75 / 99
「ウンザリだった」深夜の動物園。
仕事部屋。
PCで図面を描いていた。
時計は20時を過ぎている。
いつもどおり、真っ暗な部屋に帰ってきた。
いつもどおり、お嫁さんは眠っていた。
マウスの手を止め携帯を開く。メールを確認する。・・・・着信音はしていない。・・・だからメールはない・・・・わかってる・・・それでも確認してしまう・・・・
最後にメールが来たのは18時前だった。それに返事をしてからメールは来ない。
今頃は、一家団欒の夕食の時間だろう。
絶対に亜貴がメールをできない時間帯だ・・・
窓から夜の公園が見える。
シトシトと窓を伝わる雨垂れ。
部屋を出た。
そっと寝室の扉を開けて覗く。
「鼾」をかいている。
大きな「鼾」だった。
離れている仕事部屋からでも聞こえた。
お嫁さんが心療内科を受診して、薬のせいもあるんだろう太ってしまった。・・・そのため首周りの肉が弛むのか・・・体重が増えるに従って「鼾」が酷くなった。
寝る姿勢にもよるんだろうけど、ツボにハマった時の「鼾」は轟音だった。
とても女の人の「鼾」じゃない。
オヤジたちの宴会終わりの「鼾」そのままだった。
年々酷くなっていた。
・・・・・起きそうにはない・・・
今日は、ひとりで夕食だ。
いや、毎晩のようにひとりで夕食だ。
・・・・それでいい・・・・
特に、今日は・・・
今日は起きてこない方がいい・・・・
風呂から出て食事の準備だ。・・・今日は、スパゲティにする。
油汚れの固まったレンジ台に鍋を乗せた。
乾麺を茹でて、レトルトのミートソースをかける。
ペットボトル、新聞、チラシ広告、スナック菓子の袋、国民年金、国民健康保険、住民税の督促状・・・・乱雑に散らかった座卓の上。
強引に手で押し広げて皿を置く場所をつくる。・・・・いくつか、何かの落ちる音がした。
・・・・座卓の周り・・・床には、そうやって押し広げられ、雪崩のように落ちていった物たちが埃を被っていた。
テレビをつけてミートソースを食べ始める。
画面は、録り溜めていたアクション映画だ。ボリュームを最小限に絞って字幕で観た。
・・・・食べながら携帯を開く。
もちろん、メールは来ていない・・・
食べ終えて皿を洗った。
ソファーに寝転び映画を観続けた。
・・・画面にエンドロールが流れる。
結局・・・メールが来ることはなかった・・・・
テレビを消した。
そのまま横になって部屋の電気を消した。
・・・・最近は、ここで・・・ソファーで寝ていた。
お嫁さんの「鼾」がうるさかったからだ。・・・とても隣で寝られるような大きさじゃなかった。
・・・・もう、お嫁さんに触りたくなくなっていた。
真っ暗なリビング。
寝室からのお嫁さんの「鼾」が響いた。
・・・・深夜の動物園みたいだな・・・・
部屋干しされた洗濯物。
その下、周りには乾いた洗濯物が山になっていた。
・・・・人生。
全てにウンザリしていた・・・・
「愛してる・・・」
亜貴の気持ちはわかっている。
充分に確認した。
気が狂わんばかりのSEXをした。
狂ったように求め合った。
お互いが同じ気持ちだと確認しあった。
わかっている・・・信じている。
気持ちを疑ってはいない。
・・・・それでも不安だった。
メールのできない夜が不安だった。嫌だった。
亜貴の奥さんとしての顔を知らない。
どんな顔で家にいるのか・・・どんな顔をして旦那さんと話しているのか・・・
・・・笑顔を向けているのか・・・ボクの愛した笑顔・・・その同じ笑顔を旦那さんにも向けているのか・・・
亜貴が晩御飯を作り・・・・笑顔を向けて旦那さんに給仕をしているのか。
