「崩壊の街」ボクは不倫に落ちた。

ポンポコポーン

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「ウンザリだった」深夜の動物園。



仕事部屋。

PCで図面を描いていた。
時計は20時を過ぎている。

いつもどおり、真っ暗な部屋に帰ってきた。
いつもどおり、お嫁さんは眠っていた。

マウスの手を止め携帯を開く。メールを確認する。・・・・着信音はしていない。・・・だからメールはない・・・・わかってる・・・それでも確認してしまう・・・・
最後にメールが来たのは18時前だった。それに返事をしてからメールは来ない。

今頃は、一家団欒の夕食の時間だろう。

絶対に亜貴がメールをできない時間帯だ・・・



窓から夜の公園が見える。

シトシトと窓を伝わる雨垂れ。


部屋を出た。
そっと寝室の扉を開けて覗く。

「鼾」をかいている。

大きな「鼾」だった。
離れている仕事部屋からでも聞こえた。

お嫁さんが心療内科を受診して、薬のせいもあるんだろう太ってしまった。・・・そのため首周りの肉が弛むのか・・・体重が増えるに従って「鼾」が酷くなった。

寝る姿勢にもよるんだろうけど、ツボにハマった時の「鼾」は轟音だった。
とても女の人の「鼾」じゃない。
オヤジたちの宴会終わりの「鼾」そのままだった。
年々酷くなっていた。


・・・・・起きそうにはない・・・


今日は、ひとりで夕食だ。
いや、毎晩のようにひとりで夕食だ。


・・・・それでいい・・・・


特に、今日は・・・

今日は起きてこない方がいい・・・・



風呂から出て食事の準備だ。・・・今日は、スパゲティにする。
油汚れの固まったレンジ台に鍋を乗せた。
乾麺を茹でて、レトルトのミートソースをかける。


ペットボトル、新聞、チラシ広告、スナック菓子の袋、国民年金、国民健康保険、住民税の督促状・・・・乱雑に散らかった座卓の上。

強引に手で押し広げて皿を置く場所をつくる。・・・・いくつか、何かの落ちる音がした。

・・・・座卓の周り・・・床には、そうやって押し広げられ、雪崩のように落ちていった物たちが埃を被っていた。


テレビをつけてミートソースを食べ始める。
画面は、録り溜めていたアクション映画だ。ボリュームを最小限に絞って字幕で観た。


・・・・食べながら携帯を開く。
もちろん、メールは来ていない・・・


食べ終えて皿を洗った。

ソファーに寝転び映画を観続けた。


・・・画面にエンドロールが流れる。


結局・・・メールが来ることはなかった・・・・


テレビを消した。
そのまま横になって部屋の電気を消した。

・・・・最近は、ここで・・・ソファーで寝ていた。
お嫁さんの「鼾」がうるさかったからだ。・・・とても隣で寝られるような大きさじゃなかった。


・・・・もう、お嫁さんに触りたくなくなっていた。


真っ暗なリビング。
寝室からのお嫁さんの「鼾」が響いた。


・・・・深夜の動物園みたいだな・・・・


部屋干しされた洗濯物。
その下、周りには乾いた洗濯物が山になっていた。



・・・・人生。
全てにウンザリしていた・・・・



「愛してる・・・」


亜貴の気持ちはわかっている。
充分に確認した。

気が狂わんばかりのSEXをした。
狂ったように求め合った。

お互いが同じ気持ちだと確認しあった。
わかっている・・・信じている。

気持ちを疑ってはいない。


・・・・それでも不安だった。
メールのできない夜が不安だった。嫌だった。


亜貴の奥さんとしての顔を知らない。

どんな顔で家にいるのか・・・どんな顔をして旦那さんと話しているのか・・・
・・・笑顔を向けているのか・・・ボクの愛した笑顔・・・その同じ笑顔を旦那さんにも向けているのか・・・

