避けている。
田舎では「目立つ」ことは悪だ。
亜貴も「目立つ」ことの弊害を味わって生きてきたんじゃないのか・・・そう思っていた。
・・・・ボクが、そうだったからだ。
ボクも田舎の住民だった。
田舎暮らしで「目立つ」ことの弊害を嫌というほど味わってきた。
・・・・だから、ボクは東京へ出た。東京へ逃げた。
亜貴が身に着けているものは・・・・服装は、いたって「普通」だ。
それでも、その「普通」の洋服がプチプラではなかった。
スーパーで買った安物じゃない。
同じファッション・・・出で立ちでも、スーパーの安物と本物では違う。
同じテイストのスーツでも、格安スーツとシャネルでは、身にまとった・・・立ち姿が全く違ってくる。
素人目には、どこがどうという説明はできない。・・・・それでも、説明できない「空気」が違う。
・・・全てが「普通」
しかし、そのブランドは、全てが嫌味のない程度の「一級品」だった。
スタンダードな一級品を身に着けていた。
それが、亜貴の生活水準を物語っている。為人、生き方を物語っていた。
まだ、朝が早い。
通勤時間といっていい。
国道は、朝のラッシュ時間帯なのかもしれない。
流れが悪かった。
ノロノロと走る車の中。
三味線の音が響いていた。
「もともとはさ・・・・高橋竹山を聞いて・・・・」
高橋竹山は、津軽三味線の演奏者だ。
盲目の三味線奏者。
その昔、視覚障害者にはマッサージ師くらいしか職がなかった。同じように、三味線・・・芸事も、彼らにとっての生きていくための術だった。
ボクが高橋竹山を知ったのはバブル期だ。
日本全国が「バブル景気」に浮かれ、それに警鐘を鳴らすように「真面目さ」や「実直さ」・・・・地に足をつけた生き方を紹介する・・・・そんなテレビ番組で知ったんだった。
東北らしい・・・朴訥とした三味線の中に「何か」を感じた。
同じ、交響曲でも指揮者が違えば「何か」が違う・・・・同じように、高橋竹山の三味線の中に「何か」を感じた。
指揮者は、その人生が指揮に出る。
同じように、奏者もまた、その人生が演奏に現れる。
高橋竹山に心を掴まれた。
・・・・力強く・・・・そして切なく・・・・そして優しく・・・
三味線の「畝り」「鳴き」が身体に染み渡ってきたんだった。
・・・ボクは熱弁を揮っていた。
亜貴が頷き、質問し、感嘆していた。
ユルユルと車が進む。
2車線の国道をユルユルと進む。
もっともらしい三味線の熱弁をしながら、亜貴の横顔を見つめていた。
・・・そして・・・そして・・・悟られないように盗み見ていた。
ハンドル操作のたびに動く亜貴の身体・・・スッとした腕・・・綺麗にネイルが施された指先・・・魅力的な胸の膨らみ・・・
アクセル、ブレーキで動く、長く伸び切ったジーンズの足。
横顔を真剣に、ことさらわざとらしく見ながら・・・ほんとうに見ていたのは長い足だ・・・・運転操作で動く魅力的な足だった。
いたって「普通」の、なんら特徴のないジーンズの足が魅力的だった。
決して、長さや、スタイルを誇張するタイトなスキニーを履いてるわけじゃない。
「普通」のジーンズ・・・・足のラインを見せないようにだろう。太さにも余裕がある・・・・にもかかわらず、肉付きの良さが想像できた。
・・・・いや、想像じゃなかった・・・
ボクは・・・このジーンズの中身を知っていた。
この手で抱き、指を這わせた。
肌ざわり・・・色・・・弾力の様まで脳裏に焼き付いている。
舌を這わせた・・・その味すら覚えていた。
深く息を吸い込み、その魅惑の芳香すら覚えている。
国道を南下していた。
ホテルが見つからなかった。
ラブホテルを探して走っていた。
普通に走っていればラブホテルはよく見かける。
探すと意外とないものなのか・・・
CDが終盤にさしかかっている。
上妻宏光の三味線が鳴いていた。
・・・・高橋竹山の三味線に魂を揺さぶられた。
それで、三味線、和太鼓といった日本の伝統音楽にも興味を持った。・・・・「聴く」という素地ができていた。
そこに入ってきたのが上妻宏光だった。
最近では、「和」だけじゃなく、洋楽テイストの和楽器奏者も増えてきている。
「ジャパンクール」といった海外の声も相まって、世界で活躍するアーティストが増えてきていた。
その急先鋒が上妻宏光だった。
アーティスト・・・だけではなく、津軽三味線全国大会で3連覇を果たす本物の三味線奏者だった。
上妻宏光の三味線には、洋楽の・・・・ブルースギターに通じる「鳴き」や、魂の「叫び」があった。
大好きだった、ゲーリームーアと通じるものがあった。
「何か」に心を撃たれた。
CDを買ってからは毎日聴いた。
毎日の仕事終わり、上妻宏光の三味線を聴きながら首都高を走った。
ベイブリッジ。夕日。三味線の音色が一日の締めくくりだった。
曲が変わった。
一躍、上妻宏光を有名にした、大河ドラマ「風林火山」のテーマ曲が流れてきた・・・
力説していた。
上妻宏光の三味線の素晴らしさを。
高橋竹山の荒波の人生を・・・・
ノロノロと車が進む。
東京ほどじゃない。それでも渋滞だといっていいんだろう。
