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「九死に一生」見えた真実。
・・・・アパートに帰ってきた。
ヒモを引っ張って電気を点けた。
チカチカチカ・・・・
何回か点滅して部屋の照明が点いた。
リモコンボタンを押す。壁面を占拠してるSONYの大型テレビが点く。
ちょうど、「プロ野球ニュース」をやってる。
・・・・今日の阪神タイガースはどうかいな・・っと・・・・?
座り込んで・・・煙草に火を点けた。
深く煙を吸い込んで吐き出す・・・・
脳がジーン・・・と痺れる感覚に陥る。
・・・・今日も1日が終わった。
疲労感。・・・そして充実感。
・・・・今日は、まだ「日付」が変わる前に・・・・深夜12時を回る前に帰ってこられた。
連日の残業だった。
異例の異例。
「課」を超えて桐原グループに移動させられた・・・・させてもらった。
しかし、
それは、
双方にとって「渡りに船」って状況だったんだ。
ボクは、
配属された現場で、
「使えない」
そうレッテルを貼られた。
本社に戻されたボクは行き場を失っていた。
「課」では、
ボクを持て余していた。
・・・・このまま「クビ」を言い渡されるんじゃないかと不安に思っていた。
じっさい、
ボクの「依願退職」を待ってる感じが係長から伝わってきていた。
・・・・で、
桐原先輩のほうでは、
桐原先輩のチームは、とんでもなく忙しかった。・・・・しかし、人員の補充がされない。
上司に頼んであるものの、補充がなかなかされない。
ひとつには、桐原先輩の業務が「特殊」だったことだ。
アメリカ企業との合弁事業。
「やりたい」と手を上げる人間はいなかった。
みんな、今までやってきた業務内容からちょいとズレてしまう、新規事業には二の足を踏んでしまうってことだった。
さらに、
・・・・いや、
しかし、最大の要因、
最大の「人員補充」が滞った理由は、
人員補充を頼んでいたのは、直属の上司だ。・・・「係長」ってな階級。
桐原先輩は「チーム長」・・・・「主任」って肩書きだった。
「人員補充」
稟議としては・・・・経営陣には、桐原先輩は話しを通していた。
しかし、
現場、直属、直上の上司、
「係長」
ってヤツには、それが「面白くなかった」
係長クラスってな、凡人の・・・・ただ、「勤続年数」でなれるだけの上司にしてみれば、
桐原先輩が「伸びていく」ことは、
会社の利益にはなっても、
自分の利益にはならない。・・・・桐原先輩に「越される」ことを意味するからだ。
そんなことからのサポタージュもあって、桐原先輩の人員補充は滞ってしまっていた。
・・・・つくづく、
日本人ってやつは・・・・
自らの地位を上げるに当たって、自らの「功績」によって為そうとする人間は少ない。
他人を蹴落とす、他人の失墜を「待つ」・・・「狙う」ことによって、自らの地位を上げよう・・・・あるいは安泰を図ろうとする人間のなんと多いことか。
日本ってのは「減点法」の世の中だからな。
「加点」ってのがない。
「100点満点」から、
失敗したら、
ミスしたら「減点」していくってだけの社会。
んで、100の功績も、1の失敗があれば、
それを叩いて、そいつの人生を終わりにしてしまう。
「それみたことか!!」
「待ってました!!」
とばかりに叩く。
・・・・そして、溺れた犬を眺めて喜ぶ。
そして、
日本は、
「敗者復活」ってのが、絶対にできないようになっている。
一度「溺れれば」二度と浮かび上がれないようにできている。・・・・だからこそ、なおさらに失敗を恐れるんだけどな。
「減点法」の社会。
「この考えはいい!!」
「このアイデアは素晴らしい!!」
そんな「加点」は一切ない。
「ここをこうしてみれば、さらにいいんじゃないか!!」
そんなノリなんかにはなりはしない。
何か「特別」をやれば、
何か「特別」を考えれば、
「和を乱す」的な減点が与えられる・笑。
求められた答え以外を回答すれば、
すぐさま「減点」が待っている・笑。
・・・・たとえ、それが「画期的な」発明であっても、
「和を乱す罪」
で「減点」だ・笑。
日本での、
栄達。
出世の方法は、
上司。上役。
そいつらに、媚び諂い。
「御注進!!」
と言う名の、上司、上役にとっての耳障りの良い「誹謗中傷」を進言することによって、他人を蹴落とし、自らの地位を押し上げる。
そして、
「何もしないこと」
