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「別れの真相」苦手な女。
土曜日。
体育館でボールを追う・・・サッカーだ。
久しぶりに、サッカーレクリエーションで汗を流した。
昼は、
女の人グループが、サンドイッチを作ってくれていた。
桐原先輩の彼女さんが中心になって作ったらしい。
・・・・ってか、
今日子さんがいなかった。・・・・だけじゃない。
「経理」グループの女の人が、全員いなかった。
食べて、
騒いで、
・・・・そして、またサッカーで走り回る。
いつもの風景だった・・・・
・・・・自販機コーナーで煙草を吸っていた。
体育館の横。
自販機がいくつも並んでいる。
ベンチがあった。
木製、よくバス停なんかに置いてあるやつ。
バケツの灰皿があって、喫煙コーナーにもなっている。
ベンチにもたれ、
ひとりで、煙草をふかす。
空が青い・・・
冬が終わろうとしている。
空気に春の匂いがあった。
・・・・なんとなく、ノらなかった。気分が落ちてる・・・・
今日は、
いつものように「鉄壁のディフェンス」ってわけにはいかない・・・・
「あら・・・」
女の人がやってきた。
ボクに気づいて笑顔を向けた。
「秘書課」の女の人だ。
秘書課の中では背が低い。・・・っても、ボクと同じくらいなんじゃね??笑。
桐原先輩の彼女さんのように「役員秘書」ってわけじゃなく、
なんだろう、秘書課の中での事務方みたいな人なのかなぁ・・・
まぁ、よく言えば気さくな感じ・・・話しやすいってことなんだけどねぇ・・・
ただ、
なんとなく苦手だった・・・
苦手ってか・・・
なんだろうな・・・
なんとなく、
あんま、仲良くしたくはないってか・・・
「嫌い」ってほどでもないんだけどねぇ・・・
いや、・・・正直言えば「嫌い」か・笑。
どこがどうってわけじゃない。
あくまで、なんとなく、だ。
「秘書課」ってくらいだ。
事務方だとしても、
それは「美しい」・・・と思う。
ボクの「田舎」にいれば、
「とても綺麗」って人だと思う。
・・・なんだけど、
・・・なんだけどね・・・どうにも、何かが鼻についた。
・・・まぁ、
こうして、気さくに話しかけてくれるし、・・・いいんだけどさ。
明菜さん・・・
「経理」グループ全員がいない。
ボクが喋れる女の人はいなくなっちゃったしな。
話しかけてくれるのはありがたい。
どーにも、
「秘書課」の女の人は、美しすぎて気おくれするんだよな・笑。
桐原先輩の彼女さんなんか、正面から喋れないもん・笑。
思わず見惚れちゃって・・・言葉を失ってしまう。
自販機、
彼女が選んだのは紅茶。ストレートだった。
「1本、頂戴」
あくまで、笑顔で言われた。
この人が煙草を吸うのは明菜さんから聞いていた。
横に座った。
SEVEN STAR を差し出せば、1本抜き取る。
すかさず、火を点けてライターを差し出す。
西部劇みたいだな・笑。
挨拶代わりの、煙草のやりとり。
気温は低い・・・でも、10度は楽に超えてるよな。
風はない。
あったかい缶コーヒーが心地良い。
「大変だったね・・・」
優し気な顔で彼女が言う。
・・・・明菜さんのことだとすぐわかった。
初めてじゃないかな、
あれ以来、
ボクに明菜さんのことを振ってきた人は、
「親の借金を子供が背負うなんて・・・・明菜さん・・・可哀想よね・・・・」
・・・・え・・・?・・・え・・?・・・何・・・??
あれ?
知らなかったの・・・・?
一気に彼女の顏が曇った。
言っちゃいけないことだった・・・・顔をしかめる。
どういうことですか?
背もたれから身体を起こす。
彼女を真正面から見据えた。
明菜さんへの糸は「プッツリ」と切れていた。
今日子さんは「何も知らない」と言い張った。
他の女の人からは・・・・「会計」グループの女の人たちからは、「避けられてる」って感じがしてた。
親父さんを訪ねてみようか・・・・それも考えた。
でも、
訪ねて行ってどうしようというのか。
「明菜さんはボクのものだ!」
そう言いに行くのか?