走り出してから・・・・駅で再会してから、すでに1時間近くが経っている・・・ちょうど、通勤時間帯にぶつかってしまったんだろう・・・
・・・・焦れていた・・・・
欲情を隠していた。・・・・必死に隠していた。・・・それ故の三味線談義だったんだ。
「私・・・H嫌いだったから・・・」
亜貴に悟られないように必死だった。
務めて平静を装っていた。
「でも・・・竹山は、民謡ばっかりだったからさ・・・」
つまらない話をしている。
欲情を隠して、必死につまらない熱弁を揮っていた。
上妻宏光の三味線が響く。
切ない旋律が響く。
・・・高橋竹山は「津軽三味線」奏者だった。
王道の津軽三味線奏者だった。
既存の楽曲という枠の中で「何か」を伝えてくる演奏者だった。
上妻宏光は・・・
「伝統と革新」
氏がテーマとしてるように、津軽三味線を、見事に現代の音楽へと昇華させている。
優れた演奏家であり、同時に優れた作曲家でもある。
ギターを三味線に代えたバンド構成。楽曲は洋楽ティストだ。
・・・にもかかわらず、見事に、三味線のもつ・・・三味線でしか表現のできない、切なさ・・・・鋭さ・・・そして、優しさ・・・日本人の琴線に響く音色、旋律がそこにある。
日本国内にとどまらず、その活動は世界に広がっている。
見事に、世界に通用するフュージョンとして完成させていた。
窓の外には長閑な陽の光が注いでいた。
亜貴越しに田畑が広がっていた。
・・・・その奥には山々・・・そして点在する桜の色・・・・
手を繋いで「桜」を見るために、ボクは再び東北にやってきた。
亜貴は東北に生きている。
高橋竹山を知っていた。
親戚に三味線のお師匠さんがいるんだと言った。・・・・さすがに東北だ。
脈々と伝統文化が息づいていた。
それで、亜貴に「上妻宏光」のCDを渡した。
亜貴自身は、幼い頃からピアノを習っていた。
・・・・そう・・・学校で「合唱コンクール」とかで、ピアノを伴奏する生徒だった。
音楽の話をしていても、話は尽きない。
この前会った時・・・・ボクが、平原綾香のジュピターを聞きながら・・・・泣きながら運転して来たこと・・・・
高校生の頃からゲーリームーアが大好きだったこと・・・そのゲーリームーアが震災の頃に亡くなったこと・・・
互いの、人生の空白を埋めるように、好きだった音楽、好きな音楽を話し合った。
真面目な顔をして、真面目な話をしていた。
・・・・本当は、そんな話は、どうでもよかった。
亜貴を見つめる・・・その美しい顏を堪能していた。
長く美しい足の動き・・・・身体の輪郭を盗み見ていた。
・・・・妄想していた。
亜貴が、運転して逃げられない、隠せないことをいいことに、眼で亜貴を犯していた・・・・
・・・・部屋に入れば、すぐにこのジーンズを剥ぎ取る。
恥ずかしがる亜貴の脚を拡げさせ、押さえ付け、芳醇な肉を湛えた、シルクの太ももに唇を這わせる・・・舌を這わせ、染み出すエキスを口に含み込む。
脹脛。脛。膝・・・・足の甲さえ・・・1mm刻みで味わってやる・・・
・・・・いや・・・その前に・・・何をおいても、まずは舌だ。
滑らかな・・・別の生き物のようにウネウネと蠢く・・・亜貴の隠された本能が蠢く舌を味わう。
舌を絡め、舌を吸い・・・歯茎の1本1本までに舌を滑り込ませていく・・・
・・・・亜貴の全てをボクのものにしたい。
髪の毛から、足の指までにボクのものだと実感したい・・・
亜貴を貫きたい!
亜貴の顏をマジマジと見つめ続けた。
亜貴の長い足が、運転操作のたびに魅力的に動く・・・
シャツの中身を視姦した。
ジーンズの中身を貫いた。
パンプスから覗く素足に舌を這わせた。
パンプスに隠された、性感のつまった足指を口に含んだ。
・・・もうすぐ触れる・・・味わうことができる・・・
ダラダラと国道が進んだ。
ラブホテルは見つからない。
焦れていた。
それでも、平静を装ってつまらない話を続けた。
何時間でも話していられる。
的確な相槌と、的確な問いかけ。
この相性の良さが、決して、これまでの人生で得られない相手だった。
亜貴の上気した顏を見つめていた。
触りたかった。もう我慢できなかった・・・亜貴に触れて・・・キスをして・・その足に唇を這わせたかった・・・舌を這わせたかった・・・
パンプスの中の足の指・・・その1本1本を口中で愛したかった。
亜貴の快感に歪む鳴き顏を想像した。
脚の質感を・・・蠢く身体の重量感を妄想した。
亜貴の中を・・・熱い・・・亜貴の膣の中を想像した。柔らかい・・・しなやかな締め付けを想像した・・・
・・・想像・・・いや、一度味わったがゆえに、全てを鮮明に思い出すことができた・・・・その行為、ひとつひとつの亜貴の反応を、鳴き声すらも鮮明に思い出すことができた。
そのヤラシイ妄想を悟られないように、笑顔で普通の話をして、亜貴の横顔に見とれていた。
・・・・もう、我慢が出来ない・・・・
すでにジーンズの中では、痺れるほどに欲情が滾っていた。
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