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「彼女との別れ」AMGとの別れ。
セブンイレブンでサンドイッチを食べていた。
助手席の花子はロールケーキだ。
いつものセブンイレブンだった。・・・そう、花子の家近の店舗。
花子が「寄って」と言ったんだった。
「お礼」というわけじゃないだろうけど、
珈琲も合わせて奢ってもらった。
考えてみれば、
セブンイレブンでは、
いつも、ボクが奢っていたからな。
そのお返しって意味もあるのか・・・・・
・・・いや・・・しっかし、
今回の、
「お泊りデート」
その費用。全ては花子持ちだ。
今までセブンイレブンで奢った分、
その10倍の費用にはなっちゃったんじゃなかろうか・・・・
いや、
それでも収まらないかも・・・・
あの、スイート・・・・料理・・・
いったい、いくらするんだろうな・・・・
「カズくん、ありがとう・・・楽しかったぁ・・・・」
満面の笑み。ロールケーキを頬張りながら花子が言う。
可愛い、少女のような笑顔だった。
・・・いや、
ボクこそ楽しかった。
思わず、
念願だったレストランの肉料理も食べられたしな・・・
人生での、
いい経験・・・・メモリアルな体験だった。
「カズくん・・・ありがとう・・・本当にありがとう・・・・」
花子が「シューちゃん」
車のダッシュボードを撫でていた。・・・優しくだ・・・
「もう、売り先は決まったのかい?」
ボクは、
花子がベンツを手放すんだと思っていた。
もともと、
「お泊りデート」
その目的が、
手放すベンツとの、最後のドライブだと思っていたくらいだ。・・・・・結局「初体験」が目的だと知ったわけだけど・・・・
それでも、
ベンツを手放すことも決めているんじゃないかと思っていた。
花子は、
すでに、運転ができなくなっている。
で、あれば、置いておいても費用がかさむばかりだ。・・・・それに、乗らないと車自体も悪くなっていってしまう。
「えええぇーーー売らないよーーーー!!」
花子の笑い声。
そか、
そりゃ、ボクの考えすぎだったかぁ・・・・
「この子は、私の命だもん・・・・
カズくんが買ってくれるっていうなら、譲るけど・・・・
・・・・そしたら、いつだってこの子に会えるもんね・・・・」
ちょっと上目遣いで見られる。・・・・・若干、本気って感じがするぞ・・・・
・・・・いや・・・・
そいつは、無茶な注文だ。
新車価格で1千万円。
花子が、安くしてくれるっていっても・・・
まぁ、
相場から考えれば700万円ってとこだろう・・・・そこから「お友達価格」としてもらったとしても・・・・・
いやいやいや・・・むーーーーり、無理、無理。
とても、手が出せるような金額じゃない。
そもそも、
ボクの車は、
「仕事用」なわけで、
各種の機材や、資材・・・・いろんなモノを積まなきゃならないわけで・・・
AMGじゃ、
ベンツじゃ、
とても、「用途」としては正しくない。
そもそも、
こんな車で客先に乗りつけられるはずがない・笑。
「・・・・それにさぁ・・・・」・・・・と花子。
・・・・それに・・・????
「この子がいなくなったら、カズくんと密会する場所がなくなっちゃう・笑」
確かになーーー笑。
いつも、
ボクが、
花子の家まで会いに行き、
シャッター付き駐車場、ベンツの中で花子の身体を弄っていた。
・・・・確かになぁ・・・
ベンツがなくなっちゃうと、
花子とデートする・・・
花子の身体をオモチャにする場所がなくなっちゃうなぁ・・・
・・・・いや、
でもさ・・・
もう、「初体験」は済んだんだから、
これからは、ラブホでもいいわけだし・・・・ボクの車で・・・・
「イヤだよ。
カズくんの車、狭いし、汚いんだもん・笑」
言われたゼェ・笑。
確かに、
ボクの、ポンコツアクアは、「狭い」「汚い」「キズだらけ」
三重苦。
とても、女の子を乗せられる車じゃない。
んで、
いつも、荷物が満載で「一人乗り仕様」になっている・笑。
かろうじて、
花子に会いに来る時に、助手席を片付けて、スペースを作っていたんだった。
ふたりで、ケタケタ笑った。
花子の、
少女のような笑顔が眩しかった。
・・・・花子がリモコンでシャッターを開けた。
父親のベンツも、
お母さんのベンツもいなかった。
今日も、
家には誰もいないらしい。
「シューちゃん」の場所に停める。
エンジンを切った。
シーンと擬音が聞こえるほどだ。
静かだ。
「カズくん・・・・本当に、本当にありがとう。
・・・本当に、本当に楽しかったの」
ああ・・・
ボクもだよ。
とっても楽しい時間だった。
「今度は、少し、外も歩いてみたいな・・・・」
そうだな。
暖かくなって・・・・風がなくなって・・・・
・・・春になったらまた行こう。
ウン・・・花子が頷く。
見つめ合う・・・・
キスをする・・・・舌が絡まる・・・・
糸を引くように、唇を離した。・・・・そのまま抱きしめた。
・・・・じゃあ・・・またな・・・
花子が腕の中で頷いた。
AMGのハンドルを撫でた。
・・・・いい車だ・・・
久しぶりにいい気分でドライブができた・・・・
ありがとう。
ドアを開けた。
後部座席のバッグを持って、
AMG・メルセデスを降りた。
手を振りながら駐車場を後にした。・・・・花子は、まだ助手席に座ったままだ。小さく手を振っている。眩い笑顔だ。
近くの駐車場。
料金を払ってアクアに乗り込む。
走り出す。
住宅街だ。
慎重に・・・ゆっくりと走る。
花子の家の前を通る。
花子が車に寄り添うようにしゃがんでいた。
「シューちゃん」
そのボディーに手を添え・・・・優しく撫でているように見えた。・・・・何かを語りかけているように見えた。
母が子に、
姉が弟に、
優しく語りかけているように見えた。
通り過ぎる。
声をかけていいようには思えなかった。
ボクは、
眼で「シューちゃん」に挨拶した。
幹線道路に出た。
東京の喧騒。
東京の慌ただしい道路。
しゃがんだ花子の姿が焼き付いていた。・・・・蹲っているようにも見えた。
・・・・・やっぱり・・・・花子は、AMGを手放すんじゃないか・・・
そう決めているんじゃないだろうか・・・
この小旅行が、
「シューちゃん」との別れだったんじゃないか・・・
そう感じていた。
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