・・・・世間評価が「減点法」だからな。しかも「加点」はない。・・・ってことは「何もしない」「現状維持」ってのが一番得をするって仕組みなわけだ・笑。
それが、この国での「出世」の方法だ。
それは、
日本の教育。
「減点法」の賜物だ。
おかげで、
他人の足を引っ張ることだけに長けたクソ人材が・・・・クソサラリーマンばかりが、日本に蔓延ってしまう。
・・・・そりゃぁ、
若者たちの「やる気」なんぞ出るはずがない。
それが、今の日本の体たらくを生んでるんだと思う。
日本に「GAFA」ってやつが出現しないのを嘆く声がよく聞かれる。
そんなもの、日本人の「国民性」だよ。
今まで「減点法」教育をやってきた結果だよ。
そもそも「GAFA」の種・・・・新しい息吹の芽を摘んできたのが日本という国だ。
日本人は「ホリエモン」を潰した。
ホリエモンは社長として実刑を受けた。
同じ犯罪を犯した大企業はお咎めナシなのにだ。
同じ犯罪でも、大企業なら「罪」にならない・・・せいぜい、「法人」として罪を問われるだけだ。
とっころが、ホリエモンには、代表取締役「個人」として罪を問うた・・・・さらには実刑に処した。
こうやって「GAFA」になる芽を潰した。
このやりかたが「日本」って国のやり方だ。
見事な底意地の悪いやり方だ。
「おかしいじゃないか!!」
そう声を上げる大人たちはいなかった。
・・・・最近になって言うヤツが出てきたけどな・笑。
リアルタイムで声を上げる知識人、大人はいなかった。
これが、日本社会のメンタリティーだ。
「横並び」じゃないといけない社会。
「異なったこと」
「天才」
そんな類を、この国は最も嫌う。
排除する。
「出る杭」は叩く。撃つ。潰す。
大人たちが躍起になって、大企業、国家ぐるみで「若い芽」の段階で潰していく。・・・自分たちの「利権」を守るためにだ。
でんつーなんかやりたい放題だろ?笑。
ずーーーっとやりたい放題を守るためには「若い芽」は邪魔なんだよ・笑。
そのくせ「個性!個性!」と教育現場で宣う・笑。
本来「個性」なんてものは、
生まれ持ったものだ。
それを「お勉強」で育てようってのが、そもそもナンセンスな話だ・笑。・・・・そのナンセンス加減が日本らしいんだけどな・笑。
自分の頭で考えず、
なんにでも「教科書」ってやつを求める。
「教科書」ってやつがないと何もできない。
「頭脳流出」
今の日本はその只中にある。
「能力」のある人材は、どんどんと海外に出て行ってしまっている。・・・・それは必然だって気がする。
話は、だいぶ逸れちゃったけど・・・・
・・・・いずれにしろ、
桐原先輩にしてみれば、
喉から手が出るほど「人員が欲しかった」
人員補充はなされない。
業務は増えていく一方。・・・・さらには、事業の将来性の有望は明白・・・・なのに待てど暮らせど人員の補充はない・・・
もう「猫の手を借りたいほどに」人手が欲しかった。
・・・・そんなときに、ひょんなことから目の前に現れたのが、ボク。
「使えない新入社員」
だったってわけだ。
・・・・しかし、
話してみれば、
サッカーをやったりしてみれば、
とても「使えないって」ってほどの人間には思えない。
「猫の手を借りたいほど忙しい」
どう転んでも「猫の手」よりは、使えそうだ・笑。
サッサと不良債権を処分したいボクの「課」
猫の手も借りたい桐原先輩。・・・・さらには、それに手を貸したくないその上司。
そんな其々の思惑から、
「課」をまたいでの人事移動ができあがったんだった。
桐原先輩は、優しかった。
とにかく「優しかった」
ボクは、低偏差値の工業高校卒だ。
しかも、
仕事で使う理論は、高校で習っていない理論だった・・・・もとより、アメリカでの最新理論だった。
何度も何度も間違える・・・何度も何度も失敗するボク。
そんなボクに、
桐原先輩は、何度も何度も、懇切丁寧に教えてくれた。
決して怒らない。
決してバカにしない。
歳の離れた「兄貴」・・・・
いや、
チーム全体が「兄弟」のようだった。
桐原先輩、斉藤先輩を長兄として、・・・・ボクを「末っ子」の「末っ子」としてチームには兄弟のような絆があった。
みんなが、バカな「末っ子」を可愛がってくれた。
・・・・仕事だけじゃない。
休みの日には遊びにまで連れて行ってくれた。
会社にいる時にはジュースを奢ってくれて・・・・ご飯も奢ってくれた。社員食堂だったけどさ・笑。
それでも、
給料の安い新入社員にとって、それが、どれだけ助かったことか。
