不思議体験・外伝。

ポンポコポーン

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「安堵」慰謝料のご相伴。




11月があっという間に終わった。

12月に入り、

年内までのスケジュールをこなすため、

残業、残業・・・・また残業の日々を送った。


しかし、そのおかげで、正月休みはフルでとることができた。


正月明けも、忙しく・・・・


気がつけば、明菜んさんに会っていない。・・・・あの病院で会ったのが最後だ。・・・・今日子さんにも会っていなかった。



東京の東京・・・・「赤坂」


・・・・ボクの住んでいた田舎町にすら、その名が轟いていた都会の中の都会の場所。


ここには、東京郊外とは全く違った東京があった・・・・ってか、

ボクが住んでる「郊外」ってのが、

一般認識では「東京じゃない」って場所なんだろうけど・笑。



高層ビルが立ち並ぶ。・・・・立ち並ぶなんてもんじゃない。高層ビルしかない。

空が見えないほどに、右にも左にも・・・壁のように高層ビルが立ち並ぶ。・・・・その隙間から見える空は真っ暗だ・・・・今にも降りだしてきそうだ。


キラキラしたイルミネーションに包まれた道路。


外灯すらがお洒落だ。

道路は、外灯、ビルの明かりでヘッドライトがいらないくらいだ。


その都会の中の都会・・・・夕闇がせまる「赤坂」の街並みを、ボクはスカイラインを走らせていた。


1月の渋滞。

さらには、今日は土曜日だ。渋滞が激しい。



田舎に帰れば、羨望の眼差しを向けられる、「英雄」にすらなれる、若者憧れの愛車・スカイラインも、

この場所では、

ただの「車」・・・・どころか、

型落ちの中古など、「ポンコツ」と呼ばれる部類に入ってしまう。



「赤坂」

街中を走っているのは・・・・ベンツ・・・BMW・・・キャデラック・・・ポルシェ・・・・そんな、世界の高級車ばかりだ。

初めてランボルギーニが走っている姿を見た。


・・・・もう、ここは、「外国」だ。

日本じゃない。


じっさい、このあたりは、国会、皇居からも近い。

外国大使館も多い。


大使館車両を意味するブルーのナンバープレートをつけたベンツを何台も見た。


全くの場違い、

全くの気おくれ。


おそるおそる、その路上を中古のスカイラインを走らせる。



いつもと違った恰好だった。

服装を指定されていた。


就職祝いで買ってもらった一張羅のスーツ。・・・・入社式にしか着ていない。

そいつを着ての運転だ。


・・・・どうにも、ネクタイ・・・この首が締まる感覚が嫌だ・・・

ってことで、スーツ姿にネクタイは外していた。



おそるおそる・・・キョロキョロしながら、田舎者丸出しの態で赤坂の道を走らせる・・・・・



あれか・・・?



一際目立つ建物・・・・テレビでもよく見る、真っ白な高層建築が見えてきた。


「IN」 書かれた場所から地下駐車場へのスロープに入って行く。


ベンツ・・・BMW・・・・ロールスロイスすらが駐車されてる。

国産車なら、・・・・セルシオ、シーマ・・・日本を代表する国産車が並んでいた。


空いてる場所に、

申し訳なさ・・・なんだか、卑屈になりながらスカイラインを停めた。


ルームミラーを見ながらネクタイを締める。



エレベーターで最上階に昇っていく・・・・


・・・・は、速い・・・


飛行機に乗った時のような鼓膜への違和感を感じる。


・・・・流れるように到着・・・・音もなく扉が開いた。



来るものを圧倒するレストランの入口。


入っていけば、蝶ネクタイの黒服が笑顔で迎えてくれた。


名前を告げる。
頷いて席へと案内される・・・・



目の前に全面ガラス・・・・都会の大パノラマが飛び込んでくる。

白、グレー・・・ガラス張り・・・高層ビル群の中、
全く違う暖色の色彩を放つ東京タワーが見えた。


大都会・東京の迫力に圧倒される。


案内された窓際のテーブル。


・・・・明菜さんが座っていた。


スーツ姿。・・・・パンツルック。

気おくれせず・・・「東京の女」然として座っていた。

ボクを見て、

いつもの「姉」の笑顔を見せる。

椅子を引いてもらって席に着いた。



足はもう大丈夫なの・・・?