ボクだって馬鹿じゃない。
全ては、
あれが、
明菜さんの、
「最後の晩餐」
そうだったのはわかっている。
明菜さんは、あの日を、「最後の思い出」として、
・・・・そして、姿を消したんだと理解していた。
全ては・・・あの日、
最初から決めていた行動なんだと・・・
明菜さんとのSEX。
「許して・・・カズくん許して・・・」
あれは、快感に溺れた声じゃなかったんだ。
・・・ボクへの・・・別れへの許しを乞う言葉だったんだ。
だから、
会いに行っては・・・・捜してはいけないんだと理解していた・・・
それでも・・・
だったら、
尚更に、明菜さんを想った。
ちゃんとした理由が知りたかった。・・・・姿を消した理由。・・・姿を消さなければならない理由だ。
会社を辞めたたからって、
ボクたちがつきあえない理由にはならない。・・・むしろ、「職場恋愛」が禁止の風潮のこの会社なら、
明菜さんが会社を辞めたほうが付き合いやすいはずだ・・・
ちゃんと、
ちゃんと、
ちゃんと明菜さんから「別れの理由」を聞きたかった。
彼女を見据えた。
「教えてください」目で促した。
彼女は困り顏だ。・・・言葉を選んでいる。
SENEN STAR を深く吸い込む。
細い煙を吐いた。
「私は、秘書課だから・・・役員たちの話が聞こえてきちゃうんだよね・・・」
あくまで、
自分が詮索したんじゃない。
そう言い訳して話し始める。
そもそも、
明菜さんが東京に出てきたのは、
親父さんが東京にいたからだった。・・・いや、場所はわからない・・・「東京」だという確証があったわけでもない。
失踪中の親父さん。
それでも、たまに、電話はかかってきた。
「お父さん子」だった明菜さんは、電話を待つようになる。
父と娘との、
約束も何もない、電話だけで繋がる日々。
「お父さんは東京にいる!」
そう確証した娘は、
知り合いも何もない東京に、ひとりやってきた。
短大に通いながらお父さんを探す。
生活費、学費・・・全てをバイトで・・・全てを自分で賄いながらお父さんを探す。
「日雇い労働」
その現場、
その会社をしらみつぶしに当たっていく。
・・・そして、ついに、親父さんを見つけた。
「失踪中」
・・・・しかし、
親父さんが逃げていたのは、
仲間内、銀行・・・そんな「表世界」だけからじゃなかった。
カネに詰まった親父さんは、
最後は「ヤクザ」からカネを借りていた。
「表世界」の借金だけなら、
・・・・最悪、「自己破産」してしまえば、それで終わりだ。
怒鳴られ、罵られ、詰られ、・・・今後の人生で、決して故郷に帰ることができなくなったとしても・・・それだけだ。それだけで済む。
それで解決がつく。
・・・・しかし、
「ヤクザ」はダメだ。
そもそもが、「非合法」の世界の生き物だ。
「自己破産」などの、表の世界・・・法の世界など通用しない。
「ヤクザ」と関わってしまった以上。
「ヤクザ」に弱みを握られた以上、
「ヤクザ」からカネを借りた以上、
一生・・・
一生・・・人生を「ヤクザ」にしゃぶりつくされるしかない。
親父さんは、
田舎から失踪してきた東京で、「ヤクザ」に捕まっていた。
タコ部屋に放り込まれ、
ただの「人足」として使われていた・・・・あとは、死ぬまでこの生活が続くだけだ・・・
人生は終わった。
人生は詰んだ。
事実上の「死」を迎えた。
・・・そこに、娘が現れる。
親父さんは、
娘の登場・・・娘との再会によって、「生きる」ことを決意する。
「ヤクザ」と話を詰め、
返済計画を話しあった。
・・・・出てきた、
提示された返済金額は、
とても、
人間ひとりの手に負える金額ではなかった。
娘が協力を申し出る。
何もいらない。
「平穏」な日常があればいい。
朝起きて、仕事に行き、
帰ってきて、少しの酒を飲んで一日を終える。
・・・・そんな生活を取り戻したいと思った。
父と娘。
ふたりで平穏に生きていければそれでいい。
お父さんを死なせたくない・・・「お父さん子」の明菜さんは、身を粉にして返済を開始する。
ふたりは一緒に住む。
・・・・こんな形でも、
二人で・・・
父娘で、一緒に住めることは幸せだと感じた。
明菜さんは寝ないでバイトに明け暮れた。
何をやるにも深夜のバイトが一番いい・・・・さらには「水商売」に足を踏み入れた。
「就職が決まった」
就職先は、上場企業だ。
親父さんは・・・
親父さんは飛び上がらんばかりに喜んだ。
・・・・真っ暗な生活。
ただ、苦しいだけの生活。
親父さんの「笑顔」を初めて見た・・・・
東京での、
親父さんの「笑顔」を初めて見た。
遠くに「光」が見えてきた。
本当に、遠くに、・・・微かな、人生の希望という「光」が見えてきた・・・・
就職を機に、
明菜さんは、会社の寮に入った・・・親父さんのことは「秘密」だったからだ。
・・・そして、
「秘密」のバイトを続け、
「ヤクザ」に返済を続けてきた。
あと1年・・・
あと1年すれば、「ヤクザ」への返済は終わるはずだった・・・
そうすれば、親父さんの「自己破産」で、
全ての決着がつくはずだった。
「ヤクザ」に返済しながら「自己破産」はできない。・・・・もし、その事実が明るみに出れば・・・隠しおおせるものじゃない。
「自己破産」
返済する先を選ぶ仕組みじゃない。
債権者、全てに対して「払えない」と宣言する仕組みだ。
世間に黙って「ヤクザ」だけに返し続ける・・・そんなこと、隠しおおせるものじゃない。
・・・あと1年・・・
「水商売」を続ければ・・・それが終われば、
晴れて「上場企業のOL」としての生活が待っているはずだった。
・・・・・そこに警察がやってくる。
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