亜貴が晩御飯を作り・・・・笑顔を向けて旦那さんに給仕をしているのか。

・・・・考えれば身体が疼く・・・渇く・・・すぐに亜貴を攫って掻き抱きたい・・・嫉妬に身体が身悶える。

頭を掻きむしった・・・・


泥沼に沈むように不快な眠りに落ちていく・・・・

毎晩のことだった。



・・・・真っ暗な中で目覚めた。


動物園の「鼾」が響いていた。


テレビの脇の時計は4時を少し過ぎている。・・・・窓の外は漆黒だ。・・・雨が降っている。

起き上がって電気も点けずに風呂場に向かった。


シャワーを浴びて髭を剃る・・・・念入りにだ。

いつもの服装・・・・いつもの・・・代わり映えのしない、客先に向かう服装に着替えて、髪をセットする。


カバンを持って通路を歩く。
・・・静かに・・・・灯りすら点けずに進んだ。


部屋だけじゃなかった。

同じだった。

人間の動く範囲・・・歩く範囲だけが「路」となっていて、その脇には、物が、埃が溜まっていた。

ここに越してきてから、掃除機をかけた記憶はない。
過ごした日数分だけの埃が溜まっていた。

読み終わった新聞・・・雑誌・・・数々のゴミと言っていいだろう代物が、埃を被って鎮座していた。


・・・・その中。動物園の「鼾」が響いていた。


マンションを出た。
静かに・・・音がしないように扉を閉めた。鍵をかけた。



東京駅。朝6時。
東北新幹線の乗り場に乗客は少ない。

原発絡みだろうビジネスマンが数人だった。

観光で東北へ行こうという人間には出会わない。


新幹線に乗り込んだ。窓際の席。
乗客は、4人で固まっているビジネスマンのみ。

・・・動き出した。


窓の景色が地下から地表に変わっていく・・・・雨。紫陽花が綺麗だ。
陽は昇っている・・・それでも梅雨空だ。窓に雨粒が流れた。


東北へ向かう。

亜貴に会いに行く。


亜貴をこんなにも愛している。・・・・亜貴に愛されている。

・・・・なのに、何故にボクが亜貴の作る晩御飯を食べられないのか。

何故に、亜貴と一緒に眠ることができないのか。
何故に、亜貴と一緒に目覚めることができないのか。



旦那さんの眼前で亜貴を抱きたい。

旦那の目の前。
犯すように亜貴を貫きたかった。


亜貴は、こんな鳴き声を上げて逝くんだぜ・・・アンタは見たことあるか・・・?

アンタは、亜貴をここまで逝かせたことがあるか?・・・ないだろう?・・・アンタの負けなんだよ。

そんな・・・絶対にできはしない妄想を抱く。


・・・・しかし・・・本心だった。

亜貴の顔を旦那に向けさせ・・・掲げさせた尻から膣口を貫きたかった。

亜貴を上へとし、跨らせて腰を振らせたかった。
髪を掴み、あくまでも旦那にその顔を見せつけながら・・・・ネチャネチャと卑猥な音をさせながら果てさせる。

果てても果てても逝かせ続ける。

雌獣のように鳴かせ続ける。


旦那に亜貴を諦めさせたかった。



・・・確かなものが欲しかった。

亜貴がボクのものだと、旦那さんのものではないという、絶対的に確かなものが欲しかった・・・・



新幹線・白石蔵王駅に降りた。

ロータリー。
すでに亜貴の車が停まっている。

近づくとスライドドアが開いた。
カバンを乗せて、助手席に乗り込む。

運転席に満面の笑みの亜貴が座っていた。


車が走り出す。



・・・・処女を欲しいと思った。
亜貴の「初めての男」になりたかった。


・・・亜貴を完全に支配する。

完全にボクのものにする。
身体にボクだけの刻印を刻む。

まだ、誰も刻んでいない、初めての刻印を亜貴の身体に刻み込む。



今日、亜貴の「処女」をもらう。



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