不思議体験・外伝。

ポンポコポーン

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「異例の異例」鉄壁のディフェンス。




体育館は広い。

学校の体育館が4個入るって感じか。


ボクたちと同じように、バスケットボールで走り回っているグループもいる。

会社には、こんな、本格部活とは違ったレクレーションクラブみたいなのがいっぱいあるのかもしれないな。



集まってたのは、男20人、女の人が5人くらいだった。


男たちが半分づつにわかれてサッカーが始まった。・・・・てきとーに半分。ボクは桐原先輩のチームに入れられた。

もう1チームのリーダーが、斉藤先輩といった。


桐原先輩、斉藤先輩が、この集まりのリーダーのようだ。

・・・・共に30歳ちょうどってとこか・・・・それでも、年齢は上の方だ。

他は25、6歳ってとこがメインじゃなかろうか。


「課」は横断してるとはいうものの、ほとんどが桐原先輩のチームらしい。・・・「部下」ってことだな。



桐原先輩たちが攻め込む・・・・シュート・・・の前でボールを奪われた。

形勢逆転。
斉藤先輩の攻撃に移る。



ボクはゴール前にいた。


ディフェンスとしてゴール前を守っていた。


斉藤さんが中心となって、パスを回しながら攻め込んでくる・・・・・


シュート!!