・・・・考えれば身体が疼く・・・渇く・・・すぐに亜貴を攫って掻き抱きたい・・・嫉妬に身体が身悶える。
頭を掻きむしった・・・・
泥沼に沈むように不快な眠りに落ちていく・・・・
毎晩のことだった。
・・・・真っ暗な中で目覚めた。
動物園の「鼾」が響いていた。
テレビの脇の時計は4時を少し過ぎている。・・・・窓の外は漆黒だ。・・・雨が降っている。
起き上がって電気も点けずに風呂場に向かった。
シャワーを浴びて髭を剃る・・・・念入りにだ。
いつもの服装・・・・いつもの・・・代わり映えのしない、客先に向かう服装に着替えて、髪をセットする。
カバンを持って通路を歩く。
・・・静かに・・・・灯りすら点けずに進んだ。
部屋だけじゃなかった。
同じだった。
人間の動く範囲・・・歩く範囲だけが「路」となっていて、その脇には、物が、埃が溜まっていた。
ここに越してきてから、掃除機をかけた記憶はない。
過ごした日数分だけの埃が溜まっていた。
読み終わった新聞・・・雑誌・・・数々のゴミと言っていいだろう代物が、埃を被って鎮座していた。
・・・・その中。動物園の「鼾」が響いていた。
マンションを出た。
静かに・・・音がしないように扉を閉めた。鍵をかけた。
東京駅。朝6時。
東北新幹線の乗り場に乗客は少ない。
原発絡みだろうビジネスマンが数人だった。
観光で東北へ行こうという人間には出会わない。
新幹線に乗り込んだ。窓際の席。
乗客は、4人で固まっているビジネスマンのみ。
・・・動き出した。
窓の景色が地下から地表に変わっていく・・・・雨。紫陽花が綺麗だ。
陽は昇っている・・・それでも梅雨空だ。窓に雨粒が流れた。
東北へ向かう。
亜貴に会いに行く。
亜貴をこんなにも愛している。・・・・亜貴に愛されている。
・・・・なのに、何故にボクが亜貴の作る晩御飯を食べられないのか。
何故に、亜貴と一緒に眠ることができないのか。
何故に、亜貴と一緒に目覚めることができないのか。
旦那さんの眼前で亜貴を抱きたい。
旦那の目の前。
犯すように亜貴を貫きたかった。
亜貴は、こんな鳴き声を上げて逝くんだぜ・・・アンタは見たことあるか・・・?
アンタは、亜貴をここまで逝かせたことがあるか?・・・ないだろう?・・・アンタの負けなんだよ。
そんな・・・絶対にできはしない妄想を抱く。
・・・・しかし・・・本心だった。
亜貴の顔を旦那に向けさせ・・・掲げさせた尻から膣口を貫きたかった。
亜貴を上へとし、跨らせて腰を振らせたかった。
髪を掴み、あくまでも旦那にその顔を見せつけながら・・・・ネチャネチャと卑猥な音をさせながら果てさせる。
果てても果てても逝かせ続ける。
雌獣のように鳴かせ続ける。
旦那に亜貴を諦めさせたかった。
・・・確かなものが欲しかった。
亜貴がボクのものだと、旦那さんのものではないという、絶対的に確かなものが欲しかった・・・・
新幹線・白石蔵王駅に降りた。
ロータリー。
すでに亜貴の車が停まっている。
近づくとスライドドアが開いた。
カバンを乗せて、助手席に乗り込む。
運転席に満面の笑みの亜貴が座っていた。
車が走り出す。
・・・・処女を欲しいと思った。
亜貴の「初めての男」になりたかった。
・・・亜貴を完全に支配する。
完全にボクのものにする。
身体にボクだけの刻印を刻む。
まだ、誰も刻んでいない、初めての刻印を亜貴の身体に刻み込む。
今日、亜貴の「処女」をもらう。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。