AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

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偽善者と三つの旅路 十五月目

偽善者と捜索交渉 後篇

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『全力でやらせてもらうよ、師匠!』

『……縛りの最中なんだが』

『あははっ、師匠なら絶対に死なないよ。だから──僕の全部を受け入れてね♪』

『ハァ……ダメ弟子め』


 ユウさんは柄より先のない剣より、光状の剣身を生みだします。
 他に持つ者がいない、彼女だけが振るうことのできる貴重な剣。

 その鋭さは彼女だけが持つ固有スキル──【断罪者】も相まい、条件を満たした相手であればどれだけ身を固めても斬り裂くことができます。


 一方、メルスさんは……水晶を片手に乗せていました。
 意味が分からなかったのですが、ナックル様に説明される前に理解できます。

 水晶がグネグネとうねると、その形状は剣となりました。
 しかしそれは、特にこれといった特徴もない無骨な鉄剣。
 打ち合えるとは思えません。


『師匠、それが縛りなの?』

『まあ、壊れないこと以外は普通の武器にしておいた。性能にこだわらず、やっておけるようにしておこうと思ってな』

『余裕なんだね、師匠……なら、もっと本気にさせてあげる!』

『……まあ、別にいいんだが』


 そんな会話を切り目に、二人の激しい戦いが始まりました。
 ナックル様に撮影機能を使ってスロー再生するように言われてなければ、きっとその動きを捉えることはできなかったでしょう。


「ナックル様。陽光魔法の使い手であるユウさんが速いのは分かるのですが、どうしてあれについてこれているのでしょうか?」

「……なんでだろうな。理由はいくつも浮かぶんだが、アイツが今そのどれを使っているかは謎なんだ。というか、そのどれでもない可能性の方が高い」

「そ、そんなに方法があるのですか?」

「スキルの数は全プレイヤーで最多、レベルも250は軽く超えている」


 声も出ず、息を飲んでしまう。
 150を超えている人が極稀という中、その数値は異常でしかない。
 しかし嘘とは言えなかった、ナックル様が嘘を吐くことはほとんど・・・・無いからだ。

 実際、アクティブスキルを使っている際に発生する燐光は出ておらず、その高い能力値だけで闘っているのだと実感した。


「『模倣者』って、知ってるか?」

「はい。第一回武闘会優勝、二回目では優勝者である『譎詭変幻』に負けた方ですね」

「勝った奴も負けた奴も同一人物だ。アイツは絶対に認めないが、間違いなく主人公みたいな男だよ」

「主人公……?」


 言いたいことは分かった。
 しかし、理解はできない。
 ただ強いだけ、といえばそれだけだが、それが主人公という存在とイコールになるとは思えなかった。

 私の困惑が分かっていたのか、ナックル様は苦笑する。


「まあ、言いたいことは分かるさ。だが、今までにAFO黎明期に起きたことの大半が、すべてアイツによって引き起こされたこと。いい意味でも悪い意味でも、アイツが関わると騒々しくなるんだ」

「……はた迷惑では?」

「少なくとも、その実情を知る前はいろいろと思うところがあったがな。だが、あのリア充撲滅イベントが、それを吹っ切れさせた」

「あのイベントはたしか、魔王によって一気に殲滅されたという話でしたが……彼がその魔王なんですね」


 すべてがメルスさんの仕業だと言った。
 黎明期とは、その撲滅イベントまでに起きた公式イベントすべてを指している。
 ──草原のレイド、武闘会、過去の王都、撲滅イベントがこの中に含まれていた。


「まあ、悪い奴じゃないんだ。自称偽善者でやりたいように振る舞っているが、それでもなぜか笑って終われるんだ。俺たちは、それが好ましかった。口では好きなように言っているが、全員が信頼も信用もしている」


 そう語るナックル様も、訓練場で闘うユウさんも楽しそうだった。
 メルスさんは……闘いにうんざりしている気もするが、それでも真剣にユウさんを受け止めている。

 だからこそ、ユウさんの断罪は意味をなさずとも、いつまでも剣戟が続いていた。
 攻撃魔法は使われていない。
 そんな野暮なものは必要ないと、互いに決めていたのだろ──。


『隙あり──“陽光球サンライトボール”!』

『おい、魔法は使うなよ!』

『そうやって魔法を斬り裂いておいて、師匠にズルいなんて言わせないよ!』


 ……違ったみたいだ。


 SIDE OUT

  ◆   □   ◆   □   ◆


「師匠、結局師匠は師匠なんだよ」

「いや、まったく意味が分からないんだが」

「不意打ちの魔法だって効かないし、剣術もスキルを使ってなかったじゃないか」

「それが縛りだからな、仕方ないだろう」


 今回の縛りは武術スキルの禁止、またアクティブの装備スキルを使わないことだ。

 武術はスキルの動きをなぞることで基礎が学べたし、眷属から応用も習っていた。
 魔法はもっと単純に、すべてが不可だ。
 不便だが、魔道具はいちおう許可を得ているので困ったらそちらを使う予定である。


「──とまあ、縛りの間でもどうにか闘って証明したわけだ。これでそっちもやるよな」

「……ええ、こちらも了解しました。大まかな指示はすでに受けましたので」


 アヤメさんの不信感を、一部とはいえ取り除くことには成功したようだ。
 上手くいったことにうんうんと頷き、今度はナックルの方へ顔を向ける。


「ナックル、そういえば俺ってたしか知ってる奴を連れて来いって言ったよな? なんでアヤメさんなんだ?」

「お前が知っている奴、という点に関して了承した覚えはないんだが?」


 いやまあ、たしかにそうなんだけどさ。
 別に害があったわけじゃないし、アルカを呼ばれていても困ってたからいいけど。

 何より、知っているというのは『誰がWho』を入れていないものだったから悪いんだ。
 交渉事をやるという意識でいたんだから、もう少し考えればよかった……モブでも少しぐらいできたはずだよな。


「ナックル、詳細はここに書いてある。二人で確認してくれ」

「……お前の案じゃないんだな」

「俺のアンだぞ? まあ、一人で考えられることなんて限界があるだろ」

「まあ、それもそうか……よし、それじゃあさっそく始めますか!」


 ギルドリーダーであるナックルの指示は、最強ギルド『ユニーク』全体を動かす。
 頼もしい奴だよ、本当にな。


「あっ、捜索それ迷宮これとは別だからな」

「……」


 頼もしかったリーダーよ、周りの視線が冷たいぞ。


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