そして、どれだけ嬉しかったことか。
・・・・みんな、「地方出身者」だった。
「東京」のひとつひとつを教えてくれたんだった。
桐原チームは忙しかった・・・・それも「とてつもなく」といったレベルだった。
毎月の残業は50時間を下回ることはない。
通常業務で100時間残業。・・・・繁忙期となれば、「残業300時間」という、労働基準局が怒り狂って乗り込んでくるレベルになった。
「残業300時間」・・・って 笑。
「残業」というレベルを超えている・笑。
もはや、
「会社に住んでる」
そんな状態だった・笑。
朝御飯。昼御飯。晩御飯・・・3食は当たり前として夜食まで・笑。
全ての食事を会社でとり、
2、3時間の仮眠をとりながら図面を仕上げていく。
そんな状態だ。
「残業300時間」
もちろん満額が支払われるわけじゃない。「足切り」はあった。
なんたって、「残業300時間」は、違法だ・笑。
上場ゼネコンが、そんな残業を認めるわけにはいかない。・・・認めたら労基違反で訴えられてしまう。
しかし、そんな生活のおかげで、
あっさりと「ひとり暮らし」が実現してしまった。
なんたって、給料は残業代が恒常化して2倍以上になった・笑。
ここは、会社から歩いて10分ほどの、2階建ての、むかしっからあるモルタルアパートだった。
間取りは「2K」
6畳が2部屋に3畳ほどのキッチンがついていた。
風呂トイレが別。
高校時代から「ひとり暮らし」だった。
ボクにとっては、「寮暮らし」・・・・しかも「ふたり部屋」というのは拷問に近かった。
いやぁ・・・
「寮暮らし」ってホント大変なんだよな。
「洗濯」ひとつも大変。
寮には洗濯機がいくつも並んでいる。いっぱいある。・・・だからといって寮生一人一人に与えられるほどあるわけじゃない。
おかげで、「休みの日」には、洗濯の順番待ちができる。
洗濯が終わっているにもかかわらず、
いつまでたっても取りに来ないヤツもいる。
・・・・それに、
まったくプライバシーのない環境・・・・
これが一番困ったよなぁ・・・・
寮は「ふたり部屋」だった。
個室じゃない。・・・・「ひとりっきり」になる環境がない。
若い、けんこーな男の子が「オナニー」する場所もない・笑。
土日の早朝・・・・個室トイレは満室になる・笑。
カラカラカラ・・・・
朝6時とか、
早朝に、
トイレットペーパーを回す音が響く・笑。
トイレが「イカ」臭さで充満する・笑。
マジだよ・笑。
でも、若い健康体の男の子。
女の人と違って、
男の身体ってのは、「射精」しないとダメなようにできているからな・笑。
自分でオナニーしなくても、
「夢精」ってのまで脳内で起こして射精するようにできている。
・・・・「射精」しないと・・・
体内に精液が溜まってしまう・・・いってみれば「老廃物」が蓄積されるってな深刻な病気になってしまう。
・・・ここが、「男」と「女」の性に関しての身体の違いだ。
男の身体は「射精」しないと病気にまでなるようにできている。・・・・それを、女の人に「気持ち悪い」って言われてしまうわけだ・笑。
精神的なもんじゃない。
身体の構造上の「物理的」なものなんだけどなぁ・・・・
「男」と「女」の深い溝だ。
・・・・集団生活は、
高校の合宿のように「楽しい」と呼べるものじゃなく、
ボクにとっては、
「刑務所」のように、んとに、んとに拷問の世界だった。
人間付き合いが、どーにも苦手だ。
寮の人間とも、決して上手くはいかなかった。
ボクは、桐原先輩と出会えて助かった。
命の恩人だと言ってよかった。
桐原先輩と出会えたことによって、会社からの「クビ」を免れ、・・・いや、それどころか、
毎日、充実した「仕事人生」を送れるようになっていた。
・・・だけじゃなく、「ひとり暮らし」までも手に入れた。
快適なひとり暮らし。
好きな時間に風呂に入り、
好きな時間に音楽を聴き、
好きな時間に映画が観られる環境を手に入れた。
人生なんて、
けっきょく、
「人間関係」で決まるものなのかもしれないな・・・
いつ、
どこで、
誰と出会うか。
それで人生ってやつは決まっていくのかもしれない。
桐原グループに入って、
全ての状況が見えてきていた。
桐原先輩は経営陣に近い。・・・・さらには、彼女さんは役員秘書だ。
・・・・ボクが、
「本社に戻された」
その理由。
実にクソつまらないものだった。
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