バスケットボール

つむぎ

文字の大きさ
上 下
2 / 23

意地悪な凛とシカト

しおりを挟む
 確かに凛は奏歩を良く思っていないしシカトしている。他の女子たちも同様。

 だから自然と奏歩を遠巻きにするし声もかけない。だって憧れの男子綾瀬くんと平気でドッジボールしている奏歩を許せるほどまだ人間ができていないもの。凛は雄一に愚痴った。

 男子は特別奏歩を好きというわけではなくただ、まだ、子どもっぽいから仲間にいれているだけなのよ。雄一は答えた。

 雄一は産まれた身体は男だが心は乙女だという性同一性障害の小学生だった。身にまとう雰囲気は完全に女子だから皆も雄一を雄ちゃん、と呼び認めていたし、彼女は凛のよき話し相手だった。

 リバウンドの立役者だった信子は身長166センチと大人びている。発育が早いのだ。彼女は、嫌われてないがおとなしい。モノをはっきり言わずストレスが人知れずたまるタイプで、メンタルを病んで小学校を休みがちである。凛はそんな信子とはあまりコミュニケーションはとっていなかった。

 奏歩は負けたことをものすごく悔しがり腹いせにバスケボールを思い切り蹴った。もちろん先生から厳重注意。いい気味だと凛は思った。



 卒業式が終わり、新たに凛は中学一年になった。凛の中学は荒れているともっぱら噂で警察沙汰も、しばしば起きる。

 そんな中学に新たに校長が赴任してきた。入学式の訓辞は長ったらしく説教じみていたが、不思議と凛はその有りがたいお話を覚えた。

「皆さんは何かに熱中できますか?中学という青春を無駄にしてませんか。勉強スポーツそして恋をしなさい! 不良行為は時間の無駄遣い。警察にお世話になる生徒が多すぎる。私はこの校風をかえてみせる! タバコを吸ったり飲酒したり。そんなのは大人らしいとは言いません。中学生は中学生らしい素直さを忘れずに楽しい学校にしましょう。以上」

 桜はとうに散ってしまい殺伐とした公園のベンチに凛は日曜日、奏歩を見かけた。鳩が沢山いる。

 どうやら餌付けしているみたいだ。よくよく見ると鳩の羽の模様が魚の鱗みたいで気持ち悪い。鳩は不潔だし糞も撒き散らすし害鳥だ。そんな鳩を集めるなんて非常識。凛は思った。

「餌やっちゃいけないんだよ」

 凛は奏歩に近寄って咎める。

「だってお腹空かしてかわいそうだ」と奏歩。

 違う。人間に、クラスの女子にかまってもらえない寂しさを鳩で埋めてんだ。群がる脳ミソの小さな鳥の人気者になって喜んでるなんてなんて虚しい子なんだろ。もう一切関わるのやめよ。



 中学に入ってまずのイベントは部活が始まることだ。部活紹介。どの部も部員集めに必死でカッコいいとこを見せようと張り切っていた。

 なんといっても花形は男子バスケ部。毎年県大会に優勝している強豪なのだ。女子に大人気の綾瀬くんはバスケに入ると言っていた。

 これで女子のバスケ部員も増えるかと思いきや違っていた。女バスの三年はギャル。一華、ナノ、有佐、唯。

 性格がキツく見た目も派手で、目をつけられたら生きていけなくなりそうな雰囲気だ。というわけで女バスの二年生はたった一人麻帆という美少女だった。

 その代わりに男子バスケのマネージャーには応募が殺到。五人の一年が入部した。
しおりを挟む

処理中です...