「おかげさまでね」


もう、ギブスが取れてから1ヶ月以上。

走るとかは無理だとしても、普通に歩く分には問題ない。


料理が運ばれてくる。



・・・・ひ、ひぇぇ~~~~~う・・・旨ぇぇ・・・・



伊勢エビの活造りにやられてしまう・・・・

前菜のサラダ・・・その中の伊勢エビも美味しかったけれど・・・

さすがに、「活造り」は凄い。


言葉を無くして・・・無言で箸を、口を動かした・・・・


明菜さんも同じだ。

同じように、ふたりで、無言で伊勢エビを堪能する。



ここは、高層ホテルの中にある、海老料理の専門店だ。

テレビCMが散々にうたれていた・・・・もちろん「赤坂」、値段は安くはない・・・


明菜さんとテレビで見ていて・・・いつか行ってみたいと話していたんだった。


念願かなって連れてこられた。


入院時の世話の「御礼」ってことだった。・・・・確かに、定時で上がった日は、毎日のように顔を出した。

そして、・・・買い出し・・・


あの雑誌を買ってこい・・・そんな雑用もこなしていた。



・・・・でも、「御礼」っていうには、高すぎるじゃん??



入院の御礼にしては高価すぎだ。



「いいんだよ。
慰謝料・・・思ったより貰えたんだ」


明菜さんが笑う。

事故は、加害者側・・・・軽自動車側の100%過失で決着がついた。


交通事故で「100%の過失」というのはなかなかない。


相手の軽自動車は、高齢者、さらには、一時停止を無視して、明菜さんの目の前に飛び出していた。

目の前。

明菜さんには、全く、避ける術がなかった。


さらには、明菜さんが、地元を代表する巨大ゼネコンの社員だったことも大きかったらしい。

地域は、このゼネコンの税収で成り立っている・・・そう言われるほどの地域だ。


相手の保険・・・その担当者からも「忖度」があったってことなんだろう。

出来うる限りの最大限の賠償がされたらしい。

保険屋の担当にしても、「自分の金」ってわけじゃない。

明菜さんが、若い、美人のお姉さんだったこともあって、最大限の慰謝料が払われたらしい。


そうなんだ・・・・

だったら、

まぁ、遠慮なく。

ってことで、心置きなく頂きましょう。



・・・・しかし・・・

聞いておきたいことがある・・・・



光を散りばめた高層ビル群。・・・・その下には、小さな光の粒が動いていた・・・・道路を走る車の列だ。


いくつかの料理が出された。

胃袋は落ち着いてきた。

圧倒されたロケーションにも慣れてきた。



・・・・ボクには気になっていたことがあった。



入院していた時、
明菜さんが「検査漬け」になっていたことだ。


「あらゆる」といっていいほどの検査を受けていた。・・・・それも、同じ検査を何回も・・・・さらには、点滴・・・

ボクが、いつ顔を出しても、

明菜さんの腕には点滴の針が刺さっていた。


交通事故・・・そこからの精密検査によって、


「何か」


重大な「何か」

重大な「病気」が発見されたんじゃないか・・・・そんなふうに思っていた。

・・・・まさか、病院のベッドで、そんなことは聞けないしな・・・・



「は・・あぁ・・・?」


明菜さんが吹き出した。


「そんなこと心配してたの・・・・???笑」


うんうん・・・・ボクが頷く。

真面目な、心配の顔を向けた。


「交通事故だからね、

交通事故って
健康保険が利かないからね・・・・

交通事故ってのは100%実費請求・・・・国を介する必要がないんだよ。
実費を、当人にそのまま請求できる。

だから、
病院にとっては「荒稼ぎ」ができるんだよ・笑。

