俺と異世界とチャットアプリ

山田 武

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【強者の権利】面倒事対処 その05【最下の義務】

スレ67 青春っぽい会話を

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 会場中がドン引き、もういちいち悲鳴を出す気も失せたようだ。

「はい、シュート!」

「~~~~!」

「ゴールっと……おやおや、もう球が無くなりましたか。それじゃあ、早く別の場所から補給しないとなー」

 ビクッと怯えだす次の集団たち。
 卑怯者である俺をイジメたいのだが、決闘会場に入れる人数制限とやらでいっせいには入れなかったのだ。

「お、おい……お前行けよ」「ば、バカ! こっちに注目させんじゃねぇよ!」「何なんだよアイツ、卑怯者のクセに何してんだ」

「──仕方ないですね……“魔力縄ロープ”」

 スルスルと伸ばした縄が後ずさりする集団全員を捕縛し、結界の中へ引きずり込む。

「い、嫌だ! 俺を放せ!」「最初からこんなことする気はなかったんだよ!」「なあ、助けてくれよ!」「同じ学園の生徒だろ?」

「いや、従者だし」

 少し人数が多いな……まあ、アメフトは十六人だし──今度はそっちかな。

「セット、ハットハット!」

 漫画で憶えた掛け声なので、これ以外は知らないが……ゲームはできる。
 結界の外へ叩きこめば一点、それを何回も繰り返していれば俺の勝利だ。

「なあおい、生徒様よ。俺みたいな従者にしかなれなかった落ちこぼれと違って、優秀な生徒様よー。見せしめになれよ、これ以上俺に近づくアホが来ないようにさ」

 ニコリと笑ってゲームスタート。
 さて、これで終わればいいんだけどさ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 うん、たしかにバカは来なくなった。
 どうやら生半端な覚悟では挑むことができない、腐れ外道の卑怯者ということで纏まったようだ。

 えっ、どうしてそれを知ってるかって?
 ……今ちょうど、聞いたところだからさ。

「イジメられていたのはこっちのはずなんですがね、どうして俺が悪者として貴方がたに裁かれなければならないんでしょうか?」

「君はやりすぎた。黙って痛みを受けろ、などとは言っていない。だが、加減を知らなさすぎる」

「必死ですから。それに、知っているんですよ? 貴方がたの長も、このイジメに参加していることぐらい……ねぇ?」

 俺だってちゃんと勉強した。
 目の前に居る気真面目そうな集団は風紀委員、いわゆる学園の自浄役だ。

 そしてその長は序列の一人……というか、風紀委員長と生徒会長は序列入りの者がなるとかならないとか。

「……あの方ではない」

「と、言われてもな。実際レイルから聞いた限り、全員が受け回しにしたそうだが?」

「そ、それは……」

 人間性まで知っているわけではないので、細かいことは知らない。
 だがその生真面目君の表情を見るに、少し事情がありそうだな。

「まあ、今は置いておこう。いずれ糾弾するときがあれば、俺の方から伝えておくさ。それよりお前たちの役目は、俺を裁くことのはずだったな?」

「そ、そうだ」

「俺は鏡のようなスタンスでやっているつもりだ。善意には善意を、悪意には悪意を。実際、俺が反撃するでもなく何かを教えて終わらせた決闘だってあっただろ? お前たちが問題視しているのは、悪意の方だけだ」

「だが、そのような振る舞いができるのであれば、全員にそうしてもよいではないか!」

 うんうん、正義感溢れる少年だ。
 いやいやいいねー、若者らしくて。

「勘違いされちゃ困る。お前らにだっているはずだろ? 目上の者には敬語を使い、格下には侮蔑を籠める輩が。気にすんなって、俺もそうだからさ」

「目上の者に敬語を使うことは何もおかしくはない。それに親しき間柄に、そのような敬語を使わないだろう」

「論点を変えるな。敬語の話じゃない、侮蔑の話だ。俺に悪意を向けた大半が貴族様だったが、それは俺が素性の分からない平民で従者だからだろ? 王族が新しく序列に加わっても、こんなことにはならなかったはずだ」

 そりゃそうだ、死刑になんてなりたくはないはずだしな。
 まあ、俺に敵意を向けた奴は私刑にあっているんだけど。

「相手が誰だろうと構わないさ、俺の目的は序列を守り続けること。それが主であるサーシャ様の願いだからな」

「では、その主からの命であれば、君はその座を降りるのかな?」

「うーん、どうだろうな。そのときの気分次第だな、ちなみに今は降りる気はない。やりたいことはたくさんあるし」

「そうか……」

 抜剣し、結界の中に入ってくる。
 後ろには珍しい、後方支援タイプの魔法使いまでスタンバイしていた。

「風紀委員の全力を以って、君を止めることにしよう」

「ハハッ、嬉しい限りだ。もちろん、悪意がないからには善意で応えよう。修業だと思って気軽にかかって来いよ」

「……私たちが負ければ、次は生徒会が君を倒すことになる。止まるなら今のうちだぞ」

「止まらねぇよ。力こそがすべてのこの学園だ、どうせなら一旗揚げてサーシャ様にこの学園を献上しようと思ってるんだ」

 本人は要らないだろうが、ご主人様である俺に最終的に回ってくるんだから……まあ、御の字だろう。

 序列の上下は力の差でしかないが、上に居る方が楽ができるからな……下っ端で居るよりは、勝ち組になりたいのが男のロマンだ。

「そうかい。では、始めさせてもらうよ!」

「ああ、よろしくお願いするよ先輩がた!」

 青春っぽくできたかな?
 前衛役が走ってくる様子を見ながら、そう思う俺であった。

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