・・・・を、撃つ前にボクがスライディングでボールをカットした。



「おおぉーー!!」


桐原さん、味方から歓声が上がる。


同時に嬌声。


明菜さんだ。・・・・だけじゃない。隣の先輩女子も。・・・・今日子先輩だ。

いつも明菜さんと一緒にいる。

なんども一緒にご飯を食べたことがある。


他のオネーサンたちもヤンヤと喝采をおくってくれる。

「アシ」として使っていた弟の、意外な一面を見ましたって驚きの顔だ。



桐原先輩。

斉藤先輩。


何度も攻守が入れ替わって走り回っている。・・・・みんなが楽しそうに走り回っている。

・・・・そして女の人たちの応援の声が響く。



ファミレス。

サッカーが終わって、みんなでご飯を食べる。



「サッカーやってたの?」


隣で桐原先輩が言う。

サッカー中、ずーーっと声を掛け合っていたので、すっかり打ち解けていた。


「サッカーはやってなかったですけど・・・・」



ボクらの時代は、子供たちの遊びといえば、


野球。

サッカー。


だった。


サッカーは、・・・プロ「Jリーグ」が始まるのは大人になってからだったけど、

すでに「キャプテン翼」は連載されていた。

ボクたちサッカー小僧のバイブルだった。


学校では、

野球、サッカー、両方のチームがあった。


野球では、ずーーーっとピッチャーだった。

・・・んで、サッカーでは「ディフェンス」だった。


オフェンスは、
攻撃は、
みんながやりたがる。

サッカーの「華」だしな・・・ドリブルして敵陣に切り込むのはかっこいい。

でも、ボクは、

そうやって攻め込んでくる相手ストライカーからボールをカットする。・・・そんな、ゴールを守るディフェンスに、面白さ、楽しさを感じていた。


ボールを持って、ドリブルしてのストライカーよりも、
ボールを持たずに、相手ストライカーに一直線に向かっていける役回りの方が「足の速さ」が際立つ。


ディフェンスの方が、ボクの、「単純な足の速さ」が生かせる。



「鉄壁のディフェンス」って呼ばれてたんですよ。


自慢気に言った。
・・・・じっさい、小学生の時は、そう呼ばれていた。


桐原先輩がハッハッハと大笑いだ。


久しぶりに健康的な汗を流した。

・・・・みんなに褒めてもらえた。・・・・先輩女子たちにも「やるじゃん」って褒めてもらえた。

さらには、桐原さんをはじめとして、みんなが車好きで、話が尽きなかった。


久しぶりの、楽しい高揚感があった。


要は、居心地が良かったんだ。



ボクは桐原先輩と、ずっと話していた。

・・・いや、みんなとだった。


斉藤先輩とも・・・・その他の先輩たちとも、・・・・ずっと前から知っていたような・・・

なんだか、高校の先輩後輩のような居心地の良さがあった。



楽しい休日が終わった。



また、月曜日が始まる・・・・


まったく「問題集」の日々だった。



単発で頼まれた「図面の清書」も全くなくなってしまった・・・・


「透明人間の術」で毎日を凌ぐ・・・


「問題集」は3週目に入っていた。

来る日も来る日も、

「仕事」をしてるような顔をして、

毎日、毎日、同じ問題をやっていた。・・・・要は「サボってる」ってことだ。


係長は何も言わない。

なんだか、ボクの存在なんか忘れてるんじゃないか・・・・そんな感じだった。



・・・・針の筵の日々だった。


「サボってる」・・・・そんな罪悪感がある。


ただですら、体調が悪い。


・・・・なんか、「追い詰められてる」ってか・・・

なんだか胃がキリキリする・・・


誰も話しかけてこない。・・・・明菜さん以外は。



・・・・ボクって・・・・この会社にいらない人間なんじゃないかな・・・・?


どんどんと落ち込むってか・・・

苦しくなっていく・・・・



・・・・それでも、楽しみもできた。

サッカーだ。

サッカーだけじゃなく、
桐原先輩たちが遊びにも連れて行ってくれた。

ドライブにも行った。

生まれて初めての「キャンプ」にも連れて行ってもらった。



ボクのスカイラインには、いつも明菜さんと今日子さんが乗った。


桐原先輩の彼女さんは「秘書課」だった。役員秘書・・・・すっごい綺麗な人だ・・・


桐原先輩のグループは「総務女子」たちと仲が良かった。・・・・そして、やっぱり異質だった。


会社内では、

みんなが「総務女子」たちとは一線を引いていた・・・・一線を引くってか・・・どう接していいかわからないって感じ。


会社は・・・ボクもそうだけど、みんなが「地方出身者」だ。

そんなこともあって、全体的に「シャイ」というか・・・大人しいというか・・・


女の人に気楽に声をかけるって感じの人が少なかった。


そんな中で、桐原グループだけが異質だった。


毎週のように「総務女子」たちと遊びに行っていた。・・・・そこにボクも呼ばれるようになっていた。

なんだか、大学生のナンパグループのような感じ。

当然に、会社内では「面白くない存在」なんだろうとは思う。



・・・・しかし、桐原先輩には「実力」があった。

まだ、30歳そこそこにもかかわらずアメリカの会社との合弁プロジェクトを任されていた。・・・これは、この「年功序列」旧態然としたゼネコンでは異例のことだった。


・・・・なんでもその分野が、ちょっと特殊らしく・・・

桐原先輩にはアメリカでの留学経験があった。

そんなことからの抜擢らしかった。


上司たちも桐原先輩には一目置いているってことらしい。



・・・・そして、そんな留学経験から、

この「純日本的」な会社のカルチャーからは異質な存在だったんだと思う。


日本人的「浪花節」的、「体育会」的な感じじゃないってか・・・

スマートっていうか・・・カッコイイってか・・・


何より、圧倒的な「明るさ」があった。




真面目な顔して、仕事をしてるフリで問題集と格闘していた。



「ちょっといいかね?」


机の横。課長が立っていた。

7・3分けの髪型。

黒ぶちの眼鏡。


ボクの直属の上司は係長だ。

課長とはほとんど話したことがない。・・・・ボクたちにとっては「課長」といえば「雲の上」って存在だった。



・・・・ボクは、小会議室に連れて行かれた。




「カズくんの机はここだから」


明菜さんといつも一緒にいる今日子さん。
笑いながら説明される。


ボクは机に「備品一式」の段ボールを置いた。


「課」の、一番後ろの机だった。

ボクの机、そのみっつまえが「桐原先輩」の机だった。


ボクは「桐原チーム」に編入させられた。


「青天の霹靂」


「課」を横断しての人事移動だった。



桐原先輩がいる。

斉藤先輩がいる。

・・・・一緒にサッカーをやった「車好き」の先輩たちが、みんな笑って迎えてくれた。



「これから頼むぜ、鉄壁のディフェンスくん」



ハイ!

頑張ります!!

よろしくお願いします!!


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