【BL】こいつのせいで狂いっぱなし。溺愛してるケモ耳少年がゆうこと聞かなくて困ってます。

あっ ふーこ賦夘

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ARASHIYAMAのフルムーン

第一話 月影の鬼船神社

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    時は平安

  ところは 京 嵐山


 現代じゃニッポン屈指の観光スポットでデートスポットなんだろうけど、当時の嵐山はデートなんてとんでもない!

 悪鬼羅刹あっきらせつ闊歩かっぽするホラースポット。

 夜の京嵐山、夏の大文字焼きの賑わいを想像してくれ。

 夜風に舞う花火。渡月橋とげつきょうで浴衣を着て笑顔で行き交う恋人たち…。

 ところが、平安京の頃となると、日暮れになれば人通りはパタリとやみ、笑顔で行き交うのは狸や狐。

 妖怪達のオンパレードだ。


 そんな嵐山に鬼畜きちくあるじと住んでるオレ。

  颯太ーソウター。

 ナリはヒトだが実は銀狼。

 いや、もとは普通の人間だった。
 鬼畜な主に、変な実を食わされてこんな身の上になってしまった。

 オレの主。

     承平天慶   ーじょうへいてんけいー

 天慶ーテンケイーさま。

 長身で眉目秀麗びもくしゅうれい涼やかな佇まいで一見穏やかそうにみえるけど実は

 オレはいつもひどい目にあわされて、泣かされてます。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 颯太のやつ。
 なにをいいだすのかと思えば・・・。

 こいつこそ、溺愛されておるのをよいことにオレー承平天慶ーの心を掻き乱し、冷静でいられなくする張本人。

 拾って育てはじめた小さな頃はケモ耳をぴょこぴょこさせて、おしっぽをふりふりしながら

「天慶さま♥️天慶さま♥️」

と、無邪気にオレの後をつきまとっていたくせに。 

 そう、つがいらしき鳥の片割れが死んだ時など

「天慶さま、絶対死なないでね。オレひとりやだっ。ずっとずっと一緒がいいーー。」

と、泣きついてきたことなど、とうの昔に忘れておる様子。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 そもそもの出会いは・・・。


 鬼船神社きふねじんじゃに男子誕生祈願にこられたとびきりの美女。
 その美女に拾ってもらおうと捨てられた可哀想な捨て子。
 そこに現れた天慶さま。

 鬼船神社の満月の夜からこの物語は始まったんだ。

ーーーー

「今日はほんとうに疲れたわ…」

 鬼船神社の燈籠とうろうに浮かびあがった牡丹ーボタンーは京の都を騒がす噂の美女だった。

 なかなか男子に恵まれなかった彼女の夫、大納言護国ーモリクニーは

『鬼船神社に3日間こもっていればきっと男子を授かるだろう』

と、ゆうお告げに従い大安からはじまりの日で終わるまでの三日間を選んで牡丹の鬼船詣りを実行した。

 彼女は二児をもうけてからますます美しさに磨きがかかった。
 美しいと評判だった牡丹に惚れ込み出世街道まっしぐらだった大納言護国は牡丹を正妻に迎えた。
 護国に嫁いだ頃の牡丹はまだ幼さの残る可憐かれんな少女だったが今は護国に愛され人妻の妖艶ようえんさを讃える洗練された美女になっていた。

 牡丹の美しさと不思議な気配にひかれ…。
怪しい影が近づいてくる。

 燈籠とうろうの火も消え人々が寝静まった夜。
 普段屋敷から出ることの少ない牡丹は昼間のご祈祷きとうやら神事やらで疲れて深い眠りの中にいた。
(これは夢?)
 鬼船の主祭神しゅさいしんがご啓示を与えに現れたのかしら?

 音もなく気配もなく、寝所に忍びこみ、しっかりとわたくしを抱きしめることができる方がいらっしゃるのかしら?

 夢の中で牡丹は確かに抱かれた。

 月明かりに浮かんだ面影おもかげ端正たんせいで凛々しかった。


 鬼船神社の門前にひとりの子供がうずくまっていた。
 さる高貴な奥方が、今この神社に参詣されている、ときいて
「子供が欲しくて参詣されているのならもしや拾ってくださるかもしれない」
と、今日食べるのもやっとで貧乏のどん底にいた親が置いていったのだ。


 間が悪かった。

 見てしまったのだ。

 鬼船神社から現れた、牡丹を犯した物の怪を。

「ひゃっ!」
「!」

 慌てて逃げようとしたが手足が金縛かなしばりにあったように動かない。

「我の姿をみたな!」

「み。みてませんっなんにもみて」

ばっ

 大きな声をだすな、とばかりに口を塞ぐとその物の怪は子供をつれて闇の中に消えていった。


チビ颯太と天慶さま


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