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山田 武

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【強者の権利】面倒事対処 その05【最下の義務】

スレ83 きしは英語でなんと読む

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「やあ、はじめましての人が多いかな?」

 学園長の演説が終わり、引率の先輩からのお言葉を聞くことになる。

 さすがに先輩と後輩の集団を丸々一つ統制はできないようで、クラスの階級別にある程度グループ分けがされた。

 SクラスはSクラスのみ。
 AクラスからCクラスまで、DクラスからFクラスまで、そしてXクラスである。

 ……先輩はすでにクラスメイト(欠員)なので、今さら追加する必要が無い。

 なお、しっかりと教員が見張りをしてくれるので、Xクラスもそちらの恩恵はある。
 俺たちを導く偉大な教師──キンギル先生がいらっしゃるのだ。

「副生徒会長の『グリルム』だ。一年生の諸君、この遠征は生徒会が主に責任者として運営していくものだ」

 これまたイケメンの男だった。
 王道の金髪をサラサラとたなびかせ、俺たちを見る瞳はとても澄んでいる。

 やっぱり、モテるんだろうな……というかそういうピンクの声が聞こえてくるや。

「チッ……」「イケメン許すまじ……」「俺に闇魔法の才能があれば……」

 同志たちの声もまた、というよりこちらの方が耳に入ってくる。

 近いところで言えば、ブラストなんかが該当する……なお、アルムはもともとイケメンフェイスなので気にしていない。

 富める者は欲する必要が無いからだ。

「本来、この挨拶は生徒会長が行うべきものだったのだが……少々用事が入ってしまってな。私が代わりに行うことになった」

 先輩たちからは、『聖義』のお仕事かと納得する声が上がっている。
 あれだけド派手なことをしていれば、隠すこともできないだろう。

 ヒーローたちが上手く正体を隠せているのは、あくまで話が虚構フィクションだからだ。
 現実であんなに目立ってことをやっていれば、SNSなどで即バレるだろうし。

「君たちは遠征に行き、成長する……なんて台本を渡されたけど、そういうことは先ほど学園長がなさったので省こう。大切なのはただ一つ──全力で君たちが強くなることに、協力をしようじゃないか!」

 このお言葉に、歓声が上がる。
 やはり女子は桃色の、男はどす黒い声で反応を示す。

「……Fαck Yoμ」

 もちろん、俺もである。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 我らXクラスもまた、移動に関しては他のクラスと同じタイミングで出発した。
 このとき、先輩との親睦を深めるイベントがあるらしいんだが──

「何で俺たち、走ってるんだろう」

[賭け]

「ああ、うん。そうだったな」

 サーシャは自身のスキルで空を翔ける靴を生みだし、自在に宙を蹴って走っている。
 俺は歩行術の一つ“天駆”を使い、追従するように彼女を追いかけていく。

 出来事を台詞セリフ三つ分で纏めるなら──

『なあ、どうせなら誰が一番早く着くか競争しようぜ?』

『そうですね。では、実技試験も兼ねて徒競走をしましょう──早かった順に、成績を付けていきますよ……ああ、アサマサ君はハンデとして少し遅れて出てもらいますので』

[いっしょに行く]

 とまあ、こんな感じだ。
 いっしょに居てくれるはずなのに、俺よりも空で余裕を持って走っているサーシャ。
 俺は弓を持って射っているのに……。

「そいやっと」

 複数の矢を同時に掴み、弓に番えて目標に向けて放つ。
 そこには口を開いて待ち受ける魔物たち、咆哮はすぐに悲鳴へ変わる。

「弓術──“射域”」

 まあ射撃に補正が入るわけじゃない。
 その名が示す通り、射抜くために知覚する領域を強く認識する技術だ。

 俺の脳スペックの一割を常時消費する代わりに、一定距離の敵を完璧に把握することができる──昔は気による索敵だけだったが、今では魔力による探知もできるので、より性能が上がった。

「ひーふーみんっと」

 三体の魔物を同時に射抜く。
 矢筒は特殊な魔道具なため、意識するだけで俺の手元に矢が握られる。

 それらをそれぞれ前、左前方、右真横に放ち──沈黙させた。

[なにそれ]

「俺の世界の有名な棋士きしだよ」

[会ってみたい]

「画像でも見せてもらえ」

 すぐに入力を始めたので、誰かに転送してもらうだろうな。
 入力速度が上がると、それに追随するように移動速度が増していく。

「って、速すぎる!!」

 スペックの関係上、俺が一度に同時行使できることは少ない。
 現状では弓に一割、歩行も含む戦闘関連に三割、索敵に一割を使っている。

「ああ、もう……ビリになるだろ!」

 弓を片付け、歩行と索敵にだけ意識を集中させていく。
 スペックが再分配され、歩行術に四割も振れるようになる。

「歩行術──“縮地、天駆、絶渡”」

 瞬間、俺の肉体は視界でギリギリ捕捉していたサーシャの下まで移動していた。

 処理能力を二割も使う“絶渡”を使っていたこともあり、擬似的な瞬間移動のようなことが今の俺にはできる。

「と、いうわけだ。悪いが先に行くぞ!」

[すぐ追いつく]

「やれるものならやってみろよ!」

 魔物は移動の際に生じる衝撃波で吹きとばせる、問題は俺の肉体が長時間の行使に耐えられるかどうかだけ。

 サーシャが何かをしたのか、すぐに抜いた俺を抜き返そうとしてくる……頼むから、耐え切ってくれよ。

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