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外国へ遊びに行こう
魔王に会おう
しおりを挟む魔王とは魔族の王。
絶対的な象徴であり、いずれ勇者と相対する存在。
ある意味において異世界人であり、魔王討伐が使命であるクラスメイトとは決して交わることのない者。
だが何があったか理解不能だが、そんな魔王は今俺の眼前に居た。
不機嫌そうな表情を浮かべ、肘掛けに置いた手に顎を載せては不服そうな息を漏らして脚を組み替えている。
「──ねえ、本当にコイツが異世界人なんだよね? ずいぶんと弱そうだけど」
挨拶のために跪いた俺の耳には、そんな言葉が入ってくる。
ステータスを隠していることもあるが、俺にやる気が無いのも理由かもな。
「初めまして、魔王様。貴方のように可憐なお方が魔王と恐れられる存在だとは……」
「お世辞は要らない。あとそれ、嘘じゃないけど本当でもないでしょ」
「ん? 嘘なのは魔王と恐れられる存在ってところだ。別に俺、お前を恐れているわけでもないしな」
「……それはそれで、腹立つんだけど」
最近の創作物の王道、女魔王であった。
側頭部の前に二本の渦を巻く角、金と銀に輝く髪と瞳……物凄く厨二心をくすぐる。
「俺はイム、異世界人の中でも特にやる気のない奴だ。クラスメイト……同朋がヴァ―プルの洗脳で魔族を殺したくなっているのに飽きたから、こっちに会いに来た」
「全部本当なんだ……へー、それで私の部下たちを操って会おうとしていたの?」
「直接会ったら、怪しまれるだろ。だからこれまでは、そうしてこなかった」
「けどそうする心配が無くなった、というより無くしたわけね。ふむふむ、それなら策も変えておくべきみたい……」
眼をキョロキョロと動かし、独り言を呟いている……ように見える魔王。
だがまあ、そんな不審者の行動もファンタジー世界には理由が付くわけで──。
「会話と思考、それに念話の並列行動か。ずいぶんとまあ、多忙な魔王だな。連絡先は召喚した奴か?」
「……それぐらいは分かるんだ。異世界には未知の知識があるみたいだね」
「召喚、だしな……そうか、悪魔か?」
「正解」
魔王が指を鳴らすと、その背後に禍々しいオーラを放つ巨大な影が現れる。
俺はそれにひどく驚き、パクパクと口を動かす。
「──悪魔って、ノリがいいんだな」
「そっちの世界で、悪魔はどういう捉え方をされているの?」
「たぶん、だいたい同じだと思うぞ、というか、過去を視ても分からないのか?」
「同じ悪魔も居る、ということか。気になって訊いてみたんだけど、世界が違うと分からないみたい。異世界人の誰かが元の世界で悪魔と契約してくれたら、その繋がりを通じて調べられたらしいけど」
後ろでユラユラと揺れる影も、その言葉にコクリコクリと頭を縦に振る。
……悪魔と言えばメジャーなモノからマイナーなモノまで多々あるのだが、この世界の悪魔とはどういった存在なんだろう?
「まあ、いいや。イム、私が【魔王】。君に洗脳された配下はたくさん居た、その全員が挙って君の面会について話した……これってさぁ、かなり怖かったんだよ?」
「一回目で許可すれば、俺もずっと続ける気はなかったよ。ああ、先に訊いておきたいんだが、魔王を倒せば元の世界に還れるって本当なのか?」
「あはははっ、そんなわけないじゃん! もし死んだらーそうだね、別世界に旅立てるとは思うよ」
なるほど、別世界に逝くのか。
元の世界には行けないってことで、あの国の話はやはりガセネタと証明されたわけだ。 ……まあ、最初から信じてないけど。
「ところで、魔族の王である私に何の用なのかな? いっしょに世界を滅ぼしてくれるのなら……報酬は世界の半分でどうだい?」
「ああ、その報酬を受け入れる勇者は俺たちの世界にはいないぞ。俺の目的は、俺が派遣された国を侵略せず友好的な関係を結んでもらうことだ……表向きに」
「…………少し待って」
そう言うと、眼を閉じて集中しだす。
おそらく、至高の処理能力が足りなくなったのだろう。
この話を持ち掛けたとき、国王もしばし考える必要があったわけだし。
「ああ、伝言があるぞ──『繋ぐ、糾弾、同盟』だそうだ」
「……それを早く言ってほしかったな。なるほど、そっちの考えは分かった」
ちなみに、俺はまったく分からない。
頭の良い奴らはそれだけで理解ができるみたいだし、メイドに訊いてみたら丁寧に解説してくれた……途中から話が複雑になったので、面倒になって訊くのを止めたけど。
「けど、こっちもただ黙ってその話を受けるわけにはいかない。嘘は言ってないし、あの国が面倒臭いことをしているのも当然分かっている……けど、何もしていない異世界人と手を結ぶほど、魔族は甘くない」
「人族と手を結ぼうとしたこともあったんだろう? なら、もっと優しくしろよ」
「それだって、オチは異世界人との駆け落ちで終わったやつだよ。調べて視たら、能力は魅了だったし」
「うわっ、魔王のクセに異世界人の魅了にかかったのかよ……異常耐性低いんだな」
まあこの台詞、ほとんどの異世界人にブーメランなヤツだけどさ。
それにしても、魅了チート持ちがとっくにこの世界に居たのか……色んな奴を魅了していけば、俺に自堕落ライフを提供してくれるようになるかもしれないな。
とにもかくにも、条件を満たせば魔族との厄介事を解決できそうだ。
さて……いったいなんだろうか?
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