それで、
あれもこれもって・・・てんこ盛りの検査を入れてくるのよ」



明菜さんが笑って説明してくれた。


交通事故ってのは、そーゆーものらしい。

どうせ、支払いは加害者加入の自動車保険が負担する・・・・しかも、
まぁ、絶対に「満額」払ってくれる。

・・・・ちなみに加害者は高齢者のジイサンだった。・・・ってことで、保険も、「良いヤツ」に入っていたらしく、・・・・しかも、明菜さんは、地元の優良企業、巨大ゼネコンの社員だ。

病院も、遠慮ナシで、
安心して「検査漬け」にできるってことらしい・笑。


「検査」・・・・若い女の子の命がかかっている。

「念のための検査」

そう言われれば、保険会社は支払わないわけにはいかない。


そんなわけで、

交通事故ってのは、
病院にとっては

とても、

とても、

とても「美味しい患者」ってことらしい・笑。



なんだ・・・・そーーーゆーーーことだったのかぁ・・・
なーーーんだ・・・・なーーーんだ・・・そーーーだったのかーーーーー

・・・なーーーんだ・・・

すっごく、すっごく、すっごく心配してたんだ・・・


・・・・はぁ・・・良かったぁ~~~~~



「・・・・そんなこと心配してくれてたの???」


真顔で言われた。

・・・・まさか、ボクが、そんな深慮、不安を募らせていたとは思いもしなかった。


「嬉しいなぁ・・・・カズくんって、ほんっと可愛いよね・・・・」


明菜さんが姉の顔で笑う。



明菜さんは、ワインでいい色になっている。・・・・綺麗な桜色だ。



「カズくん・・・・飲んじゃいなよ・・・・飲めないわけじゃないんでしょ・・・・?」



ボクは、ジンジャエールを飲んでいた。



ボクは、酒を飲まない。


子供の頃、酒乱の父を見続けてきた・・・・父の酒乱から、ウチの家は崩壊していった・・・・


だから、

酒というものに対しての「罪悪感」が強い。


普段は全く飲まない。・・・・とはいえ「飲めない」「拒絶反応」ってほどじゃやない。


結婚式、・・・葬儀・・・冠婚葬祭には口をつける。

要は、
生きていく上での必要最小限しか飲まないってことだった。



・・・・いや、・・・でも・・・車だし・・・



「いいよ、明日帰れば・・・・今日は、とことん飲む気だったから、部屋とっといたんだ・・・
門限なんか気にしたくないし・・・

こんな贅沢して電車で・・・寮に帰るなんて嫌だしね・・・」



このホテルに部屋をとってある・・・・この高層ホテルに???・・・ここ、いくらかかるんだ???



「いいんだよ。慰謝料なんだから、あぶくゼニなんだから。
パーーーーっと使っちゃえばいいんだよ。

駐車料金もホテル代に込なんだから心配しなさんな」


明菜さんが笑う。


見透かされたように言われた。


・・・・そうだ。

こんな・・・「赤坂」・・・東京の東京。都心のど真ん中に一晩車を停めたらいくら取られるんだろうって思ってたんだ。


でも、

帰りを・・・

まさか、もう歩けるとはいえ、明菜さんを電車で帰すわけにはいかない。


明菜さんを送って行くつもりだったんで車で来たんだった。



よーーーーし。

そうと知ったら遠慮なく「ご馳走」になろーーっと・笑。

安堵の顔で箸を運ぶ。



・・・・

・・・しかし・・・・


・・・・ボクには、

もうひとつ心配していたことがあったんだ・・・聞いてみたいことがあった。


・・・それは、警察が来たこと・・・

明菜さんの親父さんのことだった・・・・




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